一気上達は危険

今日、NHKの健康番組を見ていたら、日焼け予防に関することをやっていた。日焼けで一番良くないのは一気焼けというということで、急激に焼けると肌に悪いということである。これを聞いていて思ったのは、ここ数年僕がスノーボードの上達で感じていることと同じである、ということ。

僕は今年36歳になり、スノーボードを始めたのは17歳だからかれこれ今シーズンは20年目に当たる。仕事柄、山に行くことも多く年間の平均滑走日数は80日ほど。と言っても10キロ以上の重いカメラ機材を背負って滑っているので、滑っているというか1つの移動手段になっているんだけど。ともかく、滑走しているという意味では相当の日数である。

そんな僕がこれまで大きなケガをせずに来たのは、ひじょうにゆっくりと上達過程を築き上げて来たからだと思うのだ。まあ、たんなるビビリ屋という言い方もできるのだけど、特に30歳を過ぎてからは極力無理せず緩やかな上昇ラインで上達して来たと思う。20代の頃に漠然と、大人になってからの上達ってあまりないだろう、なんて考えていたんだけどこの分だと40代でも十分に上達できそうである。

スノーボードのシーンで第一線で活躍しているプロとなるとチャレンジの歴史で、リスクあることもやっていると思われるが、彼らもひじょうに慎重である。今週インタビューでアップした1号くん(田中総一郎)も、バックカントリーに行く時には、朝6時から起きてストレッチングするということだ。

話がちょっと脱線しそうなので戻すが、ともかくスノーボードはケガがつきもののスポーツだけに慎重に行うことに越したことはない。急激に上達することは一見素敵なことに見えるが、長い目で見るとモロさもあり、ひじょうに危険であるとも言える。

この話は極端過ぎる例かもしれないけど、昔、僕がアルペン・レーサー時代だった時にこんなことがあった。
あるレーサーは元スキーのアルペン選手だったがスノーボード転向1年目で、すでにワールドカップに出れるほどのスピードを出せた。レース・コースに慣れているということもあったのだろうが、その日も朝から勢いよくスピードを出して滑走していた。ところがきちんとコースの下見をしていなくて、向こう側の斜面が見えないところで思わぬビッグ・クラッシュ。何かにぶつかったというわけではないが、上半身と下半身が折れるような転び方をしてしまって、その人は一生下半身不随という大ケガをしてしまったのだ。これは僕の推測の部分も多分にあるのだが、その人は早く上達してしまったために、転び方を理解していなかったように思う。普通スノーボーダーというのは、最初のうちに逆エッジなどで何度も転び、いろいろ試行錯誤の結果最初のターンができて、だんだんとカービング・ターンができるようになる。その過程の中で自然に転び方も体で覚えて行くものだ。ところがその人は、1年目に急に上達してしまったために、転び方など理解せずに来てしまってその代償が一気に出てしまったようだ。

経済でも何でも急激に上昇してしまったものは弱い側面を見せることがあるが、スノーボードの上達もまったく同じ部分があると思う。そういった意味で、徐々に上達する心がけをすることが、一生楽しいスノーボードをすることにつながると考えている。とかく、スノーボードを始めたばかりの頃にはガムシャラに行きたい気持ちになるものだが、慣れて来た時が一番危ないと心を引き締めた方がいいだろう。またすぐに上達しなくても焦らずにスノーボードと付き合って行き、地道に上達して行けば長い人生の中でハッピー・スノーボーディングができる。