よけいな意識をしない勝負

今年の春、マーク・アンドレ・ターレの家に行って撮影したけど、なかなか興味深いシーンやコメントがあった。
マークは自宅で、スケートの板を筒型の木に乗せてバランスの練習をしている。実際、僕なんかやると立つだけでも一苦労なんだけど、マークはそこでノーズプレスの格好やテールプレスの格好をする。これだけなら特訓すればできるようになるように思うけど、ここからさらに回転をするのだ。筒型の木に乗っているスケートボードを跳ねさせて180回転させ、さらにそのまま筒型に乗るというのだから、ちょっとした芸当である。
この時、マークが「いつもできるのに今日はできないなあ。最近、ガールフレンドが家に滞在したり、また大会もあってバタバタしてしばらく練習してなかったから」なんてボヤく。その後に言った言葉が興味深い。

「ああ、カメラのシャッター音を気にするな」と自分に言い聞かすのである。つまり、マークは技をメイクすることに集中するよう自分に言い聞かせたのだ。
さらにこの練習シーン撮影後には様々なインタビューをしたのだけど、ここでもマークは集中に関するコメントを伝えた。
「ビッグ・エアー大会に出始めた頃は常に周りの環境に意識し過ぎた。観客のこと、テレビカメラのこと、応援してくれる人のこととか。だけど、ある日、そういったことに惑わされるのではなく、自分が今から行う技に集中することを覚えたんだ。それから、良い結果が出るようになった。」
(流石に世界のトップ・ワンメイカーだけにそのバランス力も凄かったマーク)
※この練習風景の模様は、SnowBoader誌の秋発売号と浪人3でも見ることができます。お楽しみに!

スノーボードをやっていて、意外に多くの失敗を招く原因は、この集中力を欠けてしまう環境のような気がしてならない。例えば、パークに行ってキッカーでジャンプする時に、多くの人は飛ぶ前に他人の目を気にしていないだろうか。他の例では、検定を受ける時など、ジャッジの目が気になるあまりにいつも自分の滑りができていないことがないだろうか。結構、多くの場面で他人の目を意識してしまう場面が多いように思われる。

だけど、本来僕たちがこれから行う滑りの前に考えるべきことは、その滑りやトリックに集中することである。確かに周りから「カッコいい」と思われたいし、まして可愛い彼女の前では、カッコいいところを見せたい気持ちはわかるけど、結局のところは大切なのはこれから行うことに集中すること。カッコいいと思われるのは、その技やカッコいい滑りを披露した後なのだから、変に自分を惑わす意識に捕らわれないようにしないと。

別のケースでは、「ここでうまく飛べなかったらどうしよう」とか意識して、よけいな心配で技のメイク率を下げてしまうケースがある。こういう時には、
「他人はあまり自分のことを意識していないもの」
「今、やるべきはこれから決める技のことだ」
「そのためには、低い姿勢でアプローチして・・・」
など、技をやることに意識すること。

集中することが大切で、「カッコいい」と呼ばれるのはその後で思われればいいことである。
ちょっと話が反れるけど、文章なんてのもあまり他人を意識すると、変に媚びた文章で良くないと思う。だから、僕は思ったことを素直に書き、それがみんなに役に立つだろう、という適度な他人への意識を持ちつつこのような執筆作業をしているのだ。
早い話、見出しにあるようによけいな「意識をしない勝負」。これがスノーボードには大切です!