現代版プロ・スノーボーダーになる方法

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これまでにも何度かこのようなコラムは執筆したが、2020年代に入って状況が変化して来たところもあるので、改めて「現代版」という形でプロ・スノーボーダーになる方法をご紹介。

文:飯田房貴

目次

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プロ・スノーボーダーとは肩書ではなくお金を稼げること

今さら語るべきことではないかもしれないが、プロ・スノーボーダーの定義についても伝えたいと思う。
それはズバリ!お金を稼げるライダーのことだ。
日本では、全日本選手権などで活躍することによって、PSAが定めるプロ資格を取ることができるが、あくまでもそれは資格であって、食べることにはならない。(※プロ・スノーボード資格になる方法は、以下のPSA公式サイトHOW TO BE A PROを参考)
http://www.psa-asia.com/information/howtobeapro.php

むしろ、プロ登録することで賞金で食べていくことはできないので、名誉職的な部分が大きい。年会費を69000円を払うことになるので、むしろマイナスになるケースの方が多い。
プロ資格を取ったきっかけで、スノーボードのメーカー契約金が上がるケースはあるが、それでもプロ資格をメインで食べていける人はほぼいないだろう。
今回、ご紹介する内容は、あくまでもスノーボードをして報酬をもらえるプロという定義で伝えていきたい。
(以下動画は、まだあどけない岩渕麗楽が15-16シーズンのプロ戦の優勝コメント。この時の賞金が20万円で、これではとてもではないないが食べて行けないだろう)

オリンピック、Xゲームに出場できる実力があること

かつてのプロ・スノーボーダーは、競技はそこそこにその後、雑誌やビデオを通してプロ活動を行っていくという方法もある程度は確立していた。今でもそのような流れはあるが、現在、国内においてこのような映像のプロというのは、ほんの一握りだ。
それよりも、もっとしっかりと稼ぐようになるには、競技で知名度を上げる必要がある。4年に一度のオリンピックに出場すること。あるいはアメリカのテレビ放送局が主催する一大ビッグアクション・スポーツコンテンツのXゲームに出場できるような実力を付けることだ。

Xゲームに出場すれば、招待を受けるだけで賞金を稼げるし、さらに成績によって数百万で稼ぐこともできる。Xゲームに出るような有名選手ということで、スポンサー契約もしやすく、大手エナジードリンクのメーカー、RED BULLやMONSTERなどから数百万、数千万の契約金をもらえることもできるだろう。
だから、まずはこのレベルに達する実力を付けるスノーボード選手になることが大切だ。
(以下動画は、2018年にXゲームで金メダルを獲得した時の平野歩夢。優勝賞金は2万ドルおよそ240万円で、出場した選手全員が賞金をもらえる上、渡航費なども支給されていると言われている)

https://youtu.be/dmm6e-h4psw

子供の頃からスノーボードをやらないと間に合わない時代

かつて90年代は、ある程度、大きくなってからスノーボードを始めてプロ・スノーボーダーになるケースもあった。
例えば、布施忠は高校の時はかなり真剣に野球に取り組んでいたというし、ライオ田原は高校サッカーを頑張っていた。
高校年代でスノーボードをそれほどやっていなくても、何か違うスポーツの一生懸命に取り組んでいた人が、その情熱をスノーボードに注ぐ込みプロ・スノーボーダーになった例はあったのだ。
しかし、現代のオリンピックで活躍するナショナルチーム選手というのは、ほぼ十代だ。今季、22-23シーズンに向けてナショナルチームが発表したスノーボードのビッグエア、スロープスタイルの選手は、鬼塚雅が最高年齢で23歳である。他に二十歳前後の選手が数名いて、残りほぼ十代だ。

(SAJ スロープスタイル/ビッグエア 強化指定選手を参考)
http://www.ski-japan.or.jp/teamsnowjapan/SBSSBA/2022/

他のプロ・スポーツでは、20代から30代が全盛期だったりする例はあるが、スノーボードのフリースタイル種目(※スピード種目は別)は、10代の後半から20代前半がピークという感じ。このことは、身体の動きで表現する体操競技、あるいはフィギュアスケートなどと似ているだろう。
だから、子供の頃から英才教育のような感じで、スノーボードを打ち込んで行かないと間に合わないのである。

このケースからややズレた例で、世界王者になった例ではアンナ・ガッサーがいる。彼女がスノーボードを始めたのは、9歳という年齢で、コンペティションに参加し出しのは11歳。それは現代のスノーボードの状況では遅い方だった。しかし、彼女は元々オーストリアを代表する体操選手の一人で、その身体を動かす能力の高さがスノーボードに活かされた。

だから、基本的には小学生年代からすでに大会に出るような選手でないと、プロ・スノーボーダーになるのは難しいだろう。

(小学生の時に、ウィスラーに来ていた鬼塚雅。すでに世界を視野にスノーボードに打ち込んでいた)

英才教育プラスでメンタル面の強化!

これまで僕は、スノーボーダーに関わらず、スキーヤー、ゴルファーなど、幼少年代で活躍した一方で、大きくなってからバーンアウトしてしまったような例も見て来た。
子供の頃から親は真剣にサポートした結果、スノーボードはメチャクチャにうまくなってナショナルチームには入れたけど、そこから伸びなかった例など。

現在トップ選手でもメンタル面で問題を抱えた例もあり、トップに行くほど精神的な負担は大きい。

もしあなたのお子さんが、スノーボードが大好きで「将来プロを目指したい!」と言い出したら、まずはあなたが子供以上に結果に対して熱くならないように気を付けてほしい。というのもお子さんがスノーボードを好きでずっといたいためには、親の気持ちよりも本人が本当に「頑張りたい」という気持ちが必要だからだ。逆に親が熱くなってしまうと、例え将来オリンピックに行けたとしても、急に熱が冷めてしまってプロ・スノーボーダーをあきらめてしまっりする。親の顔色を見て、親から逃げるためにオリンピック選手を目指す例もあった。つまり、親が望むオリンピックに行けたら「おしまい」ということになってしまったのである。

一方で、子供をうまく支えながら、ある程度、子供に自由に好きなスノーボードを陰ながらサポートしていた例では、子供は成長して選手として活躍し、その後もプロ・スノーボーダーとして活躍した例が多い。特に海外のライダーでは、こうした良い例をしばしば聞く。

アジア人の悪い癖というか、親が必要以上に入り込み過ぎて、逆に子供のメンタルがダメにしまったケースがある。だから、子供との距離感には気を付けてほしい。何度も言うが全面的なサポートという気持ちは良いが、必要以上に結果にこだわらないという姿勢が大切だと思う。

ショーン・ホワイトやクロエ・キムは幼少時代に、まだ早朝暗い内から親がドライブして、大会会場に通うような日々を送っていた。だけど、おそらく親は結果が悪いからと言ってガミガミ叱るようなことはなかったのだ思う。ビデオを撮ってあげたり、どうしたらもっとうまくなれるか、いっしょに研究していったのではないだろうか。上から目線で伝えるのではなく、子供のスノーボードのやる気を後押しするように親御さんは陰ながら支えたのだろう。

先日、ベーブルース以来の2桁ホームラン、2桁勝利(ピッチャー)の偉業を成し遂げた大谷選手の高校時代に掲げた目標シートは有名であるが、そこには「運」という項目がり、「運」を得るために8項目を掲げたのは、

・あいさつ
・ゴミ拾い
・部屋そうじ
・道具を大切に使う
・審判さへの態度
・プラス思考
・応援される人間になる
・本を読む

とある。


大谷選手は、「運」の他にも「ドラ1・8球団」という大きな目標(※上のイラストのど真ん中に掲げた目標)のために、「人間性」「メンタル」などを掲げているが、僕はこの「運」を得るための8項目が、そのままメンタルの強さにもなったのではないか、と思っている。

つまり、僕が言いたいのは、親は全力で子供をサポートするべきだが、スノーボードを続けられる楽しい環境作りをしてほしいということ。あとは将来、精神的な壁にぶつかっても、そこで負けないような人間性を築き上げてほしいということだ。

コラムニスト・飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをし、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は37年。
スノーボード情報を伝える専門家として、2022年2月19日放送のTBSテレビの『新・情報7daysニュースキャスター』特集に、また2022年3月13日に公開された講談社FRIDAY日本が「スノーボードの強豪」になった意外な理由にも登場。

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