【コラム】スノーボード板ハンマーヘッドでカービングって反則!?

文:飯田房貴 fusaki@dmksnowboard.com

先日、ツイッターでハンマーヘッドに関する書き込みを見かけた。
「カービングが簡単にできるハンマーヘッドの板のライダーは、カービングを語れない」というような内容だ。

正直、しっかりと読んでいないのだが、これまでにもスノーボード界の中には、
「ハンマーヘッドのカービングって反則だろ!?」
みたいな声は出ていたので、自分の意見を伝えたいと思う。

まず結論を言うと、「アリ!」だと思う。

カービングしやすい板に乗って、カービングを楽しむって、自然な考えだと思うのだ。

グラトリ好きな人は、グラトリしやすいような跳ねやすい板を乗ったりする。
パウダー好きな人は、フィッシュのような形状板で、ツリーランを楽しむ。
それと、同じではないだろうか?

否定派の意見としては、現在のフリースタイル・ボードが主な状況で、アルペン的なハンマーヘッドをフリースタイル用の板として使うことに、一種の嫌悪感を感じるのかもしれない。

おそらく、有効エッジが長く、固めの板であるハンマーヘッドは、元々アルペンボードとして発展したのだろう。昨今のカービングブームの中で、フリースタイル用としても使われるようになったのではないだろうか。

「アルペンならハードブーツを履いてアルペンやれよ!」
「フリースタイルボードに乗ってカービングを楽しむのなら、そもそもハンマーヘッドに乗るのではなく、よくあるラウンド形状のフリースタイルボード乗ればいいじゃん」

なんて、気持ちもあるに違いない。

DMKクラブの北海道キャンプで、コーチングもしてくれるライダーのテル(藤本輝海)は、相当エグいカービングターンをする。ライディングのポリシーには普段着的なフリースタイルボードに乗って、その真骨頂のカービングは自身が持つ技術でカバーするということを聞いたことがある。

実際、テルのライディング映像を見ると、確かに、そのへんにありそうな(?)と言っては御幣があるが、誰もが愛用するようなフリースタイルボードに乗っている。それで、まるでハンマーヘッドに乗ったようなレベル高いカービングをするのだ。
その融合されたテクニックは、カービングからグラトリまで自由自在で魅力的!

自分も「こんなふうにヒールサイドをやりたいな」と、今季もお尻が付くほど深く回ってみたけど、残念ながらなかなかうまくいかなかった。そのまま低速して、尻餅つきながら止まってしまったことが何度かあった。


数年前、dmkキャンプで野沢でコーチングした時、あるサポートしてくれたライダーが、こんなことも言っていた。
当時、彼はデモ選を目指している選手であったのだが。

「表彰台見ると、ハンマーヘッドの選手ばかりなんです。
でも、僕は普段、使っているフリースタイルボードで表彰台に立ちたいです」

なんとなく、その気持ちもわかる。
やはりテルと同じように、普段使っているフリースタイルボードで勝負したいのだろう。

かつて90年初め、クレイグ・ケリーというスノーボード界の神にも崇められたライダーがいた。
当時のワールドカップの種目は、ジャイアントスラロームと二人同時にスタートするデュアルスラローム、そしてハーフパイプの3種目だった。
2つのアルペン種目は、ヨーロッパ勢が強く彼らは全員、ハードブーツにアルペンボードを使用していた。
しかし、クレイグだけが、スラロームでもフリースタイルボードを使用。またスーパーGにおいても、板はアルペンだったけど、ブーツがハードでなくソフト。あの当時、180センチもの長い板にソフトブーツというのは、痺れたものだ。それで上位の成績を収めていて、その姿に当時のファンたちは、感動させれた。

だから、今、ハンマーヘッドに乗りたくない人は、同じような気質を持っているのかな、と思うのだ。

ちなみに当時のフリースタイルボード、さらにソフトブーツは今のマテリアルよりもずっとサポート力が弱くグニョグニョだ。
だから、90年代初めのスノーボーダーは、カービングを楽しみたいならアルペンボード、その他、初心者でターンを覚えたかったり、フリースタイルを楽しみたい人ならフリースタイルボードというチョイスだった。

今では考えられないが、当時はかなり多くの人がアルペンボードを乗っていたのだ。

それでも、全体からしたら、9対1ほどで圧倒的にフリースタイルが多かったのだが、今よりもずっと多くゲレンデでアルペンボード愛好家は見かけたものだ。

現在、なぜこれほどまでにアルペンボード使用者が減ったというと、技術革新が大きいだろう。誰もが購入できるフリースタイル用のマテリアルは、高速でのサポート力が高い。アルペンボードほどではないかもしれないが、フリースタイルボードでも充分にカービングが楽しめる!
さらに、そのカービングをよりサポートしてくれるという板が、ハンマーヘッドである。カービング思考が高い人に向けた、よりハイエンドな板というカテゴリーに属すのかもしれない。

ところで、ここまで偉そうに語って来た自分だが、実を言うと、まだ一度もハンマ―ヘッドに乗ったことがない。
だけど、かつて僕はアルペン戦士で、実を言うと、カナダではプロカテゴリーでレースに出ていたこともあるのだ。あの長野五輪で大麻を吸って金メダルを獲ったお騒がせカナディアンともいっしょにゲートを立てて練習していた。
だから、なんとなくハンマーヘッドの乗り味が想像できる。

誰かが言うように、決して誰もが簡単に乗りこなせるものでもないような気がする。

トップ形状が、ラウンドしていないので、低速時のターンの導入は丁寧に入っていかなくてはいけないのではないだろうか。
しかし、一度スピードに乗ってしまえば、バシバシと高速で切り替えもできそう。
圧雪されたバーンでは、普段フリースタイルボードでは得られなかったようなキレ味も楽しむことができるのだろう。

ただ、スノーボードの板は、ゴルフのようにシチュエーションごとに気軽にクラブを使い分けるにはいかない
自分の仲間にも、スノーボード・トリップで2、3本ほど板を持って来て、状況によって使い分けを楽しんでいる人もいるが。自分にとっては、こうしたことは面倒に感じてしまう。
確かに午前と午後に板を使い分けてみるのも楽しめるだろうが、バーン・コンディションが変化したなら、朝から使っている板をそのまま乗って、技術でカバーしたいと心掛けている。

ハンマーヘッドって日本だけのカテゴリー!?

そもそもハンマーヘッドの板というのは、世界でどのようなイメージを持たれているのだろうか?
僕が知る限り、スノーボードクロスのような選手でない限り、あまり使われていない。
ウィスラーでも見かけたことがない。

僕のイントラ仲間には、カービングが大好きな人がいる。彼はコロラドにまで行って、その手のカービング大会に参加するほどの腕前だが、ハンマーヘッドには乗っていない。日本の一部で、ハンマーヘッドボードが人気あると伝えると、ちょっと驚いていた。

仕事柄、世界中の最新動画を日々チェックして、そこでいくつかのカービング系の動画も見かけるが、ハンマーヘッドはなかなかお目に掛かれない。

なぜ、海外では日本のようにハンマーヘッドの愛好家が少ないのか?

おそらく、ゲレンデの作りも関係しているように思う。
日本では、スキー場に多くのロープが張り巡らされていて、圧雪ばかりされたバーンを楽しむ傾向が強いと思う。
しかし、海外のスキー場は、そのコース設定も比較的に大らかだ。日本以上に管理されておらず、「山そのままの形状をどうぞ楽しんでください」という傾向が強い。
結果、パウダーだがコブだか、よくわからんような大変なところを滑るケースも多く、そんなところではハンマーヘッドに乗っても合わない、ということもあるだろう。

日本でスノーボードしていると、地元のイントラの方が、決められた同じバーンを何度も何度もカービング練習している姿を見るけど、ああいう国民性もハンマーヘッド愛好家を増やす理由になっているのかな、とも思う。
おそらく、ウィスラーで普段スノーボードしている人が、あれほどまで同じバーンで同じような滑りをしている人を見たら、「どこかの新興宗教に入ったのか?」と疑ってしまうだろう。野球で言えば素振りとかキャッチボールという、繰り返し上達するための反復練習をしているようなものだが、海外ではあのような真面目なスノーボーダーは、あまり見かけない。

だけど、海外で本当にハンマーヘッドって、受け入れられないのだろうか?

僕の答えは、「受け入れられると思う」だ。

というのも、あれは2年前だったか、CK4プロダクトのホッシー監督に連れられて来た小柄な女性ライダー、チャンカワのライディングが話題となったのだ。(以下、当時のレポート記事:https://dmksnowboard.com/hossy-melissa-whistler/

彼女がハンマーヘッドに乗って描く深いカービングターンは、地元のカナディアンたちも驚いていた。
残念ながら、その映像は見つけることができなかったが、IRIS.infで河合美保の2019パートを発見した。
このコラムの最後に、彼女がハンマーヘッドに乗って魅力的なターンする動画を紹介しよう。