FISがPOWの主張に反論!FIS VS POWという新しい展開に

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オリンピックのスノーボード種目を管轄することで知られるFIS(国際スキー・スノーボード協会:The International Ski and Snowboard Federation)が、非営利の環境団体として知られるPOW(Protect Our Winter)と争う事態に。
最近、POWがSNSに投稿した主張にFISは真向反発し、FIS VS POWというこれまで聞いたこともない新しい展開に。

まずは、先にPOWが投下したSNSを拝見してみよう。
彼らの主張は、以下の通りだ。

「(スイスの)ツェルマットのテオドゥル氷河では現在、スキーワールドカップに向けた大工事が進行中だ。
昨年の同大会は雪不足のため中止となった。
今年、大会を確実に開催するために投入された資源は、許容範囲と常識の範囲を超えている。シャベルで氷河を掘り起こし、スキーヤーを迎える斜面を形成する映像は衝撃的だ。氷河の融解が加速し、この2年間だけで氷河の体積の10%が失われた今、このような光景は理解できない。
このようなイベントを主催するフィサルパインや観光地は、その信頼性を維持するために、模範となる行動をとり、現在の課題に真剣に取り組んでいることを示さなければならない!」

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ということで、POWはかなり強く「いったい何をやっているんだ!」とばかりにプンプンに怒っていることが伝わって来る。
私が知る限り、過去にPOWはこうしたスキー協会のトップ、巨大団体とも言えるFISに嚙みついたのは初めてだと思う。過去にあったスノーボードの協会のISF、あるいは選手、ライダーなどはFISに噛みつくようなことはあった。それは、FISが強引も言えるような手法でスノーボードのオリンピックを管轄して来たこと。あるいは、FISの一部の幹部が、スノーボーダーにとって良い印象を持っていないようで、大会運営の軋轢など。
しかし、POWは非営利とは言え、今では世界的にスノー民衆の大きなパワーを持つ団体だ。そんなPOWが、FISにこのように噛みついたのは、意外だったし驚いた。正義は我にあり!という強い気持ちで巨大団体に挑み掛かった印象だ。

この投稿は、SNSで大きな話題となり、一方のFISも黙ってはいなく、以下のようにホームページを通して反論した。

FIS response to POW Petition(POW嘆願書に対するFISの回答)
https://www.fis-ski.com/en/international-ski-federation/news-multimedia/news-2022/fis-response-to-pow-petition

冒頭、FISはこのように伝える。

「FISは持続可能性をすべての行動の最前線に据えており、FIS戦略計画では気候変動対策へのコミットメントを明確にしています。浅薄で注目を集めるキャンペーンではなく、地球の未来とアスリートの両方に意味のある変化をもたらす長期的で実践的なプロジェクトを支援しています。
一部をご紹介しましょう」

この後には、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に署名したこと。2030年までに二酸化炭素排出量を50%削減することを約束。持続可能性計画に取り組んでいて、これからの冬季シーズン中に可能な限り多くのデータを収集し、CO2排出量を最も正確に推定できるようにする予定など。

しかし、私が思ったのは、FISは長い回答文の中で、ツェルマットの工事のもたらす氷河のダメージにはほとんど触れていないことだ。一応、いろいろ思考してW杯の開幕を一週間遅らせたということは伝えてるが。中身を読むと、いかにこれまでにFISが地球環境問題に取り組んで来たかとか、SDGSの目標17に従っていること、他のスポーツ連盟やNGOとのパートナーシップの強化に取りんでいることなど、訴えている。

問題をすり替えているというか、今回、POWが指摘しているツェルマット氷河の破壊という問題には触れていないように思う。私の英語理解力がなく、誤っていたら、申し訳ありませんけど…。

しかし、FISはPOWのこの投稿している写真が虚偽していることも主張。もし、それが本当なら(おそらく本当だろう)、POW側の主張には、大きな弱点というか、クエッションマークが灯ってしまう…。

「嘆願書には、最近撮影されたものではなく、WWFオーストリアが2019年に撮影した写真を使用している。この写真にはレッテンバッハ氷河(ゼルデン)やテオデュル氷河(ツェルマット)は写っておらず、ピッツタール氷河が写っている。この場合、あなたが意図的に虚偽の情報を用いて世間を欺き、FISに対する敵意を煽ろうとしていることは間違いありません。このような行為は非倫理的であり、直ちに訂正するようお願いします。」

そして、FISは以下のような主張で締めている。

「私たちは、Protect our Winters(POW)がこの挑戦の味方になってくれることを期待していた。それどころか、あなたは別の道を選んでいるようだ。(中略)
あなた方の行為は、FISの評判を傷つけるだけでなく、スキーとスノーボードの未来、そして気候変動対策のために純粋に戦おうとしているすべての人の信用を傷つけるものです。」

それにしても、FIS VS POWという展開には、長年この業界を見て来た私にとっても意外だし驚いた。しかし、改めて考察すると、これはスキーというヨーロッパ上流階級、アルパインスキー、レースというような世界と、グラスルーツで育って来たスノーボーダー、フリースタイル思考との対立が根にあるのかもしれない。そう考えれば、「過去にも似たような争いがあったよ!」と思い出す。

ちなみにPOWの方は、1週間前に先に紹介した爆弾投稿し、その後も2回も投稿を続けて、FISを糾弾するような姿勢を続けている。以下の投稿は、最も最近のものだ。

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