スノーボードのブーツは必ずしもキツく締めなくていい!

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今季でスノーボードのレッスンも90日を超えました。
ウィスラーという場所でレッスンしていると、世界中のスノーボーダーを迎えます。
カナダ人はもちろん、お隣のアメリカ人、南米はメキシコ、ブラジル、あるいはヨーロッパではイギリス、そしてオセアニアのオーストラリアの方も多いです。中国、香港、台湾の方たちも近年増えています。
その世界中からやって来る生徒さんたちを見ていると、ほぼ全員の方がスノーボードのブーツを強く締める傾向があります。
特に、自分がナーバスの状況においてブーツをよりキツく締めます
そんな時、僕は「必ずしもキツく締めなくていいと思います」とアドバイスします。

新しいブーツや緩めで古いブーツはより固めに締める

僕のブーツの締め方は、そのブーツがどれだけ新しいかどうがで決まって来ます。

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例えば、新しいブーツの場合、インナーはまだ固めなので、それだけでサポート力が高いと言えるでしょう。
逆に使い込んだブーツでは、インナーがへにゃへにゃになって来るので、より強く締めないとサポート感が弱いということが言えます。

極端な話、まだ下ろし立てのおニューのブーツなのに、インナーからアウターまでビチビチに締めると、ひじょうに扱い難いように思います。
新しいブーツは、自分が思っているよりも緩く締めることで、使いやすさが増すように思います。

(ブーツが新しいか古いかというポイントは、締め具合で大いに考慮されるべきでしょう)

遊ぶ用途によって締め方を変える

あなたがどんなスノーボーダーであるか?それによってもブーツの締め方というのは、変わって来ると思います。

例えば、硬い斜面でもビシバシにカービングターンでスロープを刻みたいのなら、ブーツはより強く締めるといいでしょう。
逆にもっと足首の動きが必要になるようなグラトリなどをしたいなら、足首がしっかりと曲がるように緩やかに締めるといいと思います。

個人的にはパウダーを滑る時も、足首がよく曲がった方がいいので、僕はパウダー日は締め方を緩めにします。

ライダーたちに取材すると様々な締め感がある

実際に他のライダーたちが、どんな感覚で締めるのか、取材してみました。
すると、僕以上に緩く締める人はいなかったけど、一方でガチガチにきっちり締めるという人もあまりいなかったです。
つまり、初中級のスノーボーダーの方が考えている以上に多くのうまいスノーボーダーは緩やかに締める傾向がありました。

(今季、よくいっしょに撮影に行くライダー、RYOもあまりガチガチに締めないということでした)

ブーツの締めを勝負を決めるインナーでは2本指が入って構わない

ブーツの締め方で最も影響が高い部分はどこだと思いますか?

多くのブーツでは、
①まずインナーを締めて
②次にアウターを締めるようになっています。

またアウターでも、甲の部分を締める部分(②A)と、スネを締める部分(②B)に分かれたりしますね。

だから、だいたいこの3か所が締める部分なのですが、その中でもどこをキツく締めると、実際のライディングに影響するのでしょうか?

僕個人としては、インナーが大きいと思います。
インナーを強く締めることで、ブーツ全体のキツさが決まるので、アウターの上下2か所は、極端な話、単にサポート役という印象もあります。

状況にもよりますが、僕自身はこのインナーを締める時、2本ほど指が入っても構わない。それくらい緩く締めたりします。

ちなみにアウターに関しては、甲の部分はほぼ締めない。紐が緩まない程度にしておきます。
スネの部分に関しては、状況にもよりますが、甲よりはちょっと締めるくらいです。

生徒さんに、このブーツの締め具合の感覚を伝えると、「えーマジで!」なんて驚かされることが多いですが、だいたいそれくらいの緩さで滑っていることが多いです。これで滑ると、メチャクチャにコンフォータブルですよ~。締め付けが弱いので、一日凄く快適な感覚です。

ただ、同僚のイントラでは、これだと「返って疲れる」という人もいるので、やはりこのへんは個人差なのだと思います。

締め具合をさらに決める意外なインナーのポジション

ここまで話を聞いていただけば、「必ずしもビチビチに締めなくてもいいだな」「個人差があるんだな」というようなことを理解していただけたと思うけど、さらに締め方で重要なポイントを伝えましょう!

それは、ブーツのインナーのタンのポジションです。
具体的には、タンを下げるとよりキツくなります。
またタンを上げると緩くなります。

もし、キツくしたいなら、タンを下げて足とブーツの隙間をなくすようにしましょう。
逆に緩くしたいなら、タンを上げて隙間を作るといいわけです。
このことをぜひ知っていただき、あなたのブーツの締め度の調整にご活用してみてください。

どんな乗り物でも遊びがあるからコントロール性能が上がるもの

ここまで話しても、おそらくみなさんは僕以上にブーツを緩くしてくれないでしょう。
だけど、僕がなぜみんなよりも緩く締めるのか?その確かな理由を最後に伝えたいと思います。

それはどんな乗り物でも、ある程度、遊びがあるからコントロール性能が上がるということがあるからです。

例えば、車のブレーキがちょっと踏んだとたんにブレーキが掛かった場合、ひじょうに乗り心地が悪くなったりします。実際にブレーキがかかるまでの猶予範囲(=遊び)があることで、安心して操作できるのです。

DMK STOREで販売して評判が高いKARNAスノーボーダー用ソックス、その踝の部分を見ると、あえて動きやすさをサポートするかのように圧を弱くする設計になっています。

よくみなさんは、ブーツの隙間をなくす方がよりコントロール性能が上がると思うけど、たしかにそうすればよりシビアな動きは可能になります。一方であまりにもシビア過ぎて、使い難くなるということにも繋がって来ます。野球選手でもゴルファーでも、意外なほどグリップを強く持たず、遊びを大切にして、対応力を高めていますよね。それと同じように、必ずしもダイレクトな作動がコントロール性能に直結しないと思うのです。

だから僕は、一般の人ほど意外にもブーツは緩めの方が滑りやすくなるように思うのです。
タイムを争うレーサーや、よりシビアなエッジングが必要なプロのデモンストレーターなんかは、おそらくキツめに締めているのでしょう。彼らはそのようなスキルも筋力もあるのだと思います。しかし、サンデーボーダーのような方たちは、試しにちょっと緩くしたら驚くほど滑りやすくなったということも考えられます。

そういうことを伝えると、必ずこう言う人もいます。
「緩くしたら、滑っていてカカトが浮いちゃうよ」って。

はいはい、来ましたね。お決まりの質問が!
しかし、そんな人にも僕はこう答えるようにしています。

サーファーの人が、ビンディングという留め具を付けていますか?
スケートボーダーがガチガチなブーツを履いていますか?

横乗りのうまい人は、トゥサイドのターンでカカトが上がったりしません。しっかりと乗れているからです。
カカトが浮く原因は、ブーツの緩さ以上にボードの操作技術に連結しているのです。
例えば、トゥサイドでターンの後半カービングしたいのに、ズレズレになってしまう人はカカトが浮く感覚になってしまいます。
一方で、ボードを自由にコントロールできるようなうまい人は、そんな感覚になりません。

むしろ足首がよく曲がるくらいのブーツの締め具合の方が、よりうまく滑れるものです。
騙されたと思って、一度、ちょっとでもいいから試してみてください。
いつもより、「ちょっと緩めだけど大丈夫かな?」くらいで試して滑ってみてほしいのです。

すると、まあ!!!

飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴37シーズン。そのほとんどの期間、雑誌、ビデオ、ウェブ等スノーボード・メディアでのハウツーのリリースに捧げている。
90年代を代表するスノーボード専門誌SNOWingでは、「ハウツー天使」というハウツー・コラム執筆。季刊誌という状況で100回以上連載という金字塔を立てる。またSnowBoarder誌初期の頃から様々なハウツー・コーナーを担当し、その中でも一般読者にアドバイスを贈る「ドクタービーバー」は大人気に!その他、自身でディレクションし出演もしたハウツービデオ&ハウツー本は大ヒット。90年代のスノーボード・ブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボード・クラブ、DMK Snowboard Clubの責任者として活動し、レッスンも行っている。
普段は、カナダのウィスラーのインストラクターとして、世界中の多くの人にスノーボードの楽しさを伝え続けている。2016-17シーズン、ウィスラーのインストラクターMVPを獲得!!2020年から英語版ハウツーサイトSNOWBOARDTIPS.NETを開設。
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。

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