文:飯田房貴 @fusakidmk
いつものようにウィスラーで、スノーボードのスクールレッスンに行くと、朝、生徒さんからこんな質問を受けました。
「あなたたちプロ(※この場合、スノーボードインストラクターのこと)を見ていると、Step On®を使っているところを見たことないけど、どうしてですか?私は、最近、Step On®を買ったけど、プロが使っていないので、本当に良いものなのかちょっと心配なんです」
たしかに周りのイントラを見渡すと、誰も使っていません。自分の知り合い、友人のイントラでも使っている人は知らないです。
僕は、こんな風に答えました。
「そうですね。僕たちが使っていない理由は2つあると思います。
1つはコスト面。一般的にStep On®の方が、往来のブーツ、ビンディングよりも割高になります。
もう1つの理由は、選択の少なさです。現在、Step On®のブーツを採用しているのは、バートンの他にDC、そしてナイトロ。
Step On®のビンディングは、バートンとフラックスしかありません。このへんのオプション(選択)の少なさが影響していると思います。
だけど、Step On®のシステムは優れたもので、僕は将来、おそらく5年以内には、多くのスノーボーダーが使っていると思いますよ。こんな便利で快適なシステムはないですから。あとナイデッカーというブランドが、スーパーマティックと言って、どのブランドのブーツにも合うイージー脱着システムのビンディングも採用しています。もしかしたら、将来はステップオンとスーパーマティックの覇権争いのようにことなるかもしれません。それはあたかも80年代に経験したビデオ録画再生システム、VHSとベータ戦争のように…」
と、そこまで話して、若い女性の生徒さんには、「VHSとベータ」の話は、ちんぷんかんぷん領域に入ってしまったようなので(笑)、説明を止めました。
(※以上の画像をクリックすると、バートンの更新オンラインサイトのメンズ Burton Step On® Re:Flex スノーボードバインディングに飛びます)
そして、午前中のレッスンを行い、ランチを食べて、午後はピーク・トゥ・ピークのゴンドラを使ってブラッコムに移動。すると、ブラッコムのゴンドラ中間駅に乗ったら、そのゴンドラには一人のスノーボーダーが乗っていました。なんとBurtonが誇るグローバルライダーのマーク・ソラーズです!
僕は、ソラーズとは昔からの知り合いで、彼がウィスラーの高校に通っている時からいっしょに撮影をして来ました。だから、ソラーズに「おお、フサキ久しぶり!」なんて声を掛けてくれて、嬉しかったです。
そして、ソラーズがなんとStep On®を使っていました。
「おーお、マークもステップオンなんだね。ちょうど今朝、生徒さんとなぜプロスノーボーダーがステップオンを使っていないのか。って話していたんだよ。実際、多くのライダーは大会では使っていなくても普段は使っているんだよね?」
「その通り!僕も普段はステップオンを使っているよ。だけど、バックカントリーの撮影のシリアスの場面では、ステップオンを使っていない。だけど、この通り、毎日ステップオンを使っているよ」
「以前、日本人のライダーのヒロト(荻原大翔)のお父さんにも聞いたことがあるんだけど、普段は使っていると聞いていたからね。コンペティターでも多くのバートンライダーが使っていると思っていたよ」
すると、ソラーズは興味深い説明をしました。
「ライダーにとって、ステップオンを使う、使わないという話は、システム(※簡単な脱着方式)というより、これまで使っていなかったブーツ、ビンディングを使う違和感、あるいは経験がないということが大きいと思うんだ。何が言いたいかと言うと、ライダーにとって長年親しんで来た往来のブーツ、ビンディングを変更するというのは難しいこと。だから、最終的にコンペティションや撮影のシリアスな場面で使っていないというだけで、デイリー(毎日)のスノーボードでは、ステップオンは重宝するんだよね。
僕は、最近はずっとバートンの開発部門で仕事しているから、これはプロトタイプで今、試乗しているところなんだ」
「へえ、そうなんだ。プロライダーとして滑って魅せることも大切だけど、こうした開発部門も大事だよね。そして長くこの業界に携われる仕事になるだろうから、とても素晴らしいことだよね」
(※以上の画像をクリックすると、バートンの更新オンラインサイトのメンズ Burton ルーラー Step On® スノーボードブーツに飛びます)
と、ここまでソラーズと僕の会話を聞いた生徒さんは、何を思ったのか突拍子もない質問を投げかけました。
「あなたのそのステップオン、どこで手に入れたの?」
ソラーズは「バートンからだよ」
と回答し、僕は、ズッコケながらも「マークは、凄い有名なライダーで僕が最もリスペクトするプロライダーの一人だよ。だから、バートンから直接ステップオンを支給されて、将来のバートン・ギアをテストしているんだ」
と、答えました。
すると、その生徒さんは自分のスマートフォンを取り、マークを検索を始めて…。
すると、マーク・マクモリスが出て来てしまって、マーク・ソラーズは笑いながら「いやいや、それは僕ではなくて、同じチームの世界一うまいスノーボーダーだよ」と。
「いや、そうかもしれないけど、バックカントリーでの経験はマーク(ソラーズ)の方が上でしょ!ダイナミックでスムーズで超スタイリッシュにバックカントリーのジャンプを決めるんだ」と説明しました。そして生徒さんのスマートフォンを見ながら、「こっちのマークだよ」と教えてあげました。
すると、その生徒さん、早速、マーク・ソラーズをフォローアップ。
もしかしたら、あとでその正体がより詳細に知ることができて、どれだけ凄いライダーと会話したのかわかることでしょう。
ということで、Burtonライダーたちは本当にStep On®(ステップオン)を使っているのか?
回答:はい、実際に多くのライダーは使っているし、便利だと感じている。だけど、一部のライダーはこれまで使っていたギアとの違和感を避けるために、使わない。それはシステムとは関係ない話で。また、使っているライダーでもデイリー(日頃)のスノーボードでは使っていても、よりシリアス度が加わる撮影シーン、大会では使わない傾向にある。
という感じです。
僕たちのようなスノーボード愛好家にとっては、とても便利で優れたシステムなので、ぜひぜひ検討したいアイテムだと思います。
ちなみに、僕もまだ使っていないけど、将来は使ってみてもいいかな?と思う反面、頑固爺さんのように往来のビンディングとブーツは使用するようにも思います。世界のスノーボーダーの8割がStep On®を使うようになっていても、頑なに古いスタイルを守っていることでしょう。
まあ、腰を屈んでビンディングを脱着することが億劫になればStep On®を使うだろうけど、現在、55歳。まだまだ元気なので、しばらくはオーソドックスに攻めます!
飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをしており、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は39年。
スノーボード情報を伝える専門家として、2022年2月19日放送のTBSテレビの『新・情報7daysニュースキャスター』特集に、また2022年3月13日に公開された講談社FRIDAY日本が「スノーボードの強豪」になった意外な理由にも登場。
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