【コラム】なぜ日本のイントラ資格は世界に認められないのか?

 

文:飯田房貴

カナダのウィスラーは、世界を代表するようなスキー場だ。
そこで働くインストラクターの数は、なんとシーズンで1300人以上とも言われている。

スキー・スノボ客はカナダだけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、アジアなど、世界中から集まるだけに、インストラクターも国際的だ。英語以外にもスペイン語や中国語など行き交う。

特に2年間のワーキングホリデービザを所得できる、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスのイントラが多い。
その中でも、日本人のイントラは優秀な人が多いようだ。
世話焼きのところがあり親切丁寧な日本人イントラは、どこのポッド(部署)重宝がられているように思う。

レッスン代金も高額で、例えばプライベートで一人のイントラを斡旋すると900ドル近くも掛かる。イントラの報酬でもおそらく世界でもトップクラスだろう。

そんな世界を代表する国際的なスキー場ウィスラーで1つ気がかりなこと。
それは、日本のイントラ資格が認められていないということだ。

ウィスラーの報酬は、そのキャリア、イントラ資格、さらには話せる言語の数や、これまでのイントラ実績(日数・時間)にもより、細かくポイント加算されるシステムがある。その中の1つにカナダ以外のイントラ資格も影響してくる。

その国は10以上もあり、アメリカやヨーロッパの国々など。オセアニアのニュージーランド、オーストラリア、さらに南半球ではアルゼンチンまである。そしてアジアでは、お隣の韓国も!
だけど、なぜか日本がない・・・。

なぜだ!?
日本のイントラ資格は世界に認められていないんだろうか?

 

仮説1 ティーチング試験がない!?

そこで仲の良いイントラに聞くと、
「自分もくわしいことはわからないけど、日本ではティーチングの試験がないからでは?」
とのこと。

なるほど。カナダでは当然、滑りがうまいだけでなく、教え方をしっかりと学んでいるかどうか。そのへんも考慮される。

そこで、そのことが事実なのか確かめるために、日本を代表するデモンストレーターの方にその件を伺ってみた。
しかし、その方はイントラでないので、あまり詳しいことはわからないようだった。しかし、調べてくださり、以下のような回答をいただいた。

「ティーチングに関しては、講習もあり、指導に関してはしっかり勉強をすることが必須です。
資格を取得には実技プラスでティーチング指導があります。」

ということは、前途のイントラ仲間の「もしかしたら?」という仮説は、違うようだ。

さらにウェブサイトなどでチェックしてみた。

https://www.jsba.or.jp/education/lisence_manual/

以上のページを読んで思ったのは、そもそもカナダのように雪上でのティーチングテストはなく、もしかしたら筆記試験、もしくは講習などによりティーチングを学んでいるのでは?ということ。

カナダだと、雪上での実技の他に、雪上でのティーチング試験も同じように重要視されているわけだけど、それは机の上で学んでいるのかも!?

どちらにしも、日本でもティーチング指導されているのは事実。だが前途のように、雪上ティーチング・テストということがないのか、それかその内容がうまくカナダのウィスラーの方までうまく伝わっていなくて、イントラの資格報酬にポイント加算されないのかもしれない。

 

仮説2 団体が統一されていない

スノーボーダーにお馴染みの日本スノーボード協会、JSBA。
さらに日本のナショナルチーム、スキー&スノーボードでお馴染みの日本スキー協会、SAJ。
さらにもう1つ、プロスキー教師協会のSIAもある。

日本って、スノーボードのイントラ資格に3つの協会があるのか!?
だとしたら、これが混乱を招いている原因かも。

正直、SAJとSIAと2つのスキー団体がある理由ももう1つわからないけど、日本人である自分がわからないくらいだから、海外の人からしたらもっとわかり難いかもしれない。

ちなみにだけど、日本では以前、スノーボード協会JSBA(※現在のプロ協会はPSA)以外に、JPSTというプロ団体があった。すぐに消滅してしまったけど。実際、僕は1992年に白馬乗鞍で行われたJPST大会に参加したことがある。もし、あのまま存続していれば、さらに混乱を招くことになっていたかも。

ともかく、団体が多くまるでプロボクシング世界のようだ。だけど、ボクシングのようにベルトを賭けて統一戦とかできないだろうから、混乱は放置されたまま!?

 

実を言うと日本でのイントラ実績は認められている

もしかしたらティーチングの指導・講習があることが明確に伝わっていないのかも?
いや、それ以上に団体が1つにまとまっていないことが、大きな原因では?
2つの仮説を伝えたけど、ここで1つ伝えたいこと!

というのも、日本のインストラクターの実績、キャリア自体は十分にウィスラーでも認められていることだ。

ウィスラーでインストラクターになる時、これまでカナダ以外の国でどれだけの日数や時間、イントラとして活動したか、それもポイントに加算されるのである。

つまり、日本の団体から配信される情報は、うまく伝わっていないかもしれないが、その個人のイントラ実績は認めているのである。だから、自分も10年以上も前に、カナダのイントラになる時、これまでDMK SNOWBOARD CLUBで行って来たコーチングの日数や経歴なども伝えて、それが考慮された。

ウィスラーに来るスキーヤーやスノーボーダーのレベル、さらにはこれまで受け入れて来た日本人イントラの実績など、ウィスラー側は知っているだろうから、日本人を高く評価する傾向もあるのかもしれない。しかし、このコラムのテーマである、日本の資格が評価に反映されないのは、よくわからない・・・。

 

イントラ協会の運営・お金の話

下世話な話になって恐縮だが。
そもそも、世界のスノーボードの協会やイントラ資格などが、どのように成り立っているのか。ビジネスという面からも考えてみたい。

まずカナダの場合、1級とか2級とかはない。
だから、日本のように、まずは2級を取り、次に1級をとってC級イントラにチャレンジ。その上で、B級からA級イントラという流れはない。

カナダでは、いきなりレベル1という初心者を教えるイントラ資格に挑む。
受験料は払うが、そのCASIという団体に毎年、費用を払うこともない。払わなくても資格は保持され続ける。
年間費用を払ってCASIならではの特典、バートンなどの提供先のスノーボード・カンパニーのギアを安く買えるというようなことは選べるし、CASIからリリースされる情報などはもらえたりするけど。

レベル1に進んだ人は、さらにレベル2、そして3からレベル4という流れだ。
レベル1以降にパーク資格レベル1や2という道もある。

カナダの場合、何級というようなものはなく、純粋にイントラ資格を世界中の人に売っている。その人気は凄まじく、国内はおろか国外でもCASI資格の試験が今も世界のどこかで行われているのだ。そして、ウィスラーにも世界中の人が、CASI資格を取りに来る。特にイギリス、オーストラリア、近年は中国でも人気が高いようだ。

カナダのイントラ資格は、おそらく世界で最も人気が高いもの。それで、イントラ協会の運営は十分に成り立つことが考えれる。

CASIでレベル3を持つような有能な資格者は、さらにそこから講師資格なども取り、CASIの試験官として活躍する人もいる。その試験管に払う報酬も、なかなかのものだ。試験官は普段はイントラとして活躍する人もいるが、CASIとの日程が重なった場合、試験管の仕事を優先したいほど良い報酬がもらえるようだ。

だけど、おそらく海外の人で、日本のJSBAなどのイントラ資格を取りに行く方は、極々少数だろうお。だから、団体は運営するために、級のような制度があるのかもしれない。最もこれは意地悪な見方で、素直に考えれば級を求めていている人は、自分がどこまで滑れるのか?そういうことを知りたくてチャレンジしているのだろうけど。

日本のイントラ資格は、まだ世界的に見て、認知度が低いようなのでもっと世界的にも認められるように英語または中国語の配信をしたら、今後は中国などアジアなど中心に、広がるのかもしれない。
また日本のスキー場でインストラクターになることを憧れに抱いた人にとっても、日本のイントラ資格を取ることが1つの目標になる可能性もある。

実際、ニュージーランド出身のイントラ仲間にこの話をしたら、ニュージーの資格は同じレベル1でもオーリーのようなフリースタイル項目もあり、現在のスノーボードの流れをしっかりと汲んでいる。またペダリングと言って左右の足を分けて使う技術なども教えていて、より高度なティーチング技術が求められていて、それが世界的にも認められていると。カナダのようなスノー大国でないニュージーランドだが、スノーボードの資格という面では、人気はあるとのことだ。当然、ウィスラーのイントラで働く人は、ニュージーの資格ポイントも加わっている。

 

まとめ

可能性として、日本のイントラ資格が世界に認められのは?
その内容が、言語の問題もあって伝わっていないのかも。だから、その内容を英語・中国語などで配信すると良いだろう。

同じ英語が母国語でないお隣の韓国が、しっかりとポイント化されるのは?
このコラムを書くのにあたり調べてみたが、韓国のメソッドは、元々カナダのイントラ資格をベースに伝わったようなのだ。その流れで、韓国の資格が認められている可能性が高い。

日本は、団体がいくつか分かれているが、イントラ資格という面で団体がまとまることができれば、より強い資格となりそうだ。各団体のノウハウを結集し、世界に発信できたら良いかもしれない。

世界では、インタースキーなどのイントラ同士のイベントで、その技術や教え方など他国に伝えて行く場もあるので、そういったところで、日本のイントラ技術の高さ、滑りや教え方などに関しても伝えていければ良いと思う。実際、スキーの方ではそうした配信ができているが、残念なことにウィスラーのイントラの評価にはまだ含まれていない。日本サイドは、さらに力を結集し、世界へ配信することが必要なのかもしれない。