【コラム】二つの枝

文:齋藤 稔

ここ数日シーズン前のイメージトレーニングにとスノーボードのビデオをいろいろと観ているのですが、そのなかにオリンピックのビデオがありました。アルペン競技とHP両方の競技を観ていて思ったのですが、オリンピックを境に、スノーボードというスポーツが変化してきていることを感じました。もともとは雪の上で遊ぶことを目的に発展してきたスノーボード。その中の流れでトリックを重視するフリースタイル、スピードを重視するアルペン、大きくわけて二つの流れができてきました。同じ木の幹から枝分かれしてきたこの二つの枝ですが、オリンピックを境に枝分かれではなく、分離してしまったのではないかと思います。

アルペンの人気が下降してきていると言われはじめて久しいのですが、これはアルペンの競技のビデオや雑誌のアルペン記事を観ていると、スキーの道具からスノーボードの道具に代わっただけというイメージを受けるからではないでしょうか? 実際は全く違うスポーツなのですが、メディアでの扱い方、競技の方法など、スキーと同じ傾向にあると思うのです。「アルペン=スピードレース」の図式ができあがってしまっていて、「自由に楽しく」というスノーボード本来の魅力をアピールしていないからだと思います。フリースタイルのような独創性はあまりなく、スキーでやっていることをスノーボードでもやっている。それだけのスポーツに見えてしまうのです。これが僕の感じるスノーボードという一本の木からの枝分かれしているのではなく、分離してしまったと言うことなのです。

オリンピック前は、雑誌でもフリーランの楽しさを出したアルペンの記事が多かった気がします。オリンピックを境にそれらの記事は「いかに早く、上手く滑るか?」に変わってしまいました。本当はカービングの最中のG感覚だとか、エッジの切り返しの時の操作感覚だとか、すばらしい魅力を秘めているのに、メディアやプロの人達がそれを表現しようとしていない。雑誌によっては「そんなことはない!」と反論される場合もあると思うのですが、多くの雑誌はその傾向にあると言うこと否定できないと思います。

普通のこれからスノーボードを始めようと言う人のスノーボードに関するイメージは「ゲレンデを楽しく滑ること」であって、ポールをくぐったり、ビッグエアーをしたりでは無いと思います。多くの人はゲレンデで楽しく1日遊ぶことを目的にスノーボードを始めるのだと思います。この「楽しむ事」にはアルペンもフリースタイルも関係ないのです。ちょっと飛んでみたいとか、スピードを感じたいと言うのならばアルペンでも飛べるし、フリースタイルでもスピードを感じることはできるのです。アルペンの不人気の原因は、スピードレースのイメージの影響で、「特別な人がやっているスノーボード」という認識ができあがってしまったことにあると思います。話は前後しますがメディアを始め、スノーボード業界全体がオリンピックを境にアルペンに関しては「楽しさ」ではなく、いかに「速く滑るか」を追求し始めてしまい、これから始めようとしている人を全く無視しているように感じます。初心者向けの本にはフリースタイルだけが取り上げられ、「アルペンは上級者のレース」と言った扱いが多々観られます。この流れを変えていかなければならないのでは無いでしょうか?

スノーボードと言うスポーツをさらに広めるため、また業界の活性化のためにも、この分離してしまった二つの枝をもう一度一つの幹に戻すことが必要なのではないでしょうか?