【コラム】スノーボード・ムービーの現代的な予告編の考え方

文:飯田房貴

この時期になって、またまた頻繁的にスノーボード・ムービーの予告編が増えて来ています。
でも、ここ2、3年間の中ではおとなしいような印象も受けます。

かつてスノーボード・ムービーの王道を歩んでいたマックダウ、スタンダード・フィルムをはじめ、多くのフィルム・クルーが撤退したし、また作品数も減って来ているのだと思います。

撤退クルー組の大きな理由は、スノーボードのビデオ作品が、かつてのVHS & DVD売上全盛時代のように収益が生まれ難いから。
自分のウィスラーの知り合いのフィルマーも、結婚を機にフィルマー(撮影者)&エディター(編集者)の仕事を辞めました。世界的に販売していたフィルム・クルーだったから、ある程度の収益はあったのだろうけど、将来を考えた場合、好きな気持ちだけではやってられない、ということだったのだと思います。

ともかく、こんな厳しいスノーボード・ムービーの世界なんですが、今日は僕なりに現代的な予告編の考え方というのを提案したいと思います。
まず現代のスノーボード業界を考えた場合、二層に向けたビジネスから外せません。特に日本は!
このことは僕がカナダに20年以上住んだ後、1年間日本で過ごして来て感じたことです。

この業界は、独りよがりなところがあります。

一般スノーボーダーが置いてけぼりになり、さっさと先へ歩いているしまっている感じなんですね。
自分自身もそうでないと思っていたけど、そういうところがありました。

例えば、僕は長らくスノーボード・ビデオの予告編を英語のまま『ティーザー』や『トレーラー』という言葉で表現して来たのですが、実際、そういう名称だとわからない人が多いのです。これも1つの独りよがり例。知っているハズという錯覚が、一般スノーボーダーを置いていってしまう。この独りよがりセンスが記事にも反映されてしまいます。

スノーボードが大好きな方で、よく雑誌を買ったり、スノーボードのウェブサイトを見る人はそんな言葉ぐらい知っているだろう、と考えるかもしれませんが、実際そうでない部分が多いのです。
僕は20人ほどのスノーボード愛好家に聞いてみました。将来ライダーになりたいという方や、スノーボード業界に働きたいという一見コアに見える方たちです。でも、『ティーザー』という言葉を知らない方が7割以上だったし、普段、スノーボード雑誌を買わない方となると9割もいて愕然となりました。僕のような雑誌畑から出て来たスノーボード業界人には考えられないことでした。

スノーボード業界というのは、いわゆる底辺層が大きなビジネス市場を持っています。その上にコア層と呼ばれる、これまで僕たちが視線を送り続けて来た層があるのだけど、このアンケート調査の結果は、僕たちが思っていた以上にコア層は狭い世界になっているということです。

昨今、「どうも今まで同じようにビジネスをしていたら調子が悪くなった。売上が落ちた。」という声を聞かれるし、突然、津波が押し寄せて来たように残念ながら無くなってしまうところもあるけど、大きな要因の1つはこの下の層をうまく受け止められなかったからだと思います。
日本のトップ・ライダーたちの中には、日本のスノーボード・メディアがもっとカッコ良く伝えないから僕たちの活動が実を結ばない、という考え方の人もいます。メディアがダサいので、横乗り文化も広がっていかない。北米のようにもっとコア層にシフトできるビジネスをしたいということです。それもある種正解なんですが、だけどそれだけではダメなんです。実際、日本以上に横乗り文化が発達しているアメリカでも苦戦しているのだから。

一方で日本のスノーボード・メディアはそんなことは百も承知ながら、一般層のスノーボードに目を向けてコンテンツを作っていかないとやっていけないという部分があります。コア層と一般層のバランスの中、試行錯誤していながら日々戦っているのです。そして、僕たちにスノーボードのカルチャーを発信し続けています。確かに底辺層を狙った記事も多いけど、コア層に喜んでもらえる内容もあるし、どこの層とか関係なく、おもしろいコンテンツも作ってくれています。
僕は海外商品を日本へ入れるディスリビューターという仕事もしていますが、当初思っていた以上に、コア層よりもその下の層に受け入れてもらわなければビジネスは発展していきませんでした。

「フサキが日本に入れているブランド、調子良さそうだね。」と言われることもあるけど、本当に調子が良い時期は、そんな話が出ている後のことなんです。つまり、より下の層を受け入れてくれた時期です。

最初は楽しいけど、ともかく走るためのガソリン代ばかりなくなるという感じです。人はそれをイケてるとか、調子良さそうとか言ってくれますが、僕の貯金通帳は軽いまま(笑)。まっ、自分以上に代理店のムラッチョ社長が、大きな重りを背負ってくれているので、こっちは気楽な身でもありますが。

 
これから、僕は仮説を述べますが、ここまで紹介して来た上下の層の他に中間層を加えて、そこを意識することが大切だと思います。

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スマート層(コア層):スノーボードのことに精通している。プロ・ライダーの名前も流行のブランド名も、新しいトリックのムーブメントやファッションにも精通している。しかし、その人数は業界が感じている以上に少ない。本当に思っている以上に狭いですよ。

底辺層:スノーボード愛好家。しかし、プロ・ライダーの名前にも興味もないし、雑誌を買おうとも思わない。ファッションには興味はあるが、どこのブランドが今、イケているという情報は知らない。無論ジブ・トリックでスピン・インとスピン・アウトがどちらが難しいかなども知らないし、ストリート・ジビングなんてまったくの別世界でほぼ興味を持たない。ストリートよりは、まだバックカントリーの世界の方がカッコいいと思っているし、憧れている。これだけ動画などのメディアが、ジブにシフトしたにも関わらず。

以上の底辺層は、打っても打ってもなかなか響かない。ようは、いくら良いプロモーションPVを作ろうが、AKB48の大島優子が着るKISSMARKのCMプロモーションには到底、勝てないということです。

そして、ここが大事なのですが、このスマート層と底辺層の間にスマート予備軍というのがあると思うのです。

 
スマート予備軍:プロ・スノーボーダーの名前は何人か知っている。DVDは買わないけど、自分なりの好きなスノーボードのムービー作品というのは示すことができる。雑誌のカタログも大いに興味を示すが、今、世界でどんなブランドが熱いか、というところまではわかっていない。しかし、スノーボード界のカッコいい新しい動きや、ファッションなどに興味を持ち、今、業界で何が起こっているのかほのかに感じることができる。

 
以上のようなスマート予備軍こそ、スノーボード業界が目を向けないといけない層だと僕は考えています。ここにプロモーションという限られた資源をぶつけることによって、成功の道が切り開けると思うのです。
スマート予備軍は、毎日、スノーボードの雑誌やウェブサイトなどチェックしてくれるわけではない。世間がカタログ号で騒ぎ出したあたりから、やっとのことで目を向き始めてくれるという感じです。そんな人たちに向かって、一度だけのムービー予告編というPR爆弾を投下したところで、当たる確率は限られています。だから、2度以上の爆弾を投下する必要があるのです。

すでに考えているスマートなビデオ・プロダクションズはそういうことを頭に入れてやっています。
予告編を投入する時期や回数なども考えているのです。
例えば、バートンの場合は、最もPR爆弾を落とさないといけない秋の時期、東京空襲ばりにこれでもか、というくらいガンガン落とします。僕はいつもバートンのメディアリリースを見るたびに、そのクオリティ高いリリース文(注:ほぼコピペだけでOKな校正なしのパーフェクト文章)、優良なコンテンツ、さらにはやらないといけない時期の「PR量!!」に関心します。

あと、日本ではCandyもよく考えているプロダクションズの1つだと思います。
「ガールズ」という日本のスノーボード市場で1つの大きなキーワード。そこで躍進しています。
プロデューサーのホッシー自身が普段「ティーザー」という言葉を使うようなことはあっても、ユーチューブ上に出たメディアで決してそのような言葉を使うようなことはしません。しっかりと「予告編」という言葉を入れています。そして、さらにわざわざ「スノーボード」という言葉も入れています。
Candyのユーチューブのタイトルは、以下のようになっているのです。

ガールズスノーボードDVD「WHY NOT? 」 予告動画 ”CANDY”2014年8月30日発売!

改めて言うけど、「ガールズ」「スノーボード」「予告動画」という言葉をわざわざ入れているのは、僕が知る限りほとんどなく、Candyだけかも。さらに発売日までタイトルに!
これだけ使えば、ヤフーやグーグルの検索などでしっかりと引っ掛かり、底辺層、さらにはその上の業界にとっては大事なおいしいスマート予備軍にもアプローチしやすくなるでしょう。しかも、爆弾は1度だけでなく、2度もあると言います。
僕は、業界で繰り返し発信し続けていますが、今の情報時代、1度のリリースでは人の心はなかなか動いてくれません。みんな忙しいし、情報シャワー受け過ぎているのだから。2度、3度と手を変え品を変え、何度も何度もアプローチしていかないと。だから、僕は親交があるメーカーさんなどには、遠慮せずにリリース出してください。スノーボード雑誌の発売に関するリリースもどんどん送ってくださいね。ウチは織田信長の楽市楽座のようなものだから。情報の量が大切。そこにはライバルのメディアとか、ライバルのブランドとか関係なしの世界。無料です。フリーです。ウエルカムですよ!と伝えているのですが・・・。なぜかみなさん忙しいようで、1度ぽっきりでなかなか続きません。もったいないことだと思います。
長くなりました。ここまで、読んでくれている方は、相当、真剣に考えていただいている方か、もしくは批判的な考え方もありつつも、ある種、賛同していただいた方かな(!?)。ともかく、長くなったので、まとめます。

 
スノーボード・ムービーの現代的な予告編の考え方とは?

1)「ティーザー」「トレーラー」などの言葉を使わず予告編という言葉を使う。
積極的に検索で引っかかるキーワード「スノーボード」なども使うようにしていく。
※スノーボードを知らない一般の人にもわかりやすい言葉を使う心遣いが大切。その丁寧な気持ちは、紹介文章にも現れるでしょう。結果、より多くの人に興味をもってもらえるよ!

2)一度だけの予告編ではダメ。必ず2度以上。できればCapitaやThinkThankのように何度でも何度でも行こうー!

3)時期を考える
4月、5月はコア層向けになるが人数が少ない。アプローチが狭すぎる結果となる。それでもコア向けという面ではOKなんだけど。それ以上にスノーが盛り上がる秋にもっとエネルギーを注入せよ。かつて戦国の武将が天王山を制し勝ち戦にしたことがあったが、スノーボード業界は秋を制することが大事。そう、勝負はまさにこれから始まるので、今、大事な最終仕込みの時期なんです!

 

●筆者が発信して来たこれまでのコラムは以下ページをご参照ください。
https://dmksnowboard.com/colum/