【コラム】オリンピック感想記

文:飯田房貴

予想反省
特集で予想もしたので、感想記も書かないといけないだろう。本来なら特集でやりたいほどの素材であるが、残念ながら現場で取材していないので、このコラムのコーナーに感想記として残すことにしよう。

まず、女子の方だが、だいたい予想通りに決まったと思う。橋本通代を金メダル候補に上げたが、実際、ケリー・クラークやドリアンの滑りを見てしまうと、金はかなり苦しかったと思う。しかし、橋本の予選2本目の滑りは38ポイントの高得点で、この点数はほとんど銅メダルの選手と変わることがないので、もし720をきっちり決めることができたなら銅までは行っただろう。もっとも橋本を応援し続けた自分にとっては、彼女があの舞台に立ち、世界の人に橋本通代のビッグ・エアーを見ていただいただけでも満足だ。

もう一人の日本女子のメダル候補であった三宅陽子。彼女の精神力にははっきり言って恐れ言ったのである。決勝1本目のあの顔面転びはやった人ならわかると思うが、かなり痛い。脳が弱く比較的すぐに記憶喪失などの症状に陥る人なら、ああいった転びでちょっとした記憶喪失なるほどの衝撃だ。実際、あのフロントサイドからの転びは、こちらでクラブの支部長をやっているサトシが、今期ハーフパイプで記憶喪失になった場面を思い出させるおものだった。そんな状況からの2本目、彼女はまるであの転倒をエネルギーにするかのようにハッスル演技だった。選手たちがそれぞれで選べる音楽であのクイーンの曲を持って来たのも、何か凄く彼女の強さを物語っているようで関心した。結果は8位だったけど、あの状況を考えると、本当によくやったと思う。

筆者が密かに注目していたノルウエーのKJERSTI BUAAS(ケルスティって呼ぶのかな?)は、
やはりあのままヤバイくらい成長していた。エアー・トゥ・フェイキーをあいからわず武器にして、男子並の攻めは、将来、ケリーのライバルになる存在であると思った。今大会は惜しくも4位だったが、今後の楽しみである。もう一人のノルウエーのステーネちゃんはどこに行ったのか? 決勝に残っていなかったのである。メダルは確実だと思ったのだけど、決勝にも残らなかった。カナダのアホ・テレビ放送(?)は、予選をまともに
映さなかったので、彼女の姿を見ることもできなかったし、その他、日本のユリッペ(吉川)、ナンちゃん(森)も見ることができなかった。

ちなみに女子の1位、2位の予想が当たったのは、スノーボーダー誌の岩田氏。3位は残念ながら、当たらなかったがあの3位を予想するのはかなり難しい。結果的に見れば、ケリーとドリアンの実力が特出していたので、ある意味3位を予想する展開になったのだが、素直にちゃんと1位、2位を固く予想する当たりは、流石である。ニッポン誌の飯田編集長は、なぜかケリー・クラークを凄いと認めつつも予想で金にしなかったのは僕と同じような気持ちで、自分の思いが予想に反映してしまったと言えるだろう。実際、シャノンはやはりうまくて、この予想を見た時、僕はシャノンを入れていなかったのでマズイ、と思ったものである。

次にもっとも予想が難しいと言われていた、男子だが見事に金のロスだけは当てました。えっへん! やはり、長野の銅の経験が、彼には生きていたと思った。しかし、2位以下は全滅。ダニー・キャスの銀は岩田氏がまたしても当ててしまった。ちなみに飯田編集長は金に押していたぐらいなので、なかなかの予想。3位のJJに関しては、誰もが考えていたと思うけど、予想者はなし。しかし、チャックが決勝まで残らなかったのと、ギオームがケガにより出場できなかったのは、残念だった。

ジャッジング
今大会において、この話題に触れないことにはいけないだろう。ジャッジングの問題だ。まず一般視聴者は、国によって点数のバラつきあるので、単純にそれで酷いジャッジングだと思っていたようだが、このサイトの読者ならもうわかっていると思うけど、パイプは
1)標準技
2)回転技
3)高さ
4)全体
5)全体
以上の5つの項目で争われていたということ。その中でもよくわからなかったのは、標準技をジャッジングしたフランス。中井くんが2つの標準技しかやっていなくて、4ポイントというお粗末な成績だったのだけど、あれって、結局、3回やらないと点数が出ないのだろうか? まあ、結果的に見たら、そうなのだろう。例えばの話だけど、1つの標準に3.3ポイントまでついて、単純に3回やってもらって満点を10点にしていたような気がする。なぜ、そう思うかというと、標準技を3回やった選手はすべて高得点だったからだ。特にアメリカはそのへん心得ていて、きちんと3回はやっていた。あと、あのモヒカンくんのヘッキだけど、彼なんかは決勝の2本目で標準技3回やったけど、最後の1回はグラブし損なっている。もし、標準技を平均的にジャッジングしなくちゃいけないなら、最初の1回目が7点以上、2回目が7点以上、最後は間違いなく3点以下なので、平均すると6点には行かないハズ。だけど、彼の点数は7ポイントあったので、その計算方法を推測すると、やはり足し算だ。1回目3点、2回目3点、最後は1点。だから、合計で7ポイント。中井くんは、1回目2点(?)、2回目2点(?)しかやっていないから、合計で4ポイントという強引な(?)計算。
もちろん事実は、そんな単純な話でないハズだけど、そういう風な流れがあったとしか思えない。もし、仮にそうならちゃんとそのへんはアナウンスすべきだろう。また、もし今回のジャッジングを理解していなかったら、日本チームはアホである!
例えば、モーグルのタエちゃん(里谷)だが、聞くところによると、ツイスターを4回やりたかったらしい。だけど、コーチが3回までで十分メダルを取れたので、そこまでやらせなかった、ということだ。仮にやって成功していたら、銅以上のメダルが転がって来たかもしれないし、リスクに負けて取れなかったかもしれないが、その戦略自体には十分、ジャッジングを理解していたことが伺える。
今回のアメリカ・チームのルーティーンを見ると、日頃、回転から入るダニー・キャスまでも標準技2回入れて、間違いなくジャッジングを理解していた。今までのFIS大会で、そのようにジャッジングしていたからわかったのだろうか? いやっ、もしそうなら日本勢だって、そのように真似できたハズだから、先ほど、筆者が言った「アホ発言」は改めななければならない。実際には、アメリカはスパイ活動(?)をして、ジャッジングを理解していたように思う。スパイ活動というと怪しく聞こえるが、ようは事前にジャッジングの質の情報をゲットしていたような気がする。

それともう1つ、我がニッポンがジャッジングした高さ点もわかりにくかったなあ。まあ、それはテレビだからわかにくかった、ということもあるかもしれないけど、見ていて「あの点数はないよなあ」と思うことがしばしばあった。それは筆者の考えすぎ?だろうか。

しかし、よーく考えてみよう。標準技が10点満点。回転技が10点満点っておかしくないだろうか。たぶん、標準技も回転技も高さに関しては、高さ項目があるので考慮はされていないハズ。だから、きっちり決めてきっちり着地するということに重点置かれていると思うが、もしそうなら筆者でも標準技は10点満点取ることが可能である。リップからちょっと出ただけのショボイ技ではあるが、きっちりメソッドやインディを決めればいいので、点数を取るのは簡単だ。だけど、回転で1080とかサトゥ・フリップというのは、やはりトップ選手だけができる領域で、とてもとても真似できない。そう考えると、標準技というのは流れの中でやはりあった方がカッコいいが、回転と同列にするほどのものでないと思う。それこそ、気分としては回転技は15点満点にして標準技は5点満点にしてほしい、という気分なのだ。みなさんは、そう思わないだろうか?

そんなジャッジングを考えていくと本当に複雑で面倒になってくるが、結局のところジャッジング競技というのは「ジャッジングを理解したものが勝てる」という、そう観客の人に思われたら、それは酷い大会だと思う。やはり、誰もが認めるジャッジング・システムを確立するべきだろう。それと、アスリートたちがケガを押してまで必死に練習しているのだから、ジャッジングする人も死ぬ気で一生懸命やってほしい。オリンピックのジャッジングということに誇りを持ち、そのためのジャッジングの練習を必死でやってほしいのだ。アスリートたちはオリンピックを目指して、何度もパイプをハイクしたが、ジャッジングの人はどれくらいジャッジングの練習をしたのだろうか?

アメリカのコンチキショーと学ぶところ
筆者はカナダに住んでいるので、アメリカという国とひじょうに近い位置にいる。テレビ放送もアメリカの放送局がたくさんだ。そんな状況に置かれて思うのは、本当、アメリカ人はアメリカ・バカである。あの放送中に連呼していた「USAコール」だが、あれぞ一般のアメリカ市民だ。戦争の報道についてもそうだけど、アメリカというのは自国の放送で、自国がマイナスとなるようなことは絶対に避ける。これは、最近、例のテロ事件から脚光を浴びている作家の田中宇さんhttp://tanakanews.com/も言っているが、アメリカというのは自国不利になることの放送などはご法度ということだ。そこで、今回も見事にやってくれたなあ、と思うのはアメリカの一般放送のオリンピック番組で、中井くんを映さなかったこと。やはり、あきらかに現場でもあのランは、銅以上でありジャッジングに問題があった、と映ったのだろう。そうでなきゃ5位に入った中井くんの滑りを映さない手はなかったのだから。

そうかと言っても学ぶ点もあった。まずメインのキャスターだか、元F2のライダーのケビン・デラニー。僕も10年以上前にウィスラーで彼からコーチングを受けたことがあるので、よく知っているが、彼はスノーボーダーとして本当に素晴らしい人なのだ。10年以上も前にコーチングということをよく理解していたし、F2に置いては4バイ4のシステム(注:当時バートンの3Dが出た頃)の開発に携わった人。大会でもレースからパイプまで活躍していた。当時からかなりビッグ・マウスの人で、大会でいい滑りしたにも関わらず良い結果が出ないと「ジャッジングはジェフ・ブラッシーなどのビッグ・ネームに負けてしまって公平に見てくれない」という文句を言っていた。まっ、そのへんは余談になるが、彼は本当にスノーボードの歴史も知っているし、今のこともよく知っている。そして、現場のアナウンサーにはカナダ人のタラ・ティゲンがいて、彼女は元コンペティターでFISの大会では、優勝経験もあるのだ。そんなスノーボードのプロたちがしゃべりもうまくて、スノーボードの素晴らしさを上手に伝えていた。これは、ひじょうに羨ましい。だいたい、アメリカというのはガキの頃から人前で発言する教育と受けているので、みんなしゃべりがうまい。実際、僕も大会後のインタビューなどすると、アメリカの選手はスラスラ発言が出てくる。そこへ行くと、日本人はひじょうに応対が下手なのだ。まっ、そのへんも含めて僕は日本人を愛せずにはいられないのだが。ともかくこんな連中に番組を作ってもらって幸せだなあ、と思った。日本もこれからは、勇亀くん(山崎)とかライオとかが、番組でどんどんしゃべってくれたら、おもしろくなるだろうなあ、と思った。この2人は、一般の人に伝えることもよくできるのだから。

まとめ
本当、いろいろ考えさせられるオリンピックであったが、ともかくも楽しかった、素晴らしかった、ありがとう!と言いたい。
ミッチャン(橋本)の高さを世界中の人に見てもらって、あのシグネチャーを出しているシャノンなどに負けないカッコいいエアーをするんだぜ!ということもわかってもらえたし、ヨウチャン(三宅)にしてもあのガッツと高さあるロデオは最高! 健太郎(宮脇)は、予選落ちながらトリプルまで飛んだとうことだし、中井くんのパフォーマンスも最高でしょう。怒って記者会見もすっぽらかしてさっさと帰ってしまったということだけど、間違いなく世界に中井孝治の凄さを見せたので、この悔しさをバネにして次回こそ、日の丸を揚げてほしい。
また、ギオームの代役で出たトレバーも最高だった。ろくにパイプ練習していないのは知っていたし、オリンピック選考を賭けた大会で調子悪かったのも知っているけど、やる時にはやってくれるプロだと思った。ミュートしながら、観客にアピールする姿は、まさに格式高いオリンピックでは異様で、これぞスノーボード、これぞスノーボーダーたちが作るオリピックというものを演出してくれた。また、モヒカンのヘッキ・ソーサも今回の大会で大ブレークで今後が楽しみな19歳だ。ロス・パワーズの最初のエアーも歴史的な高さで、あのルーティーンは今後も語られるだろう。もちろん女子の金を取ったケリーも本当に女性ライダーの地位を上げる素晴らしい演技だった。あれだけ高く飛んだら、本当その後に飛ぶ男は情けない気持ちになってしまうのだろうなあ。
今までダニエルとか、チャックとかでワーワー騒いでいた日本人も、自分の国に素晴らしいライダーたちがいることを知っただろう。結果はいろいろありますが、何より今回の大会自体が最高におもしろかった!本当にあのオリンピックに関わった方に感動をありがとう!と感謝したい。