Camp Of Championsで見た最新ムーブメント

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今、スノーボードの最先端のムーブメントには、どんなものがあるのだろう?
その1つの物差しとも言える動きが、この夏のブラッコム・グレーシアで行われたCamp Of Championsにあったと思う。
とかく、我々はすでに有名なライダーがカッコいいと思ってしまうものだし、事実、有名なライダーはカッコいいものだ。しかし、その一方で実際に現場の最前線にいないと、新しいライダーは誰なのか? 若手で凄いのは誰なのか?ということがわかり難いものである。若手のライダーは、ある部分ではすでに有名ライダー以上に凄い奴だっているのに。
そこで今回の特集では、Camp Of Championsで見たイキの良い若手ライダーを5人紹介すると共に、最新のムーブメントとファッションを紹介していきたい。
ここで紹介することがすべて最先端という考えは毛頭ないが、最先端のムーブメントの一部を紹介できるだろう。

監修:JIMMY
この特集原稿は、ウィスラー在住ライダーJIMMYのアドバイスの元、作成されました。以下、JIMMYのブログ。
http://hjmtkmr.blog84.fc2.com/

 

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トースタイン・ホグモ
出身:ノルウェー
年齢:20歳

トースタイン・ホグモは、今年の夏にブレイクした存在だが、すでに当サイトやPEAK#03をはじめ、専門誌でも紹介されて、まだ見ぬ強豪というイメージから薄れている感がある。すでに名の知れた実力ライダーと言えよう。しかし、まずはこの夏に見たトースタインの魅力について改めて検証したい。

 ブラッコム氷河のほぼ頂上までハイクして  もの凄いアプローチ距離で突っ込む  そこからまさにロケット発射のようにドカーンと華麗にぶっ飛ぶホグモ。

トースタインの何が凄いのか。それはどんなトリックをやっても安定感があること。僕たちはスノーボード雑誌やビデオで、ライダーのカッコいいシーンを見ているが、その裏でどれだけそのトリックをメイクするために転倒したか、ということはわからないものである。

実力あるライダーなら、一発メイクをする。そして一発メイクする技とは、ライダーの意識の中では8割以内の力でできるものだろう。よく若手はやったことのない技を120%の力を発揮してメイクしようとするが、それでできた技はラッキーメイクと言えないでもない。しかし、トースタインは確実にフロント1080でもバックサイド900でもほぼミスなしに決めるのだ。

ある日、トースタインが30メートル近くあるステップアップのジャンプ台で失敗したことがあった。それを見ていたライダーからは「このキャンプ期間中にトースタインが失敗するのを初めて見たよ」と言った。
そう、それくらいトースタインは、ミスター・パーフェクトだったのだ。

僕は、トースタインに対して「シモン以来の衝撃だった」と最近よく語る。というのもシモンも最初の撮影で、ほとんど失敗がなくて驚かされたからだ。さらに二人の共通点として、ハイクが早い。撮影となったら休憩も入れずにガンガンにこなす。

ところで、トースタインは本当にスノーボードが大好きでどんな天気でも朝早くから、山に上がっていた。
しかし、3日間だけ、山に現れない日があった。マウントフッドまで大会に行って来たのだ。そしてトースタインはフッドでもミスターペーフェクトぶりを見せて、世界の強豪の目の前で、クォーターパイプとスロープスタイルで見事に優勝した。フッドで見ていた人から見れば、突然やって来た若手が凄い結果を出した!と驚いたことだろう。しかし、COCにいるライダーたちはトースタインの実力者ぶりを知っていたから、驚くことではなかった。もちろん、リスペクトできる大きな結果を残したわけだけど。

フッドの大会が終わった日、トースタインはウィスラーに戻って来た。帰って来たのは真夜中だったが、翌朝も早くブラッコムのグレーシアに上がった。まさにスノーボードが大好きでしょうがないようだ。

僕も今までいろいろ撮影したが、彼らほどレベルが高いところで攻めて、ガンガンに撮影したところを見たことがないのだ。だから、今、自分の中では本当にトースタインは熱いライダーである。

トースタインの特徴、ヤバイところ
スピンのコントロール。着地の安定感。トップ・ライダーもビビるような20メートル以上クラスのジャンプでフロントサイド1080。バックサイド900。スイッチ・バックサイド7からキャブ7(連チャン)で決めれる。あたかもインドア・ゲレンデのポコジャンのように。ジャンプでも擦りでも、何でもやる。
だけど、ジブとしての個性はまだ弱い感じがする。今後の課題は、ジブ中にどれだけしっかりと踏めるか(プレスか)。

ジョー・セクストン
出身:アメリカ
年齢:20歳

ジョー・セクストンの魅力は、難易度の高いジブ技。スタイル抜きにして、難易度という観点だけで見たら、ジブ貴公子と言われるシモン以上ではないか、と思う。

このボックスでのジャクソンでは、フロント180まで決めてみせたジョー。

僕は彼のことをジョーという名前にちなんで「明日のジョー」と呼んでいる。
「明日のジョー」知っているよね? 昔のボクシング漫画だ。

明日のジョーとの共通点は、天才的で野性味のある動き。そして、頭の回転が早く、皮肉屋さんでもあること。ちょっと斜めを向いているところもある。

例えば、昨年だけど最初に撮影した時、ジョーは何かしらの理由で調子が悪かった。普通、初対面の撮影者にこういうことをストレートに伝えることはないけど、あきらかにジョーは不機嫌そうに、「オレ全然ダメだから、他の奴を撮影してよ」と言った。

だけど、僕たちは彼の実力に徐々に惚れたし、撮影を続けた。またジョーも気持ち良さそうに、撮影に応じていった。気付いてみれば、もっとも時間を使って撮影したライダーの一人になった。

ここだけの話だけど、シモンはバックサイド・スピンが苦手だ。だから、バックサイド・スピンでレールに乗ることを苦にする。しかし、ジョーは関係ない。バックサイドだってお手のもの。バイタミンジブ2の撮影で何度も失敗するシモンに、「じゃあ、このトリックはオレがやるよ」と言ったほどなのだ。

昨年ジョーはうまい新人という印象だった。しかし、今年は北米の認知度がぐっと上がって、すでにジョーの実力を買う人が増えていた。僕はそんな姿を見て、遅まきながら「ああ、彼はシモンにない魅力があり、これからは彼の実力を素直に認めてリリースしてあげなくては」と思った。

ジョーの特徴、ヤバイところ
本気を出さない、隠しているように見える。遊びと撮影をちゃんと分けているようだ。ダウンレールのトリックに関しては、バックサイド360イン、5-0(テールプレス)から180アウト、バックサイド540インから360アウト、フロントサイド180インからスイッチバックサイド360アウト。またボックスではマイケルジャクソンから180アウトも。飛びもうまくフロントサイド1080を遊びでやる。

ジェド・アンダーソン
出身:カナダ
年齢:17歳

あどけなさが残る高校生だ。見た目はジャクソン5時代のマイケル・ジャクソンのよう。

強烈に5-0を決める高校生ライダーのジェド。

みんなあまり知らないかもしれないけど、NOMISのライダーの中でも最もオールランドにこなせるライダーではないだろうか。実際、スロープスタイルのような大会ではハンパなく強い。それにハーフパイプだってうまいのだ。

パイプでは、フロントサイドで900、1080もメイクる。さらにバック・トゥ・バック720もできるパイプ・テクニシャンで、ジブがハンパなくうまいのだ。

普通パイプがうまいとジブがやや不得意だったり、その逆の多い中で、これほどオールラウンドにうまいライダーは今時珍しい。

まだ17歳だから、これからどう化けるのか楽しみだ。本人は大学に行く気はこれっぽっちもないようで、高校を卒業したらプロ・ライダーに万進したいとのこと。

ジェドの特徴、ヤバイところ
NOMISで一番オールラウンドにこなせるだろう。パイプもうまいし、またキッカー、ジブとなんでもウエルカムなスタイル。
ダウンレールでは、フロントサイド180インのスイッチ5-0から360アウトとか、バックサイドリップ、ノーリーアウトなどやる。
キッカーでは、フロントサイド・コーク1080をやっていた。

アンドリュー・ジーバス
出身:カナダ
年齢:21歳

ここ最近、ウィスラーでもアンドリュー・ジーバスの実力はうなぎ上り。その1つのきっかけは今年のSandboxで、冒頭パートを飾り、そこで高い実力を見せ付けたから。
一部では、同じカナダの上に見られているレーベルのdefective filmsよりも、Sandboxの方が良かったのでは?という声が上がっているほど。アンドリューはこのクオリティの高さに一役買ったと言えるだろう。

実際にアンドリューの滑りを見ると、どんな難しい技でもカンタンにこなしているように見える。
元々カナダのスタイルというのは、「どれほどの難しい技をやったか」というよりも、どんなシンプルな技でも「簡単そうにやっているか」というところに重きを置く流れがあるが、アンドリューも伝統的なカナディアン・スタイルを継承している若手と言えるだろう。

アンドリューは、長身で痩せている。そしてバランス感覚がハンパなく良さそうだけど、それはヨガをやっているからかもしれない。

センスは抜群なだけに今後のアンドリューはきっとメジャーな存在になるだろう。

 グローブはほとんどしないアンドリュー。

 かなりのジブ好き。

アンドリューの特徴、ヤバイところ
スタイリッシュ。カナディアンスタインで、難しい技も凄くカンタンに見せてしまう。ジブは低速でスムーズに流す。飛びはバックサイド900でジャパンを決める。

チャズ・グルデモンド
出身:アメリカ
年齢:20歳

この夏、ほんのちょっとだけ見たライダーだけど、かなり光っていた。伊達にXゲームでバックサイド1260を決めていない。1260って、この回転数もヤバいけど、バックサイドというところがハンパない。キッカーでのバックサイド・スピンに関しては、世界一と言ってもいいかもしれない。

残念ながらライディングの写真なし。ぶっ殺しエアーPEAK#03でチェックを。

チャズはトースタインと同じDCティームで仲が良いようで、チャズが来た時、トースタインはいっしょに流していた。

大きなキッカーで前足をポーンと伸ばし、いわゆるぶっ殺すスタイルは、素人から玄人まで「スッゲー」と思わすテクニックだった。

ジブはあまり見ていないが、無難にこなしていたのでうまいのは間違いない。

DCと言うと、アーロン・ビットナーの方がずっと認知度も高く上に見られるが、チャズ、そしてトースタインは、1、2年で立場を逆転させちゃうかも?という実力者ぶりだった。

チャズの特徴、ヤバイところ
キッカーはぶっ刺しを決める。トリックは、バックサイド720をやったのだけど、Xゲームではバックサイド1260を決めているし、間違いなく今後台風の目。

ファッション・ムーブメント

北米キッズで流行する70年代ファッション

ここ最近、アメリカの若いスノーボーダーたちの間で、70年代のファッションが流行している。ちょっと前なら太いパンツ、腰履きという感じだったが、新世代キッズたちは細いパンツを愛用する。彼らにとって70年代から80年代のファッション、カルチャーというのは憧れのようだ。髪型まで70年代の長髪やらアフロ風だ。そしてわざとダサい風にして、ファッションを楽しんでいる。
ボックスでトゥ立ちで滑るトリック名は「マイケルジャクソン」と呼ばれる。確かに立った感じが、マイケルの踊り風だ。この技を愛用しているのは、今、北米で注目の若手ジョー・セクストンだ。ジョーはダウンレールでB/S 360イン、B/S 360アウトという超難易度を高い技を決める一方で、マイケルジャクソンのようにオシャレ技も繰り出す。このトリックは、ジョーの70年代ファッションとよくマッチしていて、Camp Of Championsのパークでも目立っていた。
ところで彼らの中で、70年代と80年代の違いはよくわかっていないようで、ジョーとジェドにいつ頃のファッションなの?と聞いてみると「よくわからないけど、70年から80年くらい」と答えていた。

 明るくピースして70年代風を漂わせる。  細いパンツにバンダナ、決めるはジャクソン。  ほとんどマイケル棒や風のジェド。

Tシャツをダラーンと出す

ここ最近、長いTシャツを着ているライダーが増えている。上に着ているジャケットよりも、はみ出すぐらい長い丈のものを着ている。NOMISには通常のXLの他に、丈を長くしているXLTというサイズがあり、ライダーたちは好んでXLTを着て、Tシャツをダラーンと出しているのだ。

なぜ、このようなファッションが流行したか。
それはこの夏COCに来ていたライダーのハジメ曰く
「XLTの流行の背景には アメリカのある州で 腰穿きで下着が見えるのを法律違反とされたそうだ。それでも、パンツを下げたいキッズたちの抵抗がファッションに現れているのかもしれない・・・。」
とのこと。

つまり、このファッション背景には、腰穿きがあるということなので、Tシャツをダラーンと出すのと、腰穿きは1つのセットになっているようだ。

 長身のハジメもダラーンと決めてる  シモンもやはり出していた  階段を攻めるパット・ミルベリーもTシャツが見える!
→   
 華麗にハンドプラントを決めるアンソニー・レフィラー    ボードを離すと、やはりTシャツを出していた。    ダラーン出しの話からやや外れるけど、この腰穿きっぷりはご立派のアーロン・ビットナー。

ウェアーのパンツを縫う

この原稿の監修しているJIMMYからの助言で知ったのだが、COCにいたコーチ(ライダー)は、ずいぶんと多くがウェアーのパンツを縫っていた。
あるライダーに聞いてみると、
「だってこれだと太過ぎてカッコ悪いだろ。だから自分で縫ってシルエットを細めにしているんだよ。見てくれこんなラインがいいんだ」
と、手を使ってラインをジェスチャーしてくれた。なるほど。

丸をつけたところが縫った箇所。

しかし、よくよく考えたら最初から細めのパンツを履けば良いのでは?と考えた。
いや、もしかしたら太いパンツを細く見えるように縫った、そのシルエットを気に入っているのかもしれない。こうして縫うことによって細くしたパンツは、元から細いパンツのシルエットとは違ってカッコ良い雰囲気が漂うようにも見えるからだ。腰周りまではゆったりで(動きやするため!?)、太ももからヒザにかけて細くなっている。

ファッションとはこのようにあるライダーが始めて、口コミで新しいシルエットが仲間内に広がり、そして最終的にはそれを商品化にすることで、さらに世界へ広まっていくのだろう。来年はきっと写真にあるようなシルエットのパンツがあるがどこからか誕生するのでは!?

この夏のCamp Of Championsの映像は、Peak#03にて
全190トリックス以上、さらには豊富なハウツーもあり、価格は2500円。
下記のページからご購入できます。
http://www.dmksnowboard.com/dvd/

SNOWSTYLE誌最新号でトップ・シークエンスが見れる!
今、全国書店で発売されているSNOWSTYLE誌最新号では、COCで見たトップ・レベルのシークエンスも紹介されています。ぜひ、こちらの方もご覧ください。

 

 

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