【コラム】B級ライダーのジレンマ

文:飯田房貴 fusaki@dmksnowboard.com

スノーボードの商材を扱う代理店業務を行い、またこれまでにメディア活動もしているので、多くのライダーさんとのお付き合いがあります。その中で、メーカー側、ライダー側という双方からの不満や主張など耳にすることがあります。
そこで、僕なりにライダーのランクということを設けさせていただき、そこから見える問題点、改善策などを提案していこう、と思います。

上のピラミッドは、各ライダーのランクレベルになっており、その目安は主にライダーの知名度による販促する力、さらには実力などもある程度、考慮されたものです。あくまでもピラミッドの軸は、『影響力』というものに主眼を置いています
AからCのランクがありますが、あくまでも目安で、中にはAとBの間、BとCの間くらいというケースもあるでしょう。
またAだからライダーとしての能力が高いという単純な話でなく、それぞれの役割もあり、どのカテゴリーのライダーでもリスペクトすべき存在であるということも先にお伝えておきます。
また、ここで紹介している写真は、単にイメージに過ぎなく、そのライダーがその項目のカテゴリーということではありません。

特A級:世間の誰もが知っているような超有名なプロ・スノーボーダーです。それこそ街を歩いていてたら、「あっ、あの人!」って感じで思わず振り返ってしまうほど有名な人。おそらく、日本人プロ・スノーボーダーなら平野歩夢や國母和弘のようなレベル。もしくはそれに近いぐらい有名なライダーです。
このレベルになると、もうスノーボードのギア・メーカーだけでなく一般企業のメーカーさんのスポンサードも付いていたりします。
超トップなりのジレンマはあるでしょうが、ひじょうにわかりやすいカテゴリーでもあるのでここでは問題視しません。

A級:スノーボード市場という世界の中での、超有名プロ・ライダーです。一般の人からしたら知られていないかもしれませんが、例えばたまたま訪れたスノーボード・ショップで出くわしたお客さんに、「わっ、何々さんだ!サインください」と言われてしまうような業界のトップ・プロ。
他の例で言えば、契約スポンサーが変わったとたんに「マジか!まさかの〇〇から××の移籍かよ!」なんて叫ばれてしまいそうな人たちです。
純粋にスポンサードからの報酬や、コンテストの賞金だけで食べていくような人たち。年収にして500万~2000万というレベル。

裏A級:さらに近年は、この裏A級という存在があります。
具体的には、ユーチューブなどSNSでしっかりと稼いでいるライダー。、A級ライダーさんのような実力はなくても、見せれる滑りやためになるハウツーなど配信。一般のスノーボーダー目線で、たくさんの「情報」、あるいは「おもしろさ」というギフトを贈ったお陰で、自身も潤ったというタイプです。
表のA級ライダーに引けを取らないくらいスノーボードというエリアの中では高い知名度があり、後に紹介するB級よりも知られていて影響力があります。

B級:B級はA級ほどの影響力を持つ知名度ではないけど、業界にはかなり、あるいはまあまあ知られています。スタイルの高さもあり、同じスノーボードを志す人から一目置かれるような存在。彼もしくは彼女がライディングするホームゲレンデでも尊敬されていたりします。
当然、スノーボードの技術にも長けているライダー。
極端な例では、A級ライダーよりもうまかったりするかもしれませんが、自分の売り出し方があまりうまくなく、あるいは時代背景に運がなく、B級の影響力で留まっているライダーです。そして、このB級ランクに留まっている数は多いです。

一応は、用具は支給されるけど、残念ながら金銭契約までには至りません。あるいは金銭契約もあるけど、スノーボードだけでは、食べていけないようなレベルです。良くて、毎月5万程度、年間で60万円ほどの契約。あるは年間で10万円をいただているようなレベルです。
スノーボードだけで喰っていけないので、他にも仕事を抱えています。

このB級レベルは、メーカーなどに対する不満があり、ジレンマを抱えていることが多いです。

「なんで、〇〇メーカーはオレの評価が低いんだよ。これじゃあ、喰っていけねえよ。もっと活躍しろ、と言うけどオレがスノーボードに打ち込める環境を用意してくれないじゃないか!」

「年間に1本しか板の支給をしてくれなくて、どうやってやりくりすればいいんだよ。普段のフリーランはもちろんパウダーだって、グラトリだってやるのに、2本目はライダー価格(割引価格)で買えって、どうかしているよ」

など、ライダーから不満が出るのです。

一方のメーカーサイドから見れば、「〇〇くん、要求ばかりしてくれるけど、〇〇くんが使ってくれたことで、どれだけ売り上げアップされたんだか、わからんな…」

「せっかくウェアを支給してあげたのに、いつもアップされる動画は、パーカー姿で全然宣伝にならないよ。そもそもアップ頻度も少なくて、いったいどんな活動しているんだか、さっぱりだ…」

なんて、嘆いていたり。

あと、B級のライダーの中には、一部で裏A級ライダーに嫉妬のような感情を持っていたりすることもあるようです。

「なんだか、あのヘボスケ人気あるな。あいつのスノーボードはカッコ悪いし到底認められない。あんなのに夢中になっているファンがいるって、どうかしているよ!」

このへんの思いにB級ライダーのジレンマがあると思うのですが、解決策は最後に置いておいて、次は最後の階層となるC級も先にご紹介しましょう。というのも、C級の動きを理解すれば、B級ライダーの解決策も見えて来ると思うからです。

C級:というのは、ショップのライダーさんとか、そのへんのうまいライダーさんのことです。
B級ライダーのように、A級ライダーを脅かすような実力もスタイルもないけど、あきらかに一般スノーボーダーよりもうまくて、何か他の仕事をメインに頑張りながら、ライダー活動も楽しんでいるような人です。
普段はショップで働いていたりするので、ユーザー目線で物事を考えたりできるし、その結果、メーカーにも良い提案ができる。
SNS等で情報を配信を小まめにしてくれるので、活動も見えます。新しいギアをメーカーからもらったら、必ずハッシュタグ付きで商品の説明なんかもしたりして。

こうした仕事してくれるC級ライダーさんがいると、メーカーとしても助かります。
例えば、試乗会などがあったら、車の運転も手伝ってくれて、一般ユーザーさんにボードの魅力を伝えてくれたり。
あるは、展示会では搬入搬出まで手伝ってくれて、会場で商品説明してくれたり。
メーカーさんにとってひじょうにありがたいライダー。
言葉は悪いけど、使い勝手が良いライダーですね。

一方、ライダーの立場としても、元々、A級のようなライダーには憧れているけど、自分がそこに行けるとも考えていない。ある意味、自分の立ち位置をしっかりと見極また上で活動しています。だから、ライダー活動する一方で、他の仕事をしっかりと行っていたりします。中にはパーク整備したり、イントラやコーチングをしている仕事をしているかもしれません。あるいは、冬場は山に篭り、夏は農業をやっているかもしれません。

もちろんC級ライダーにしたって、ジレンマがないこともないけど、B級ライダーほどに憤っておらず、ライフスタイルの中にスノーボードをうまく取り入れて活動しているという感じです。

B級ライダーのジレンマ解消方法!

ということで、長くなりましたがB級ライダーのジレンマ解消方法!
つまり、B級ライダーさんというのは、なまじっか実力もあるし、ある程度、業界で名もあるから、そこに胡坐をかいてしまいがちです。もちろん全員がそう、と言っているわけではないですよ。

かつて、スノーボード界が盛り上がっていた時には、B級ライダーさんが幸せな時代がありました。おそらく1990年代の中ごろから2000年初めぐらいでしょうか。
だけど、今はスノーボードがメチャクチャにうまいだけでは、しっかりと露出することもできません。しかも使用しているギアを見せなければ、販促に役立つこともないのです。かつてのように専門誌は大勢の人に見られるものでなくなってしまったし、かつてのようにスノーボードビデオも売れません。

ただ、ここでB級とカテゴライズしたライダーには、大きなチャンスがあります!
なぜなら、B級ライダーさんは、そもそもA級ライダーさんのような実力を身に付けた人が多いし、C級ライダーさんよりもうまいし、カッコいい!ちょっとした工夫や動きで大化けをする可能性が秘めています。

具体的には、B級ライダーが、裏A級のようなユーチューブ活動をしたり、C級ライダーさんのような小まめなSNS活動をすることで、大きなチャンスが広がります。
実際、海外では超大物と言われるライダーたちも、意外と(?)必死にスポンサーを宣伝していたりしますよね?

そのへんプロなんですよね。例えば、エナジードリンクと契約しているライダーは、そのロゴの露出度で契約金も左右されるので、あきらかに露出していたりする例を見かけます。大会で表彰台に立つ時には、自身の契約スポンサーの告知をしっかりと行っています。

あるいは、超大物と呼ばれるプロ・ライダーでも、最近はユーチューブを始めていたり、インスタでカッコいい映像を小まめにアップしていたりする例もあります。

仮にB級ライダーが、単にスノーボードのうまさだけでなく、SNS等の他の道も同じように極めたら、現在の裏A級という呼ばれるカテゴリーを凌駕する可能性も持っているということです。
B級ライダーさんが、そのことに気づいて真剣に動けば、大爆発するかもしれません。

典型的な例としては、スイス出身のyungdoli(ヤングドリ)、本名はルーカス・ボウメ。
彼はスイス出身のスロープスタイル選手であったのですが、それほど目立つ存在ではありませんでした。
ジュニア時代には、世界選手権にも参加し、当時はパイプにも参戦していた経歴もあります。
欧州大会にも積極的に参加していた元コンペティターです。
そんなルーカスは、自分の大好きなファッションと好きなライディング・スタイルをインスタ名、yungdoliで配信。独特の80年代風ファッションと音楽、狭めのスタンスから放つ板さばき。そんな姿を小まめにリリースし続けることにより、現在のSNS時代の中で寵児となったのです!
今では、世界中のスノーボーダーに知られるライダーになりました。当然、スポンサーからも高い評価を受けています。

B級ライダーがA級になり切れないのは、その時代の背景であったり流れに乗れていないだけだったりします。運のなさにも影響されている可能性があります。
しかし、ユーチューブやインスタなどを駆使するようになれば、その上昇チャンスが急激に増えて、一気に夢のA級に駆け上がることも可能です。つまり、報酬も増えて、より大好きなスノーボードに打ち込む環境作りもできていくということです。

例えば、あるB級ライダーが、必死にインスタをアップするようになって、常にスポンサーメーカーのハッシュタグをするようになる。すると、当然、メーカーの方でも宣伝になるので、シェアをされる。さらに国内のシェアに留まっていたものが、そもそも海外メーカーの用具を使用していたので、本国アメリカまでシェアされるようになる。気をよくしたライダーは、ますます活動結果をインスタで公開。すると、いつの日かインフルエンサーのようになっている可能性だってあるのです。

自分の立ち位置、ユニーク(唯一無二)な点を改めて一般ユーザーの投票である「いいね!」で知ることもできるかもしれません。そこの部分を切磋琢磨してさらに磨きをかけることだってできるでしょう。

こうしていけば、いつかB級ライダーさんだって、スノーボードでしっかりとお金を稼げたり、影響力を高めることができると思うのです。

「メーカーが、これくらいしかサポートしてくれない」とか「ユーチューバーがうざい」とか、それはあくまでも他人の評価内なので、自分でコントロールできません。だったら、自分のコントロールできることに集中して頑張りませんか?ということです。

B級ライダーさんの弱点は、変にプライドが高く、時代が動いているのに、自分のやることとやらないことを決めてしまっている点です。
そもそもスノーボード業界の動きにしたって、ビジネスの展開だって日々変わっているのに、自分だけが技術を磨くだけではどうしょうもない。もちろんスタイルを身に付け、個性的になることも大事ですが。

だけど、良い製品は良い商品ではない。あくまでも評価してくれる人いて、支持してくれる人がいて、ライダーという職業が成り立っているのです。そう考えれば、自分一人の努力だけではどうしょうもなく、他人に受け入れられるということが大切になってきます。

先月にプロ野球が開幕したけど、昨シーズンのセ・リーグの覇者、ジャイアンツの原監督も勝利インタビューで、「観客の応援が力になる。お客さんあってのプロ野球」というコメントを発していましたね。

そう、スノーボーダーとして食べていきたいということは、プロであるから、そこにお客様がいて、彼らに魅力的なギフト(映像、写真、ためになる情報など)を与えることができて、ライダーとして喰えていくわけです。現在、成功しているユーチューバーさんは、先行者有利という側面もあるかもしれませんが、しっかりとスノーボードに関連したギフトをユーザーに与えて来た結果、高い収入を得ています。

僕は媚びろ、と言っているわけではありません。
それぞれのライダー、個性もあるし、その素晴らしい点をしっかりと映像なり写真で表現し、そうした露出を繰り返し伝えていくこと。あるいは、そういう滑りの深さを丁寧に教えてあげるのも良いかもしれません。自分の素直な気持ちをSNSでしっかりと表現しよう!ということです。
多くの人に応援されての職業なんだし、感謝の気持ちを込めてスノーボードのカッコ良さを伝える努力をすれば、いいのではないでしょうか?

それでも、やってすぐに良い結果が出るわけではないと思います。だけど、ジレンマを感じていたライダーさんは、こうして新たな道を開拓することで、より本来あるべき正しい方向に考えられるような気がします。

かつての大芸術家の岡本太郎さんは、片思いも立派な恋愛だ。むしろ、相思相愛の恋愛よりも美しい。みたいなことを言っていましたが、僕は激しくその意見に共感しますね。まずは、自分の思いをおもいっきりぶつけてみる。単純にライダーとしてうまくなるとか、スタイルを身に付けるだけでなく、新たに違った武器(=露出方法など)を探してみる。で、SNSでもなんでもいいからやってみる。

配信したものが多くの人に見てもらえなかったり、高評価を得ない場合には、片思いのような気持ちになるでしょう。だけど、僕はその挑戦自体が素晴らしいと思うのです。そして、すべてを投げ出したような行動を移した結果、すがすがしい気持ちになります。そうすると、次のやるべきことが見つかるような気がします。

コラムニスト・飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをし、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。最新執筆書『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は35年。