スノーボーダーの安定感を高めるアンギュレーション

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いきなり「アンギュレーション」なんてちょっと難しそうな用語を聞くと、なんか気が萎える読者の方もいるかもしれませんが。
スノーボーダーにとっては大事なテクニックなので、最後まで聞いていただけるとありがたいです。

内に倒れてしまうような姿勢を「内傾(ないとう)」というのですが、逆に安定性を高めるために身体を起こす姿勢のことを外傾(がいこう)姿勢と言います。すなわちそれが、アンギュレーションです。

外傾姿勢=アンギュレーション

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内傾の姿勢は、スノーボーダーではよくありがちな姿勢で、うまく滑れない原因になっているので、くわしく説明していきます。

特につま先側ターンで如実に現れることがあるのですが、頭を下げるように身体を傾けて強引にターンしようとする人がいます。

以上の写真のモデルさんは、頭がターン内側に倒れてしまい、お尻側から撮影したら頭がまったく見えない状態に。こういう滑りは、とても不安定です。

「オレ、こんな滑りをしていないよ。」

という人でも、急斜面でつま先側ターンに入るのが苦手だったり、パウダーでうまく滑れない人は、こんな症状が出ているので気を付けたいものです。

そこで今回のテーマ、アンギュレーション!

以上の写真は、つま先側でアンギュレーションを表現したものです。
左側、身体を起こした方は安定感が高まります。
真ん中、ボードの角度そのままに真っ直ぐに立った状態。これはある意味、身体の軸が板に対してバッチリ決まっている状態とも言えますが、安定と不安定が同居したような状態。これでもOKですが、左の方がより安定感が高まります。
さらに右に行くと、腰が折れて、頭が下がり、完全に上半身が寝てしまったような状態。これでは不安定です。

身体を起こすことで安定性が高まる!

カカト側でも同じことです。
身体を起こすことで、よりカカト側のエッジングを強くすることができるので、安定感が高まります。

(カカト側では、身体を起こすことができずに身体の正面方向に上半身が倒れるような状態になってしまう方が少なくないので、気を付けましょう!)

シチュエーションでアンギュレーションの量を変える

次は、さらに上級編のお話をしていきましょう。
足首をしっかりと曲げて身体を起こした姿勢、すなわちアンギュレーションが強い姿勢は、カービングターンに必要な、エッジング力を高めます
だけど、この状態は先に紹介した写真(真ん中)の板に対して、垂直に立った状態よりも疲れる姿勢でもあります。だから、雪質が良い雪面グリップ力が高い場面では、アンギュレーションを強めることはありません。

極端な例では、パウダーの時には身体をおもいっきり倒しても差し支えありません。パウダーという雪質を身体を倒し込むことができる楽しいシチュエーションでもあります。

よくカッコ良いスノーボードの写真で、身体を倒したような写真があります。日本ではビッテリーターン、カナダではユーロカーブなんて言われていますが、あのような場面でも頭を起こすことでかなりアンギュレーションを保つことができます。

バーンが固いようなところでは、アンギュレーションを強めたり。
バーンが緩いようなところでは、アンギュレーションを弱めたり。
エッジング・グリップを高めたい急斜面では、アンギュレーションを強めたり。
緩斜面のような滑走が簡単なところでは、アンギュレーションを弱めたり。

状況に合わせてアンギュレーションを調整していくといいでしょう。

常に安全を求めてアンギュレーションが高いばかり滑りをしていると、一部マニアックなスノーボーダーから、逆に「カッコ悪い」というレッテルを張られるかもしれません。
ようは状況に合わせて滑れることが、クールなことなのかな、と思います。

アンギュレーションの話 まとめ

ボード面の対角線上から頭、上半身を起こしことで安定感が生まれます。
逆にその対角線上よりも、頭が下がれば不安定になります。
以下、その感覚をまとめたイラストです。

絶えず一本のエッジで滑るスノーボードは、スキーよりも不安定です。
しかし、アンギュレーションを理解し、その姿勢を汲み込むことで、より安定感が増しライディングの自由度が増すでしょう。今まであまりアンギュレーションの姿勢を考えて滑ったことがない方は、ぜひこの機会に考えてみてください。より楽しいスノーボードの世界が広がっていくと思います。

飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴38シーズン。そのほとんどの期間、雑誌、ビデオ、ウェブ等スノーボード・メディアでのハウツーのリリースに捧げている。
90年代を代表するスノーボード専門誌SNOWingでは、「ハウツー天使」というハウツー・コラム執筆。季刊誌という状況で100回以上連載という金字塔を立てる。またSnowBoarder誌初期の頃から様々なハウツー・コーナーを担当し、その中でも一般読者にアドバイスを贈る「ドクタービーバー」は大人気に!その他、自身でディレクションし出演もしたハウツービデオ&ハウツー本は大ヒット。90年代のスノーボード・ブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボード・クラブ、DMK Snowboard Clubの責任者として活動し、レッスンも行っている。
普段は、カナダのウィスラーのインストラクターとして、世界中の多くの人にスノーボードの楽しさを伝え続けている。2016-17シーズン、ウィスラーのインストラクターMVPを獲得!!
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。

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