まるで突然に津波が押し寄せて来て街をさらってしまったように、それは思いもしない出来事だった。
まさか!信じられない。今年も。またか…。
BC州保健局からの「ウィスラーから広がるコロナ対策のために、今夜12時から来月19日まで閉鎖します」という宣言は、そこに住むローカルのスキーヤー、スノーボーダーたちにとって大きな戸惑いだった。

さらに追い打ちをかける事態が、翌日に起きた。
来月19日の再オープンにわずかに期待していたローカルたちだったが、ウィスラーブラッコムは、BC州保健局からの発表を尊重し、自ら「2020-21年シーズン終了宣言」をしたのである。

まさか誰もが昨日までは、突然シーズンが終わるなど考えてもいなかったのに。
まったく心の準備がないまま僕たちは取り残された…。

スノーボードというのは、元々フリースタイルな遊びだ。
アメリカでスノーボードが誕生した時には、スキー場で滑らしてもらえず、裏山で遊んでいた歴史もある。
そんなスノーボーディングの遺伝子は、今にも残っている。プロライダーが表現する映像シーンは、ゲレンデ外でのライディングが多い。

そもそもオリンピックやX GAMESの競技にしたって、単にスノーボードの遊びの一部をフォーマット化にしたに過ぎない。
どこかのお偉いさんたちが、誰でもわかりやすいように順位を付けるために種目を作ったのだ。
そのお陰で、多くの人たちにスノーボードというのは知れ渡るスポーツになったが、本来スノーボードが持っていたカルチャーが、逸脱した姿で表現されてしまったことは、スノーボーダーとして納得できない部分でもある。

実際、オリンピックでの表現方法にダサいと思っているライダーは少なくない。
やたらに高回転している様は、体操競技のようと揶揄する人もいる。
スノーボードは、大衆化と引き換えに失ってしまったものも大きいようだ。

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今見ても、90年代はじめにスノーボードが熱く台頭していた時期の映像は、ひじょうにクリエティブでスタイリッシュだ。現在のトップ選手のように、やたらに回転技ができるわけではないけど、単調なストレートジャンプの中にも、スタイルで溢れ満ちている。当時のライダーたちは、手の位置、ヒザの曲げ方などひじょうに細かい部分までこだわり、カッコ良さを表現していた。もちろん、ファッションにも配った。バギー、パンツにネルシャツなど、これまでのスキーヤーでは、考えれないような新しいニュースクール!大人が眉唾モノに見てくれるのは、大いに結構。打たれるということは、僕たちが生きている証でもある。

現代でも、競技から離れたライダーたちは、インスタという舞台などで、スタイリッシュな姿を見せている。そう、本来スノーボードというのは、そういうものなのだ。
実のところ、現在オリンピックで活躍するような選手たちも、そういうこだわりがある。競技の勝敗に関わらず、リスペクトされるライダーというのはいる。しかし、ジャッジが評価している以上、それに従っているまでの話。彼らの自由な表現は、なかなか伝わり難く、それがスノーボードの「スタイル」という定義をわかり難くしている原因でもあるだろう。

3月31日(水)曇り。マイナス2度。衝撃のアナウンスがあった2日後に、例の場所に向かった。
今朝も肌寒い。そう言えば、昨日は晴れたけど、ビレッジレベルでもマイナス4度という寒さだった。
学校は春休みの時期だが、まだ寒く、当然のことながら山は雪で覆われている。
住宅街の周りでも、豊富な雪がある。

「ウィスラーがもうオープンしてくれないなら、自分たちで遊び場を作って表現していこう!」

僕たちが行ったところは、夏場にフリースビーゴルフがあるエリアだ。
今回のセッション提案者であるRYO(薬師寺 亮)は、前からこのスポットに目を付けていた。
「ここで、フリースタイルな遊びができそう」と考えていたのである。

スキー場がクローズしてしまった今、もう残された道はここしかない。
今回、RYOといっしょにセッションに参加したKAZUKI(中村一樹)も、この計画に賛同していた一人。僕たちは、ウィスラースキー場という遊び場を失ってしまったが、新たなナチュラルパークの開拓を始めたのである。

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ゲレンデと違って、こうしたナチュラルな地形は、ライダーの想像力の高さと技術の高さ、さらには遊び心も試される。そして、せっかく生まれたアイデアも、思わぬ障害物で躊躇する場面も出てしまう難しさもある。
実際、今日、僕たちが最初でジャンプしたランディングゾーンには、短く折れた木が突き出ていて、ライン取りに悩まされた。
さらに、現場は想像以上に固く、着地した後にスピードを抑えるために、転びながら抑える場面も。
最後の切り株でのセッションも、そのスポットだけを見れば「行ける!」と判断できるものだったが、アプローチで思わぬ木が立っていて邪魔となり、技も制約されることになった。

ライダーたちは、開拓者だ。何が待ち受けているのかわからない。想像もしていなかった事故も起こる可能性だってある。今日のセッションでもKAZUKIを撮影していたRYOに、KAZUKIが思ってもいなかった方向に身体が流されて衝突。幸い大事には至らなかったが、一歩間違えれば大怪我につながるところだった。

「何もこんな大変なことをわざわざ…」なんて思う人もいるだろうけど、だからこそ僕たちはこの場所でスノーボードしたいのである。スキー場という恵まれた環境で行うスノーボードも楽しいけど、それ以上に自分たちで開拓し、自分たちの遊びができるほどスノーボーダーとしての歓びはない。
大袈裟に言えば、命を懸けたような結果、写真や映像が残り、僕たちは「生きている」という実感、さらには「スノーボーディングした」という充実をたっぷり味わえるのである。

ウィスラーブラッコム・スキー場は、クローズ。
しかし、この春の僕たちの開拓の旅は始まったばかりだ。

本日のセッション模様は、さらにKazuki Nakamuraチャンネルで近日中にアップ!
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