今季リリースされた国内スノーボードDVD感想記。
dmk編集フサキが、ズバリ伝えます。
まずは、国内編からどうぞ。
Text: Fusaki IIDA
海外作品感想は、以下のページへ
http://www.dmksnowboard.com/special/5902
LIFESTYLE PROJECT / POWDER PASSAGE
いきなり結論から言うけど、ディス・イズ・スノーボーディング!という作品だった。
出ているライダーたちのターン・レベルが高く、パウダー・ライディング・シーンも魅了させてくれる。よくありがちな、わざとパウダーを撒き散らしちゃった的なノリでなく、パウダーを意図的に撒いてはいるけど、そこにはしっかりと芸術点を入れたプロのライディング技を見せてくれる。
編集の仕方としては、各ライダーのパートを設けるというスタイルではなく、時間軸でシーズン始めからライフスタイル・クルーを追っているというスタイル。
その結果、オープニングからのバトンを受け継いだ最初のパートでは、ウィスラーで試運転を始めたクルーを紹介している。このへんのライダーのトークが入るドキュメンタリー風は、彼らが辿って来たハートの名残を感じる。
8分ぐらいからの忠のトゥリー・ランは、僕のお気に入りのパートだ。
ターンだけで魅了できる現在のスタイル・キング。忠の板は、まるで雪を駆け抜ける野生の生き物のよう。もの凄い躍動感がある。
ちょこっと見せるナチュラルを使ったバックスピンのシーンを見ていると、「うわあ、オレもやってみたい。早くシーズンよ来い!」という機運にさせてくれる。
画のつなぎ方もきれいで、あたかもその日の忠のライディングを追っているかのよう。よく最近のビデオにありがちなワンカットを見せたら、色の変わったシーンというのではなく、ターンからターンという画をスムーズな流れで見せてくれるので、感情移入がしやすい。このへんの作り方も好きだ。
この後のウィスラーにバックカントリーもいいんだけど、なんと言ってもYesジャパン・トリップの十勝岳のパウダーが良い。
これヤバ過ぎです!これだけで、ビール一気飲みで3杯だよ(笑)。
ってわけのわからない表現してしまったけど、この超パフパフは凄いね。これまでのパウダーという言葉が陳腐に感じてしまうほど「超」極上味。
この後、滝の横を飛んでいるシーンがあるんだけど、思わず「もっと見せてくれ!」叫んでしまったほど。マジで凄い。
そして、再び忠が来て、これまた凄い一発ジャンプがあった。まあ、このへんも見てのお楽しみだけど、相当ヤバいね。
あと、このパートの音楽好きだなあ。今シーズン、自分でパウダー・ライディングをしながら、この音楽が頭の中で掛かっている予感がした(笑)。
ここ一年ばかり、忠とも飲んでいないので、具体的にどんな撮影活動をして来たか定かでなかったけど、良い作品に仕上げてくれて嬉しい。忠ファンはもちろん、ぜひ全国のパウダー狂にオススメしたい。ディス・イズ・スノーボーディング!だよ。
スノーボード: DVD『POWDER PASSAGE』 トレーラー from Visualize Image on Vimeo.
出演ライダー:
布施忠、小西隆文、平岡暁史、DCP、POMAIN DE MARCHI、JP SOLBERG
作品名: POWDER PASSAGE (パウダー・パッセージ)
価格: 3,990円(本体価格:3,800円)
本体収録時間: 約35分
制作会社: LIFESTYLE
プロデューサー: 越路 太郎
Freerun DVD Magazine / グラトリの星
スノーボードのフリースタイルのトリックであるオーリー、さらにはノーリー。
毎年、改めてチェックしたい、と思いませんか?特にシーズン前のこの時期に。
このグラトリの星は、タイトルや雰囲気は、ポップな印象を感じるけど、実際には教科書的になかなかしっかりとできいる。
簡単でベーシックなオーリーからスタートして、だんだんと難しいトリックのハウツーに進んでいくのだ。
オーリーの後には、オーリーを利用したタップが続き、さらにはノーリーからの勢いでテールプレスなど、とてもわかりやすいプログレッション(上達方法)を紹介してくれている。
ハウツー・ビデオでは、絶対にほしい、超スロー、停止、さらにはアドバイスを紹介するキャプション。そういった基本もしっかりと押さえている。
もう1つ良い特徴としては、日本を代表する人気ライダーたちが、様々なハウツーをやってくれること。
一人のライダーが全部のハウツーをやると、どうしてもそのライダーのスタイルしか見れなくなるが、バラエティに富んだライダーの見本が見れるので、いろいろなスタイルも見れる。
中でも、カベちゃん(壁田 竜一)がヤバい!例えば、オーリーからのバックサイド180のグラトリ。これって、ひじょうにベーシックなトリックだけど、ひじょうに魅力的にやってくれている。まるでスケートボードでやっているようなスタイルで、一切、バインに頼っていない感じがする。
ちょっと残念なのは、ガールズ・ライダーが登場していないこと。
この手のグラトリをやらせたらうまくできるガールズだっているし、一般のガールズも同じガールズを見て刺激になったり参考になったりすることもあるだろう。だから、来年もし同じような企画があるとしたら、その点に期待。
正直、観た後には、他のスノーボードの作品と違って、お腹いっぱいということにはならない。まあ、これはハウツー作品の宿命であるとも言えよう。
だが、間違いなく、シーズンに入れば、この作品をヘビーローテで見る自分が想像できた。きっと僕はこの冬、ウィスラーでイントラをしながら、こそこそレッスンの合間にグラトリを習得していくに違いない(笑)。そういった意味においても、この作品をゲットできて良かったと思う。
そして何よりグラトリは、フリースタイルの基礎。野球で言えば、キャッチボールであり、トス・バッティングのようなものである。基本が大事なのだ。だからこそ改めてスタイルを磨きたいためにしっかりとやっておきたいもの。そして、何よりグラトリ自体が楽しいではないか!
って、ことで全国のスノーボーダー老若男女にオススメです。
スノーボード: DVD『グラトリの星』 トレーラー from Visualize Image on Vimeo.
出演ライダー:
Fantasista movies : 中山悠也、若月知広、高橋烈男
Sclover:石川敦士、関功、山本拓実、壁田竜一
FC:チョコバニラボ―ル新井、吉田”キャシャーン”安亨、小川雄丸
作品名:グラトリの星
本編収録時間:30分
発売予定日:2011年9月30日
価格/税込価格:3,990円 (本体価格:3,800円)
コピーライト:Freerun DVD Magazine
販売元:ビジュアライズイメージ(株)
SCLOVER / and Now
日本を代表するクルー、SCLOVER。長年、活動を続けるところは本当にリスペクト!このスノーボード市場では、日本を代表するフィルム・プロダクションズさえ撤退することが起こる中、このクルーは今年もストロングだ。
冒頭は、関 功。
音楽もノレるし、滑りも良いし、カッコいいパートだ。
ジャンプとジブのバランスがとても良く、つかみはOKだ。
新人二人はストリー・トジビング。登場するのは、江口 涼と滝川 航。
スクローバーの遺伝子を引き継ぎ、スタイルをしっかりと出ているところは関心。
特にコウは、まだ15歳だったということで、将来楽しみな存在だ。
山本 拓実。こちらのパートもジブにジャンプにバランスが良いパートだと思った。
さわやかな音楽とは対照的に、全体的に攻めている印象。
石川敦士、相川 鉄央、田中 暢二と言った3人いっしょの豪華なパート。
特に、アツシのジャンプはカッコ良くて見ていて気持ちいい!
この後、ちょっと長めのブリッジがあり、壁田 竜一のパートへ。
カベちゃんは、エアーにキレがあって、最高に良い。特に上半身と下半身を絞るシフティがカッコいい。
スタイル抜群で海外のビデオ作品に出てもおかしくないレベル。北米のパークで盛んな地に行ったら、きっと噂のライダーになるのでは?と思った。
今作品の中では、一番のお気に入りパート。
そして、トリを飾ったのは、関 智晴だ。
最終パートにふさわしいフッテージ数で、見事に大役をこなしている。
くわしいところは、ぜひ作品を観てほしい。
全体を通して、ストライクな作品!
編集がとてもうまくて、またよく視聴者の意識もとらえていると思った。これは売れる。
何より、カッコいいと思ったのは、作品から伝わるチーム感だ。
若手が出て来て、ベテランも健在で、さらには中堅が頑張って主軸になり、作品から彼らの一体感が伝わって来る。これほどのチーム感を得る作品は、海外作品を含めてもなかなかないだろう。
欲を言わせてもらえば、各ライダーの映像で、このライダーだけのシチュエーションというものがもっとしっかりと出せれるといい、と思った。そうすることで、より各パートの色合いの強さが伝わって来ると思う。
来季、さらなるクオリティに期待。
出演ライダー:
石川敦士、田中暢二、関智晴、関功、山本拓実、壁田竜一、相川欽央、滝川航、江口諒
収録時間(本編):約30分
販売価格:¥4,200- (税込み)
販売元:ビジュアライズイメージ 株式会社
テクニシャン 7 / sclover project
国内、スノーボードDVDの販売数はトップを誇ると言われているSCLOVER(スクローバー)。その人気の理由は、ユーザーとの適度な距離感と、お手本となるカッコ良さではないだろうか。1つのトリックにおいては、指先までスタイリッシュさを追及していように見える。大きめのパーカーを着ているファッションは、国内ユーザーのファッション・リーダー。そういったところまで心配りができるスクローバーに多くのユーザーが共感しているようだ。
出演ライダー同士が、とても仲が良さそうで、そんなところも親しみを感じるところだろう。
今作品の『テクニシャン7』は、そんな大人気のスクローバーのハウツー。1つ1つのトリック解説を出演ライダー、壁田 竜一、石川敦士、関 功を中心に行い、それはさながらお隣のお兄ちゃんが、わかりやすく解説しているような感じだ。
そのコメント陣の中でも、関心してしまうのは、カベちゃんこと壁田竜一のコメント。とてもわかりやすくて粋な言葉を選んでいると思う。
例えば、レールに乗る時のハウツー・コメントとしては、「薄くトゥ・エッジを使って乗る」と言う。普通、ここは軽くトゥ・エッジというところだが、「薄い」という言い方の方が、ほんのわずかなエッジングという印象が残って良い。
ヒールサイド側から乗る時のアドバイスでは、「最初はレールを飛び越しちゃってもいいんで、レールより飛ぶように。」と言う。なんとも初心者ジバーのハートをキャッチする説明だ。視界が悪くて怖いヒールサイド側でどういう感覚でいけばいいのか、適切にアドバイスしてくれるのだ。
これはほんのわずかな一例で、随所にハウツー・コメントが光るカベちゃん。まさにテクニシャン7には、なくてはならない存在だ。
スノーボーダーだからこそできる編集も、ユーザーの立場をしっかりとキャッチしてくれている。
スローや停止、また繰り返しの見せ方、さらには撮影アングルにまで気を配り、僕たちにとてもわかりやすくトリックを説明してくれるのだ。
もちろんこれらの一連の映像と、ハウツー・コメントはうまく連動しているので、編集者は相当、細かいところに気を配って作っていることがわかる。そんなことは、一般視聴者は気にしなくていいことだけど、とかくハウツー(=トリック勉強)という眠くなりそうな分野で、最後まで楽しくスムーズに見れるのも、そういった編集者の心配りがあるからだ。
また選んでいるトリックも、早速やってみたい!という親しみ感あるグラトリから、ちょっと怖いけど、こうすればできそうだ、という段階的にステップアップしていくジャンプ・トリックなど。まさに、日本のスノーボード・ユーザーのほしい気持ちを察したかのようなハウツー内容だ。
全体ハウツー構成は、3つに分かれていて、グラトリ→ワンメイク・ジャンプ→ボックス&レール(ジブ系)となっている。
その内、最後のジブ系に前半2つのテーマを合わせた尺を使っている。
そういった意味では、ジブ系トリックのハウツーに力を入れているという言い方もできそうだ。
だけど、個人的におもしろいと思うのは、SCLOVERならではのスタイル抜群のグラトリのところ。そこが、だいたい7分の時間を使っているのだが、欲を言えばもっと時間を使って見せてほしかったと思う。例えば、ゲレンデの地形を使ったトリックで、おもしろいものなど。バリエーションを変えていろいろあっても良かったかも。グラトリは、多くのユーザーも参考にしたいところだと思うし。
全体を通しての感想は、ハウツーとは思えないおもしろさ!もちろんハウツーなのでためになるのだけど、なおかつ飽きさせない作りになっていて、収録時間50分が短く感じるほど。
きっと今年も多くのスノーボーダーたちが、このテクニシャン7を見ながら、ゲレンデへ向かうことだろう。すべてのスノーボーダーにオススメです!
出演ライダー:
石川 敦士、田中 暢二、関 智晴、関 功、山本 拓実、 壁田 竜一、滝川 航
タイトル名: テクニシャン 7 (テクニシャン・セブン)
プロダクションズ: sclover project
販売価格: 3,675円(税込)
収録時間: 約50分
販売代理店:ビジュアライズイメージ(株)
“S”TRIPPERS & POWDER JUNKIES / stonp
コピー・タイトル、「しがらみの無い自由、今までの形や常識では考えられなかったスケールで制作した作品。」とあるように、まさに常識を覆す豪華なライダーが、stonpというテーマで集まった。
かつてこのライダーとこのライダーがいっしょのクルーになるなんて考えられなかった!という人選には、stonp革命とも言うべきものがある。多くの視聴者たちが感じているように、まさに期待が高まる。
冒頭パートを飾ったのは、stonpの看板ライダーと言ってもいいだろう、國母和宏、上村好太朗 、堀井優作だ。
彼ら3人が3つのエリア、フランス、オレゴン、ウィスラーのサマー・ライディングを体験するというもの。
スタイッシュなライダーたちが、パークで見せるパフォーマンスは気持ちいい。
最近、スノーボード作品というと、ストリートジビングかバックカントリーという流れがもっぱら強くなり過ぎた感があるが、こういうみんなが行けるパークでカッコ良いシーンを見るのも、いいものだ。
そして、この3人のライディング映像がピンだけで出るのではなく、時には2人同時、さらには3人同時というシーンもあり、セッション感が出しているところも、気分を盛り上げてくれる。
カズはスタイリッシュなエアーで、コウタロウがスタイリッシュなジブ、そしてユーサクがスケートチックないぶし銀テクを見せる。
音楽良し、タイトルの出し方もカッコよく、つかみは完全OKだ!
この後は、ニュージーランドのパウダーやパーク。ここには日本のレジェンド、植村能成も登場する。
そして、7人侍の登場だ!
中井孝治を筆頭に、まさにタイトルにあるようにパウダージャンキーたちが集まって来るというシーン。
日本ならではのディープ・パウダーにスノーボーディングの楽しさ、カッコ良さを再確認させてくれる。
さらにパウダーシーンは続く。今度は、Masai、鈴木翔太、星野俊輔らが登場。国内パウダー・スポットを北上していく。
パウダー、パウダー、パウダーと続いた後には、戸田聖輝、阿部佑麻、藤田一成が登場。このあたりのライダーたちが参加し、カズや中井と同じビデオ作品に出るというのも、まさにstonpだからできたというもの。
冒頭、聖輝の2階からのレール50-50で、540アウトには思わずナイス!と叫んだ。
この後のマンモスシーンも良かった。みんなうまいし、最高にカッコ良かった。
全体見た感想は、音楽も良く、またスノーボードの様々な要素が入っていて、おもしろかった。
だけど、あまりにも期待度が高かったため、もうちょっと何かほしい、という気分も残った。
そのもうちょっととは何だったのだろう?パウダーシーンが続き過ぎたのか、そこにもっとジャンプシーンがあれば良かったのか。あるいは巨大キッカーのシーンもあれば良かったのか。
答えはわからないが、stonpという夢のような革命的クルーが生まれたのだから、来年以降、さらにおもしろい作品になること期待する。