暑い。本当に暑かった記録的なウィスラーの初夏。カナダBC州では、記録的な温度に上昇し、各地で40度超え。暑さで数千人も病院を運ばれたと聞く。そんな中、ウィスラーに住むローカル・スノーボーダーたち5人は、真夏のスノーボーディングを敢行。企てたのは、この一党のボス、中山一郎氏。ウィスラーのローカルなら「イチロウさん」でお馴染みの人物で、ジャパニーズ・ボーディングクルーのボス的存在だ。
グレーシャーなどに自然にできる池は、例年ならウィスラーのお馴染みのウォーター・シュレディング(水遊び)!春になっても楽しいセッションができるということで、近年、流行している。こうした池を使ったスノーボーディングは、Pond Skim(ポンド・スキム)と呼ばれている。しかし、残念ながら今年はコロナの影響でそれができなかった。しかも、昨年も同様に3月にクローズしてしまったので、スプリングの楽しみは消えてしまった…。そんな消化不良の終わり方だったので、スノーボードを諦めきれない彼らのモチベーションは真夏に爆発した。
目次
PROLOGUE ハンギングレイク下見
ウィスラーでは、レイトシーズンの5月頃になるとPond Skim(ポンド・スキム)を楽しめることがある。しかし、そのスポットは、必ず同じ場所に現れるわけではないし、その自然でできた池の規模にしてもシーズンによって様々だ。雪が多いシーズンは、池が誕生しないかもしれないし、雪が少ないシーズンでは、思わぬところでできたりもする。しかし、今回行ったところは、完全にバックカントリー。グレーシャー・ウォーター・シュレディングは、実際に足を運ばないとわからない。そこで、一郎さんは5月初旬にハンギングレイクと呼ばれるところに下見に行った。
思えば、この下見が真夏のセッションの序章であった。というのもこの下見があって、2週間後のハイキングレイク・セッションに繋がるし、またこのセッションを成功させてから、真夏のサークレイク・セッションへと導いたのである。一郎さんはこのセッションの経緯と、下見の様子を以下のようにコメントしている。
「そもそも例年通りなら、ウィスラーブラッコム内で3箇所の水溜りが5月中旬ごろから現れます。10年ほど前から融雪の時期の水遊びにハマっているのですが、去年も今年もパンデミックのせいで山が3月中旬にクローズ。しかも2年立て続けて!! 今シーズンは水遊びできると思っていたのに…、ってことで、思いついた湖のリサーチを始めました。まずはオリンピックビレッジからアクセスするハンギングレイクです」
EPISODE 1 ハンギングレイク・セッション
本番となったハンギングレイク・セッションは、一郎さんが下見をしてから、2週間ほど後、5月末に行われた。
まずは、ウィスラーのメインビレッジから車で10分ほど走らせたところにあるオリンピック・ビレッジへ。
そこから、スケートプッシュで1時間も掛けて、ハンギングレイクのハイクする入り口へ向かう。
ちなみに行きは、ほぼ上り坂でスケートするのも難しかったそうだ。帰りはダウンヒル状態で気持ち良かったようだが。
それにしても、そもそもなぜ一行は、スケートで1時間も掛けてアクセスしないといけなかったのだろうか?
理由は、クロカンコースが雪が溶けてクローズしたため、ゲートが閉まってアクセスできなかったからだ。
そこからさらに2時間も登山して、ハンギングレイクに向かうのである。
ここまで聞いてお察しだろうが、誰もが真似できるものではないし、真似すべきものではない。いろいろなリスクが想像される。
万が一、山で怪我した時のこと。何かの事故など。
そういうリスクを当然、背負って出動しているし、そういうことをしっかり認識しているリーダーと仲間がいて成り立っている遊びである。
しかも、おもいっきり2時間以上ハイクした後のセッションする体力も必要だ。
撮影する時には、何度もハイクをする。
その後、下山する。
ウィスラーで本気で遊べる力を一郎さんは持ち、日頃から準備し、また一郎さんにお眼鏡が叶った者だけが選ばれてセッションに参加しているのだ。
やっと、夢のウォーター・シュレディングの地に到着。
氷が溶けだした、というコンディションで水遊びにはバッチリだったそうだ。
一郎さんの下調べのお陰で春のセッションは大成功となった。
EPISODE 2 サークレイク・セッション
素晴らしいハンギング・セッションの後、もはやもうスノーボードの板を履くことなどないとリョウは思っていた。しかし、実際にはまだ一人だけ、密かにセッションを企ている者がいた。一郎さんだ。
ちょうどその時、記録的な猛暑がBC州を襲っていた。そこで、雪が溶ける前に!1週間早く、この夏のセッションは強行されたのだった。
以下、今回のメイン・ディッシュとも言えるサークレイク・セッションの模様をリョウと一郎さんによるレポート!
極上のデザートを求めた最高にイカれた企画
REPORT: Ryo YAKUSHIJI
今回はサークレイクという、ウィスラーから全ての移動で約3時間の場所へ残雪、水ライドを求め行ってきました。
初日は下のカラハンレイクでキャンプしました。
朝9時、スノーボード道具を持ってカラハンレイクをボートで30分横断して、サークルレイクに向かってハイクスポットに向かいました。
この時、和也くんが持って来てくれた電動のスクリューが役立ちました。前回、一郎さんがトライした時は、これがなく手漕ぎだったので、相当に時間が掛かったそうです。
またゴムボートにパドルボート2台を引っ張ってもらいました。
ハイクの道のりはとても急で岩が多く、体力を奪われていきました。川を2回横断しなくてはいけなかったので、靴が濡れてしまい、滑りやすかったです。「気を緩めたら落下するなあ」と思いました。ハイクアップで掛かった時間はトータルで2時間でした。
着いてからは、休憩もなく足がとても疲れている状態でのセッション開始!
アプローチは最初雪が溶け過ぎていてスピードが足りなかったので、後ろのクリフからドロップジャンプして繋げてアプローチを長くしました。
しかし、アプローチまでの雪コンディションが凸凹。しかも、池に対してアプローチが急だったので、水の入り出しが少しシビアでそのへんの合わせも難しかったです。
真夏とはいえ、水は雪解け水なので針を刺されたかのような冷たさだったので、絶対に落ちたくないと思っていました!(笑)
水に乗った感じは、なんともいえない浮遊感で気持ちが良く、サーフィンに比べるとフィンがついてないので、安定がありません。スピードがついてくるとエッジが抜けやすくシビアな操作を要します。
写真撮影はリーダーの一郎さんの長年の経験を生かしたアングルをアドバイスしてもらい、みんなで約2時間ほど滑って撮り合いました。
帰りは濡れた服やブーツが重く、行きよりも荷物が重く感じ、最後の方は足が疲労で痙攣していてかなりしんどい思いをしました。
下に着いてボートでキャンプサイトに戻り着替えてセッション終了。
真夏の暑い気温の中、極上のデザートを求めた最高にイカれた企画でした。
本当、最高でした。
一年越しのサークレイクでの水遊び
REPORT: Ichiro NAKAYAMA
去年7月中旬に、カラハンレイクでキャンプしてる時に「もしかして!!」っと思い、その上のサークレイク目指してハイキング行ってきました。「来年この時期を狙おう!」ってずっと思っていたのです。
想像していた通り、湖はほぼ凍っていて流れ出しのところだけ、氷が溶けていました。
そして迎えた6月16日、気持ちが抑えきれないのと、40度以上の灼熱がBC州を襲ったので、もはや氷も雪も全て溶けているんじゃないかと、気持ちが先行しちゃいましね〜。
遊び的にも、キャンプからの水遊びをしたかったので、仕事終わってから、夜中の12時に、和也のトラックに荷物とケビンとタイセイとオレの4人で乗って、カラハンレイクのキャンプ場目指してノリノリで出発しました。
イメージが形になるかな?? って思っていたら、サークレイクどころか、カラハンレイクのキャンプ場にも辿り着けなかったんです…。
カラハンレイクのキャンプ場、手前2キロぐらいで、オフロードが雪に阻まれてたんですよね。 夜中の1時半から1時間ぐらい4人で除雪をして、無事にクリアーしたと思ったら! カーブ曲がったら今度はシャベルではどうにもならない雪の量でした。 渋々、その日は諦めて夜中3時過ぎに帰宅し4人で残念会でした。
お陰で益々気持ちが抑えられなくて、次のセッションを7月の8日9日に予定しました。気がかりだったのは、サークレイクの氷が溶けすぎていたり、アプローチに必要な距離の雪が残っているのか心配でした。 せっかく行っても水遊びできなかったらショックが半端ないんっすよね。
一応、到着して、雪も氷も無く、立ち尽くしてる姿も想像しておきました。
そんな中、ルームメイトのロハンが、超有名スキーヤーのショーン・ペティットのインスタで、サークレイクの上の斜面を滑っている様子を発見!! よく見たら湖もチラッと写ってる! 周りに雪もあるし、湖は、けっこうまだ凍ってる。 可能性あるかも!!
ショーン・ペティットと残雪へのアプローチは一緒の発想! 自分の狙いは、暑い時期は、水遊びに限りますが…。 後は当日に願うのみでした。
今回の企画も、みんなのおかげで達成できたし、笑顔バッチリでした。
スノーボーディング、素敵なコミュニケーションツールだと思います。
色々なスノーボードスタイルがあるけど、自分達で想像して表現する面白さ、仲間との心の共有感、最高です。
毎冬、めっちゃメンツ変わるけど、遊んでくれた皆さんセッションありがとう。
また来シーズンもファンキーにやっちゃいましょう!!
※中山一郎さんが愛用する自然との共存を目的としたGreen.lab Snownoards。ご興味ある方は、ぜひ以下の最新デジタルカタログをチェックしてみてください。↓↓↓