最近は、巷に多くのスノーボードのハウツーがあって、僕もいろいろ参考にさせてもらったり、楽しみながらチェックしています。だけど、その多くがトリックのやり方であったり、滑った時の姿だったりというケースがですね。
例えば、最近はカービングターン中に両手を付けるようなビテリーターンに憧れている人もいるようです。
何かうまくできないことができるようになったり、できないトリックができたりするのは、良いこと。
でも、スノーボードの本質的な楽しみは、もっと他のところにあるのではないかな?と思います。
そこで、今回は、トランジションを強く意識してもらい、そこで板をうまく走らすことができれば、もっとスノーボードは僕たちに素晴らしい快感を与えてくれますよ!というハウツーコラムをお届けします。
速くてカッコいい滑りの人はトランジションで板を走らしている
もしかしたら、あなたもメチャクチャにうまくて速く滑る人を見たことがあるのかもしれませんね。
そんなスノーボーダー見たら、「ヤバ!」とか思いますよね?
僕もこれまでに雑誌やビデオの仕事柄もあって、様々なプロ・スノーボーダーと接したけど、スノーボードがうまい人ほど、滑るのが速かったです。
今、自分の周りを見渡すとカズキくんやリョウくんがいるのだけど、先日、たまたま山で出くわしていっしょに滑らせてもらった時、「うわっ、メッチャ板が走っている!」と思いました。
うまい人と滑ると、その人の板はまるでフィッシュのように、自由に雪山を駆け抜けていきます。ピチピチした魚が、元気に走り抜けていくようで、その姿は爽快ですね。
みんなはカービングターンって、なんとなく速く滑るターンに思うかもしれないけど、実際にはエッジングをしているので減速しているのです。
だけど、ターンの後半に最もGが掛かるところで、できるだけ板をズラさずにカーブし続けることで、できる限り減速動作を留めている。
その貯めた力を一気に解放して、板を走らすことができるのがトランジションなのです!
なんとなく「トランジション」という横文字が来ると、いったいどんな意味なのかわからなくなってしまいそうだけど、ようはエッジの切り替えの部分のこと。つま先からカカトへ、またはカカトからつま先へ、その切り替えのところを「トランジション」と呼んでいます。
で、ここからが肝心なところなんだけど、うまくてカッコいい滑るをする人は、このトランジションで板を走らせているのです。
かつて、ウィスラーには、布施忠というプロ・スノーボーダーが、日常的に滑っていたけど、忠の後を追わせてもらうと、ともかく速い!トゥリーの中でも、どんどん加速させてしまいます。
ターン前半に板をフォールラインへ向けて走らせて、後半でしっかりと圧をキープ。そこからトランジションへ解放へ持っていくのが、とてもうまい。だから速いしカッコいい!
本人が、そのことをどこまで意識しているか、聞いたことがないので定かでないけど、かつて忠と共にHeart Filmsで滑っていたプロ・ライダーの連中も、トランジションのところで前手をグンと出し、板を走らすことを意識していたと思います。だから、パワフルで速く、付いていくのが大変でした。
忠といっしょに滑る時には、そのコースの途中途中で待つのではなく、「じゃあ、レッドね!」という感じでレッドチェアを呼ばれる長いエリアを滑って、リフトで待ち合わせという感じ。最初こそ、いっしょにトゥリーを滑っていても、途中からはもうどこに滑りに行ったのだかわからず、ともかく、目指したチェアリフトで待ち合わせしていました。
トランジションで切り替え上手になればジャンプも気持ちいい!
ここまでの説明で、なんとなくトランジションが大事なんだ、ということがわかっていただけたかな、と思います。
だけど、滑りの格好ばかり気にしていたら…。
例えば、「トゥサイドで両手を付くようなビテリーターン!」とか「ヒールサイドでカッコよくお尻が付くほど身体を倒したい」ということなど。あまり格好を意識し過ぎると、もっと大切なトランジションが忘れがちになってしまうのでは?
先にも伝えたけど、何かできないことができるようになったとか、そうした見た目のこともスノーボードの大事な要素だと思います。
ビテリーターンなんか決めることができたら、お友達に自慢できそうだし、インスタとかフェイスブックでそんな写真をアップしたら、たくさんの「いいね!」をもらえそう。テンションも上がりますね。
だけど、スノーボードの本質的な楽しみは、他人がどう思うか、ということではなく、自分自身が強く気持ち良い快感を得れるか、というところではないでしょうか?
そうした意味では、トランジションで板がピューンって走る感覚って、最高気分を味わえると思うのです。
さらにトランジションでうまくエッジの切り替えができるようになれば、サイドヒッツもうまく飛べるようになりますよ。
というのも、サイドヒッツというのは、ヒールサイドだったりトゥサイドの壁に自然にできたような発射台を飛ぶわけだけど、トランジションがうまくない人は、空中で板を切り返すことができないのです。
例えばヒールサイドのヒッツ。
ややカカトにエッジを掛けて、発射台に向かっていき、そのままリップに達し、後ろ足で蹴ってジャンプします。空中では、実を言うとエッジを切り替える動作が入り、壁に着地した時には、ボードをフラットにしているのです。
だけど、こうした切り替えがうまくない人は、カカト側の壁でジャンプしたら、そのままカカト側で着地してしまう。そうすると、エッジを掛けた分だけ着地の振動を受けてしまい、スムースに着地できないのです。
だけど、トランジションがうまい人は、リップを抜けてもピョーンと空中で板を走らせることができるので高く飛べる。だから、気持ちいい!
そして、空中でヒールからエッジをフラットにさせていき着地もスムースに決めることができるのです。
意識を「C」から「S」にしよう!
以上のサイドヒッツの話は、ちょっと難しかったかもしれないけど、簡潔にまとめましょう。
これからみなさんのスノーボードに提案したいこと。
それは、スノーボードの滑る姿勢にこだわらずに、トランジションを強く意識すること。
そのためにやってほしいのは、ワンターンに集中する「C」のようなターン弧でなく、2つのターンをつなぐ「S」を意識してほしい、ということです。
そうすることで、「あれ、私、これまでしっかりとトランジションを考えていなかった。なんだか、滑る姿ばかり気にしいた」なんて、気づいたりすると思います。
自分自身もこうした意識、忘れることがあるので、今日は強くトランジションを意識して滑ってみました。
もう、ワンターンの「C」の部分は、ほぼどうでもよく、つなぎ(=トランジション)だけに集中する感じです。
その甲斐あって、久しぶりにヒールサイドのヒッツで気持ちよくピョーンと抜けることができました。
「ああ、あのヒッツ、たしか以前、カズキくんといっしょに滑った時に、元気よく飛んでいたやつだ。
着地はどうなっているかちょっと気になるけど、あれだけ滑走ラインがあるのだから、大丈夫だろ。ともかく、減速せずにおもいきっていこう!」
そんな気持ちで向かっていったら、これまでカービングターン中のトランジションでの意識を強めた練習効果もあって、しっかりと抜けることができたのです。そして空中に飛び出された瞬間、「わっ、気持ちいい!」と思いました。
それは、飛ばされたのではなく、自分の技術で高さを出した結果のジャンプ。
特に〇〇エアーとかのトリックを決めたわけではないけど、単純にフワーっと飛んだ感じが、気持ち良かったのだのです。
スノーボードは日常では味わえないようなスリリングな感覚を味わう遊び。
そのためにも、ぜひこのトランジションを意識を強く持ち、快感の限界を高めていきましょう!
飯田フサキ プロフィール
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴35シーズン。そのほとんどの期間、雑誌、ビデオ等スノーボード・メディアでのハウツーのリリースに捧げている。
90年代を代表するスノーボード専門誌SNOWingでは、「ハウツー天使」というハウツー・コラム執筆。季刊誌という状況で100回以上連載という金字塔を立てる。またSnowBoarder誌初期の頃から様々なハウツー・コーナーを担当し、その中でも一般読者にアドバイスを贈る「ドクタービーバー」は大人気に!その他、自身でディレクションし出演もしたハウツービデオ&ハウツー本は大ヒット。90年代のスノーボード・ブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボード・クラブ、DMK Snowboard Clubの責任者として活動し、レッスンも行っている。
普段は、カナダのウィスラーのインストラクターとして活動し、世界中の多くの人にスノーボードの楽しさを伝え続けている。2016-17シーズン、ウィスラーのインストラクターMVPを獲得!!
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