文:飯田フサキ [email protected]
いよいよ選手はバンクーバー入りし、五輪ムードが高まっている。スノーボードを25年やって来た自分にとって、またこれまで数多くのワールドカップを取材し、日本勢を応援して来た者として、とっても胸が高鳴る瞬間だ。きっと選手も今、ドキドキとワクワクが交錯し、五輪に向かってテンションが上がっていることだろう。
そんな矢先、ちょっと五輪ムードに水を差すような報道があったので、残念に思った。以下のスポーツ報知の『國母の態度にJOC関係者もおかんむり』というもの。
http://hochi.yomiuri.co.jp/sports/winter/news/20100210-OHT1T00282.htm
内容の要点としては、
1)國母がドラッドヘアでサングラスをし、ネクタイが緩く、シャツをズボンから出すと言った服装の乱れのこと
2)報道陣の質問に対して、「わかりません」など答え態度が悪かったという点
その結果、「服装もひどいが態度も悪い」とマスコミ関係者から不満続出してしまったとのことだ。
文末には、「目立つのは試合だけにしてほしいと思う」という報知記者さんの見解で締めている。
國母の服装は、確かに年配な方は煙たがるかもしれない。特に日本代表のユニフォームを着ている時においての服装だから、その点で國母は反省する点があったか、と思う。しかし、個人的には、ドラッドヘアーだろうが、サングラスをかけていようが、構わないと思う。もしそれで憤慨するようだったら、ショーン・ホワイトだって、しょっちゅうサングラスをかけているし、日本人年配者から見たら煙たがれそうな長髪パーマだ。この点を指摘されてしまうのは、日本ならではの報道に見えてしまう。
報道陣の質問に対して、答えられないのは、きっとその記者さんたちが、的を得た質問をしていないからだろう。
以前、サッカーの中田選手が、記者の質問に対してきちんと答えていないということが問題になったし、またイチローも「もっと勉強してから質問してほしい」というような態度を見せることがあるが、國母も同じような気持ちではなかったのだろうか。
なぜ、僕がこうしたことを言えるのかというと、これまでも五輪前に大手の新聞社が俄か勉強で、スノーボードの取材をすることを見かけたからだ。的を得ない質問で困惑した選手もいた。何せ記者さんたちは、スノーボードのことをしっかりと理解していないのだから。
そして僕やその他、スノーボード専門誌の取材陣が質問したことを、あたかも自分が取材したかのようにメモしていた姿を見た時には、閉口してしまった。
まるで自分の家に土足で入られて来たような感覚だったことを覚えている。
スノーボード専門誌などスノーボードを専門に取材して来た者は、これまで選手たちといっしょに撮影やインタビューをして来ている。スノーボードが好きな者同士、いっしょに飯を食べたり飲んだりしながら、関係を築き上げて来たのだ。しかし、スノーボードで取材する新聞記者は、毎回五輪のごとく担当者が変わり、俄かスノーボード記者ばかりだ。スノーボードを一回もやったことのないような記者たちである。言い方を変えれば、素人スノーボード記者だ。そんな人たちでも、大手新聞の言論というもの凄い暴力で、選手を両断したりする。
五輪直前の前、デリカシーのない報道には思わず僕の方が憤慨だ。きっと今、このコラムを読んでくれているスノーボーダーの中にも、そう思っている方が少なくないのではないだろうか。
もちろんすべての新聞記者が、いけないというのではない。
以前、大手の新聞社の方で熱心に勉強していた方もいた。その方は、形的には俄か記者だったかもしれないが、少なくとも短い時間の中で必死に勉強していた。わざわざ僕の方に連絡してくれたので、僕も知っていることをすべて伝えようとした。
そのもの凄い熱心さは、感動するほどだったし、僕の方がプロ報道家としての姿勢を学ぶことも多かった。
2回目の五輪で、報道の怖さとか知った國母が、こんな報道を気にしているとは思わないが、新聞記者さんたちには、もっとスノーボードのことを勉強してから報道してほしいものだ。少なくともわからないのなら、自分の知識のなさでコメントを取れないことを、勝手に折り曲げて選手の態度ということで片付けないでほしい!一般の人たちが、勘違いしてしまうよ。何より選手に対して、失礼だ!誰だってアホな質問されたら、答えたくないでしょ。