How to Spin Vol.3

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今季こそ絶対にスピン・トリックを決めたい!
そこで始まったハウツー・スピン・シリーズ。
今回はいよいよ3回目でラストだ。いよいよ実践編に入ります。

解説はお馴染み、カナダでコーチングしている高石周氏。
論理的な解説は目からウロコ。


Text: Shu TAKAISHI
Photo: Fusaki IIDA

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スピンHowToシリーズ3回目、最終回です。
180から540まで!練習すれば誰でも回れるスピンの練習法を紹介します。

前回までに、パークでスピンを始める前の準備、雪上でできるスピンの実践練習を学びました。そして今回は、いよいよパークでのジャンプ台を使った実践練習に入ります!

早速、全スピン共通の基本となる「アプローチ」から解説していきましょう。

 

アプローチ

スピードチェックのいらない位置からスタートします。
●ジャンプに向かって(滑りながら)感覚でスピード調整していては、毎回スピード調整は「ギャンブル」しているのと同じです。怖いですねえ~。

スピンを掛ける時は、エッジを立てると足場がずれなくなり安定します。
そこで一般的にアプローチでは、抜ける瞬間ギリギリまでエッジを掛けてジャンプに入っていくのが基本的技術となっています。
つまりカービングターンをしながら入っていきます。(プレカーブと言います)
●このターンによる遠心力が、板を踏みやすくしてくれるのですね。自然の力を利用するということです。

バランスのブレを極力少なくしたいので、体の軸もできるだけ倒したくありません。
体軸を倒さないためにはエッジを立てないようにしないといけません。
以下を実践することでエッジがあまり立たない、体軸もあまり倒れない、結果バランスが崩れにくいとなります。
●ターン弧はできるだけ浅く
●ターンの数は最小限(2つ)に抑える

技術が上がってきたらこのプレカーブを極限までフラットに近づけることが理想です。
180はスピンの中でも回転数が一番少ないので、抜けの際にストレートエアに一番近い感覚(直滑降&フラット抜け)で飛ぶことができるでしょう。

<プレカーブ(ターン)のライン取り>
●ヒールサイドで抜ける場合

     

 直滑降から

軽くトゥ・エッジへ

方向が決まったら板をフラットに戻し

   

 あとは抜けるポイントに合わせるように

  軽くヒールエッジを掛けて抜けます

●トゥ・サイドで抜ける場合

     

 直滑降から

軽くヒールエッジへ

方向が決まったら板をフラットに戻し

   

 あとは抜けるポイントに合わせるように

  軽くトゥ・エッジを掛けて抜けます

 

●真っ直ぐアプローチし、ジャンプする前に浅回りのターンを2つ
●ターンはエッジが立ちすぎないようにできるだけ浅く
●ターンのラインはリップを抜ける際に真っ直ぐにランディングに飛んでいくように合わせること

まずは軽くエッジが立った状態でストレートに抜ける(ストレートエアの)練習も効果的です。
これは以下の効果が期待できます。
●抜けを待てるようになり、抜けで板を真っ直ぐ抜くことができるようになります
●浅いエッジ角度で足場を作ることができるようになります(足元が安定していて、かつ体の軸を空中で戻せる程度のエッジ角度)
●抜けの際に少々倒れている体軸を空中で立て直す「空中バランストレーニング」ができます

抜けに合わせてゆっくり小さく回転方向へ先行動作を入れていきます。
抜ける前から下半身が一緒に回ってこないようにしっかり足元を固定しましょう。

以下の写真のようにジャンプの反りに入ったら下半身を少しずつ伸ばしていく感覚で立ち上がります。
または下半身を固定してみましょう。


注意: 逆にジャンプの反りが始まってから下半身が低くなると。。。
●リップの圧力に潰されバランスを崩す(潰される)原因になります。
●抜けのタイミングも取り難くなります。
●下から突き上げる力を吸収する(利用できない)ことになり滞空時間も短くなります。

これで「アプローチ」はしっかり頭に入れてもらたと思います。
さて、今回のメインパート、各スピン(180、360、540)においての「抜け、空中、ランディング」をそれぞれ考えていきましょう。
?180スピン

まずはスピンの基礎(180スピン)から覚えていきましょう。
まずはイメージ用連続写真から。

<BSスピン>

<FSスピン>

抜け

まずは素抜け(蹴らない)で空中での回転軸を確認しておきましょう。

 1.FSスピン  2.BSスピン
 
目線&胸をエアの頂点でランディングに正対させるイメージを持ちましょう。 抜けの瞬間に前の手と肩を回転方向に45度くらい先行させる意識を持ちます。

 

抜けでの目線は以下に置くのが理想です。

●FSの場合 → ストレートエアーと同じ位置
●BSの場合 → 前の手と同じく斜め45度のスピン半径2mあたり

尻はできるだけ板の上からはみ出さないように。
尻がはみ出たまま抜けると回転軸が斜めのまま空中に出ることになり、空中でのコントロールが難しくなります。
抜けに慣れてきたら(バランスが整ってきたら)抜けの瞬間に軽く後ろ足を蹴ってみましょう。
まずは軽く、最終的に70%ほどの強さで蹴れると理想的です。
瞬間に一気に蹴るというアクションはバランスを崩しやすいものです。
ストレートエアから少しずつ慣れていきましょう。

注意!
日本では「蹴る」ことにこだわりを持った方がひじょうに多いです。
確かに絵になりますし、回転力にも影響してくるでしょう。
しかし実際にスノーボードビデオや海外の大会映像を見てください。
強くハッキリ蹴っている場面は結構少ないです。
一番大事なのは全体の流れがどれだけスムーズだったかです。
蹴れた方が良いですが、これにこだわり過ぎても練習は進みませんし、トリックの完成度が高く見えるわけではないのを覚えておいてください。

●リップの角度(反り)に対して下半身が90度に立ち上がる感覚を基本と考えてください。
●下半身が重力に対して真っ直ぐ立ち上がるとノーリーになるので空中での軸が前方へ倒れていきます。

 FSスピン  BSスピン
 

 

空中

FSの目線はストレートエアーと同じ位置に固定して、BSでは自分中心に半径1~2mあたりで回すのが理想です。

板が肩のラインを追い越したらスピンは止まる、または減速するので常に少し肩が先行することが理想です。
肩のラインがランディングするラインより回ってしまったら板も回り過ぎることになります。
逆に肩をランディングのラインまで回せなかった場合は板も回り切ってくれません。

●エアの頂点で、上がってくる下半身を胸で押さえつけるように被せます。
●エアの頂点までに体軸を重力に対して真っ直ぐになるよう戻せること。
●肩のラインは左右平行の高さを保つように。

 FSスピン  BSスピン
   

 

程度にもよりますが、ジャンプ台の反り上がりで上体が後ろへ倒れていても(BS180以外のスピンは)空中で上半身がランディング正面を向くときに腹筋で上体を起こして軸をランディングに合わせる事ができます。
BS180では正面を向く(上体を正面に起こす)チャンスがない為に空中でのバランスコントロールが簡単ではありません。
また目から入る情報において、FS180はずっとランディングを見ていられるので上体をランディングに合わせるバランスは調節し易いですが、BS180はずっと後ろを向いている(情報が少ない)ので難しい、ということでもあります。
BS180は雪面(足元を見すぎてはダメ)を見ながら滞空時間、ランディング角度などを読むので、自信が付くまで多くの練習を要するでしょう。

ランディング

高めの姿勢(筋力を一番発揮できる関節の角度)で両足ランディングの準備。
ランディングの衝撃吸収は低くなりすぎずに自然なヒザの角度で止めれることが理想ですが、衝撃が強い場合はそこからフルに下半身の可動域を使って吸収しましょう。
完全に沈みきると各関節を痛める原因になりますので、ランディング後は即座に地面に反発するように立ち上がり足元を安定させます。

 

? 360スピン

抜けとランディングのスタンスの向きが一緒なので180より簡単に感じることも多いようですよ。
こちらもまずはイメージ用連続写真から。

<FSスピン>

<BSスピン>

 アプローチ

180で解説したものとほぼ一緒です。
360もスキルが上がってくるとスレートエアーに近い感覚(直滑降&フラット)で飛ぶことができます。
これは板をしっかり踏めている、つまり以下ができていることが最低条件です。

●重心が低い
●軸が板に対して真っ直ぐ立っている
●そのバランスをキープできる

上級者でない限りはしっかり(軽くでも)エッジを掛け、足場を作りながらリップに入っていくことをオススメします。

例:
トッププロのスピンはスタートから抜けの瞬間まで直滑降です。

直滑降、つまりフラットにできるほど以下が可能です。

●加速&スピードのキープ
ターンするより直滑降した方が加速するに決まってますね。
またエッジが立つことで抜けの瞬間板がずれスピードが失速することもあります。
●抜けで真っ直ぐ上に跳ねることができる
抜けでエッジが立っている程(大なり小なり)蹴った力は上ではなく横に逃げます。
すなわち高さ(滞空時間)があまり出せず、また跳ね上がる力を十分回転力に伝えることができません。

回転数が上がるほど早い時期に先行動作が入りがちです。
これは抜ける前に以下の原因となります。

●アプローチで板が回転(ズレ)を始める原因になる
●早い時期にズレルことで、減速やスピンの回りすぎの原因になる
股関節(内旋&外旋)が硬い人は肩が回ると同時に腰もそのまま付いてきます。
毎日しっかり柔軟を行い、さらに上半身と下半身が別々に動かせるよう鏡を利用したイメージトレーニングをしておきましょう。

再確認ですが、ジャンプの反りに入ったら下半身を少しずつ伸ばしていくようにで立ち上がる(または下半身を固定する)と、リップ(ジャンプの角)で一気に蹴らなくてもしっかり上に跳ねることができます。
「自然の力」を利用していますね。

抜け

まずは180と同じく素抜け(蹴らない)で回転軸を確認しましょう。
整地された緩斜面での基礎スピン(オーリー180)の運動をそのままジャンプでできることが理想です。

 1.FSスピン  2.BSスピン
目線&胸をランディングに正対させる意識を持ちましょう。(180と同じ)

 目線&前肩を90度くらい先行させます。

 

抜けでの目線は以下に置くのが理想です。
●FSでストレートエアと同じ位置
●BSで半径2mあたり

尻はできるだけ板の上からはみ出さないように。
尻がはみ出ると体軸が倒れ、回転軸が斜めのまま空中に出ることになり空中でのコントロールが難しくなります。
抜けに慣れてきたら抜けの瞬間に少し蹴ってみましょう。
まずは軽く、最終的に70%ほどの強さで蹴れると理想的です。
基本は180と一緒で下半身がリップの角度(反り)に対して90度に立ち上がることを忘れずに。
重力に対して真っ直ぐ立ち上がる(蹴る)と、物理的に抜けの瞬間ノーリーになるので空中での軸が前方へ倒れていきます。
また270(4分の3スピン)でランディングするつもりで抜けると、抜けが雑にならず結果良いスピンになることも多いんですよ。

空中

1.FSスピン

板が90度回った時点で肩はすでに180回しておき、その後からの目線は板と一緒に自然に回します。(連続写真を参照ください)
板が270回るまで腕と肩は先行を続けるイメージを持ちましょう。
肩のラインは左右平行を保つように。

2.BSスピン

目線は自分中心に半径1~2mあたりで回し、できるだけ早くランディングを見つけるよう板が90度回った時点でどんどん先行させましょう。

板が肩のラインを追い越したらスピンは止まる、または減速することを覚えておいてください。
常に少し肩が先行すれば回り続けます。
エアの頂点で頭より「ミゾオチ」が一番高い位置に引き上がるような感覚で、また胸をひざに被せるような意識で上体をコンパクトにします。
板の裏は常に雪面に平行で、横から見ている人に裏が見えないように引き上げます。
180回るまでに腹筋を使って軸を重力に対して真っ直ぐになるよう戻せること。
抜けの反り上がりで(程度にもよりますが)上体が後ろへ倒れていても、空中で上半身がランディング正面を向くときに腹筋で上体を起こして軸をランディングに合わせる事ができます。

例:
FSは板が90度回ったあたりで、BSは板が180回ったあたりで腹筋で上体をランディング方向へ起こします。

ランディング

繰り返しです!
高めの姿勢(筋力を一番発揮できる関節の角度)で両足ランディングの準備。
ランディングの衝撃吸収は低くなりすぎずに自然なヒザの角度で止めれることが理想ですが、衝撃が強い場合はそこからフルに下半身の可動域を使って吸収しましょう。
完全に沈みきると各関節を痛める原因になりますので、ランディング後は即座に地面に反発するように立ち上がり足元を安定させます。
? 540スピン

まず360で以下ができていないと安定した540はできません。
覚えておきましょう。
●下半身がジャンプの反り上がり角度に対して90度に立ち上がる
●空中で上半身がランディング正面を向くときに、腹筋で上体を起こして軸をランディングに合わせる

まずはイメージ用連続写真から。

<FSスピン>

<BSスピン>

アプローチ

注意点は180、360と同じです。
540をスレートエアに近い感覚(直滑降&フラット)で飛ぶことはかなりの高いスキルが必要となるでしょう。
一般的にはプレカーブ(ターン)を「浅く2つ」描いて足場を固めましょう。
抜ける前に少し体を回転方向と逆に捻っておくと抜けでスピンを掛けやすいかもしれません。(ワインドアップと言います)

抜け

注意点は180、360と同じです。
ジャンプの大きさによりますが、抜けは360と同じ感覚が理想です。

1.FSスピン 2.BSスピン
   
抜ける瞬間、目線&胸をランディングに正対させる意識で 抜ける瞬間、目線&前肩を90度くらい先行させる意識を

360でランディングするつもりで抜けると、抜けが雑にならず結果良いスピンになることも多いでしょう。
上に跳ねるほど(また蹴りが強いほど)抜けでの上半身の捻り(回転運動)は少なくて済みます。
下から突き上げる力を回転力に変換するわけですね。

空中

注意点は180、360と同じですが、違いは先行動作する時間的長さにあります。
FSは板が90度回った時点で肩はすでに180回しておきます。
ここからが360と違うところです。
抜けた後すぐ目線&肩は板をひっぱるようにどんどん先行させましょう。
腹筋をグッとロックして板の回転力を上半身に巻きつけます。

FS540-1 FS540-2

BS360は270回ったあたりから上半身の先行動作を止めますが、BS540は180から270あたりでランディングが見えても、肩&腰の先行は止めません。これも腹筋をグッとロックして板の回転力を上半身に巻きつけます。

BS540-1 BS540-2
BS540は最後の90度で下半身を先行させてランディングに合わせましょう。 抜けの反り上がりで上体が後ろへ倒れていても、空中で上半身がランディング正面を向くときに腹筋で上体を起こして軸をランディングに合わせる事ができます。

 

例:
FS、BS共に板が270度回ったあたりから
FS540での上体の起こし BS540での上体の起こし

目線は360と違い、FS&BS共にスピンの早い時期にランディングを探しにいきます。
ランディングが見えた時から、頭が平行感覚を認識して軸をランディングに合わせるように起き上がり、上半身がそれに付いてくるように起き上がります。

ランディング

抜けとランディングでスタンスが逆になるので、その変化に対応できるよう180をしっかりやっておきましょう。
以上で全3回のスピン講義は終わりです。
常に自分の現状を分析&理解して、自分に合ったレベルの練習を心がけましょう。
人によって上達のスピードは違います。
焦らず、ある時間でできることに集中しましょう。
基礎がしっかりしてるほど、上達で遠回りはしません。
「真剣に遊ぶ」あなたは必ず上達します!

講師:高石 周
1970年4月11日生まれ 39歳
新潟県出身

現在カナダ・ウィスラーにてCSBA(カナディアンスポーツビジネスアカデミー)にて、スノーボードコーチとして活動。
また最近は、Peak Performance Projectの監督として世界に羽ばたける日本人ライダーを育成している。

Sponsors: Volkl, A- Seven, Flux, Cross 5

ブログ:http://sportscoaching.blog72.fc2.com/

 

 

 

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