スノーボーダーなら、誰でも上手にジャンプしてスピンしたい!って思いますよね?
そこで、前回からスタートしたハウツー・スピン。
今回は2回目、雪上でできるスピンの基礎練習を紹介していきます。
解説はカナダでスノーボードのコーチングしている高石周氏。
論理的な解説は目からウロコ!
Text: Shu TAKAISHI
Photo: Fusaki IIDA
突然ですが、ジャンプ台がなくては練習できない!なんてボヤいている方、いませんか?そんなことはありません。普通のゲレンデでもできるスピン練習があります。
今回は雪上でできるスピンの基礎練習をお話しましょう!
「アプローチ、抜け、空中、ランディング」に関係する基礎技術の練習から入り、少しずつレベルを上げていきます。
基礎編
1. ターン
センターバランス、踏む感覚などの確認ができるターン。 |
ジャンプをする時は「アプローチ」や「ランディング」などで必要とされる技術です。
しっかりしたセンターバランスを体得し、板をしっかり「踏む」という感覚&バランスを得る大切なテクニックです。
板が雪面に付いている時間は、空中を飛んでいる時間よりはるかに長いですね。
ターンがうまくできなければ、ジャンプもうまくできません。
絶えず真ん中に乗り続ける技術、過重動作、エッジング動作など、しっかりと身につけるにしましょう。
2. 上に跳ねる
雪面から板を離すスキルです。
ジャンプでは「抜け」のパートとなります。
? POP(両足ジャンプ)
下半身の筋力で上に跳ねます。
フラットなところで
まずは両足ジャンプでセンターの確認をしましょう。
正面を向いて、進行方向(左右)を向いて、両方を試してください。
無理のない程度に関節を曲げしゃがみましょう。
足裏全体(つま先のみではなく)で上に跳ねるように。
上半身は首の後ろを上に引っ張り上げるような感覚です。
エアーの頂点で上半身をひざに被せるように抱え込みます。
無理に自分から膝を引き上げることはしません。
程よくひざを伸ばしてランディングに備え、ランディングでは潰れすぎないように程よくショックを吸収しましょう。
ランディング後はすぐ立ち上がりグラウンドに圧力を掛けると足元が安定します。
キッカーを飛ぶイメージトレーニングですね~。
緩斜面で
フラットでやったことを緩斜面で同じようにやってみましょう。
フラットとの違いは斜面が進行方向に傾いていることだけです。
まずは小さくジャンプしてバランスを感じましょう。
左右&前後の体軸の倒れ、状態のねじれなど、バランスが安定してきたらもっと強く上に跳ねてみましょう。
さらに安定してきたら中級程度の斜面でやってみましょう。
? オーリー
筋力だけでなく道具の力も利用して上に跳ねます。
フラットなところで
フラットな斜面で片足ジャンプして、両足着地する感覚です。
板の後ろに重心を移動する感覚ではなく、自分の腰(重心)の下に後ろ足を滑らしてくるようにテールに乗ります。
上半身はその場から動かさず、板だけを進行方向斜め上に押し出す感覚です。
重心の下に後ろ足とテールの間辺りがくるまで前足を押し出す感覚です。
前足は進行方向やや上方に突き出します。
肩は斜面と平行を保つ意識を持ちましょう。
跳ねた後は前足へかるく上半身を被せるように(倒れた軸を重力に対して垂直に戻すため)、下半身はひざが伸びきらず、引き付け過ぎず、あくまで自然に引きつくところまで上げます。
腹筋をロックして腰だけを上に引き上げる感覚でもいいでしょう。
注意:
この時目線が足元に落ちるとランディングで前につんのめることになります。
目線は進行方向3~5mへ置いてみましょう。
ランディングは両足です。
ランディング後はすぐ立ち上がりグラウンドに圧力を掛けると足元が安定します。
ランディングが後ろ足の場合は、上半身が後ろに倒れっぱなしの可能性があります。
ランディングが前足の場合は、テール側への荷重が弱い、または上半身を被せ過ぎ、どちらかが考えられます。
緩斜面で
フラットでやったことを緩斜面で同じようにやってみましょう。
フラットとの違いは斜面が進行方向に傾いていること。
まずは小さくジャンプしてバランスを感じましょう。
左右&前後の体軸の倒れ、状態のねじれなど、バランスが安定してきたらもっと強く上に跳ねてみましょう。
さらに安定してきたら中級程度の斜面でやってみましょう。
3. スピン
やっぱり回れるようになりたいですよねえ。
「抜け、空中、ランディング」すべての要素を含んだ練習です。
フラットなところでのイメトレ
ジャンプをイメージし顔を進行方向へ向けてみましょう。
少しのワインドアップ(回転に勢いを付ける為の逆捻り)と同時に程よくしゃがみます。
目線と肩を回転方向へ回しながら足を伸ばしていきます。
下半身は真っ直ぐ上に、できるだけ高く跳ね、同時に上半身を強く進行方向へひねります。
目線&肩は板より少しスピンを先行させましょう。
ランディング後は肩&腕の先行運動を止めずに少し回し続けましょう。
スピンの逆ひねり癖を防止するための練習法です。
ランディング後はすぐ立ち上がりグラウンドに圧力を掛けると足元が安定します
以上がうまくいかない場合は顔を正面に向けて(自然な立ち方で)やってみてください。
緩斜面でのスライディングスピンでイメトレ
180スピン
まずはシンプルに180で回転運動(バランス)のみに集中します。
ワインドアップ(肩と腕を逆に捻って勢いをつけます)を少し入れて回すと楽です。
軸の左右&前後のバランスを調整しながらセンターを見つけましょう。
必ず上半身(肩、腰)が回転をリードし続けること。
逆ひねりは回転を止めます。
安定してきたら上下動を加えて回すタイミングを覚えましょう。
回し始めと同時に立ち上がり板が回りきるあたりにしゃがみ込みます。
ジャンプをイメージしながら上下動できれば、自然な上下運動になると思います。
立ち上がりが素早いほど雪面抵抗が軽くなり回し易くなるのを感じてください。
レギュラー(グーフィー)&スイッチ、BS&FS、この全4方向に挑戦し苦手がなくなるまで練習しましょう。
360も横回転運動のみから始め、慣れてきたら上下動を加えて練習してみましょう。
360スピン
実際に蹴って回ってみよう!
ここからは整地された斜面でも、蹴るタイミング(ライン)を自分で決めましょう。
例:
雪上に残っている滑った跡
小さなコブなど
? 90スピン
「滑りながらいきなり180は回せません」という方は、まずは90度回してバランスを整えてみましょう。
斜滑降で斜面を45度に入りエッジを掛けながらジャンプし進行方向斜め45度にランディング、これで90スピンです。
エッジを掛けることで足場が安定しますが、体軸はエッジ側に倒れやすくなるので注意しましょう。
この場合ヒールエッジではFSスピン、トーエッジではBSスピンとします。
トーエッジでのFSスピンは斜滑降から90スピンのあと、そのままスライディングさせて180まで持っていきましょう。
その時十分に上に跳ねれなくても、上半身の回転運動は止めないように気をつけてください。
POP(両足ジャンプ)が上手くいったらオーリーで回すことに挑戦してみましょう。
? 180スピン
FSスピン
BSスピン
まずは斜滑降でエッジを掛けた状態で練習し、慣れてきたら斜滑降を直滑降に近づけてエッジ角度がない状態に挑戦してみましょう。
POP(両足ジャンプ)が上手くいったらオーリーで回すことに挑戦してみましょう。
ちなみにオーリースピンを掛ける時のコツは?
後ろ足はフラットエッジ
前足は回す方向に軽くエッジを立てる
トゥのFSスピンだけはこれらが逆になる
以上、ぜひお試しください。
オーリーFSスピン
オーリーBSスピン
基本はフラットと同じなので、上手くいかない場合はフラット、または90度スピンに戻りましょう。
? 360スピン
滞空時間が短いグラウンドで360を回しきるのはとても難しいです。
まずは270(180+90)回ることを目指しましょう。
しっかり上に跳ねないと下半身は回りきりません。
上半身のひねりは180と同じ感覚が理想ですが、回った後に目線と前肩を一気に進行方向へ回すこと。
平地での練習の後は緩斜面に移ります。
まずは斜滑降でエッジを掛けた状態で、慣れてきたら斜滑降を直滑降に近づけてエッジ角度がない状態に挑戦しましょう。
POP(両足ジャンプ)が上手くいったらオーリーで回すことに挑戦してみましょう。
上手くいかない場合は180スピンに戻る、または270まで回ればOKとします。
急いで回そうとするほど横回転ばかりになり、上に跳ねることをしなくなるので要注意!
4. ランディング
一番忘れられやすいスキル、パートです。
上記の練習を通して、両足でどっしりとランディングする感覚、またはイメージをしっかり持ってください。
このトリックの最後のパートをきっちり決めるだけでもトリック全体を上手くまとめたように見えるものです。
このイメージがあるだけで、意識せずとも抜けから空中動作までスムーズにいくことも多々あるのです。
実践編
1. 地形を使った基礎の確認
様々なリップ(ポコジャン、ジャンプ台)やランディングの角度変化(角度の違い)、つまり雪面の角度変化に体軸を合わせて(雪面に対して90度が基本)常に安定したバランスを保てることが重要です。
例えばパークジャンプでは以下のような体軸の変化に対応しないといけません。
1. アプローチ(ダウン)
2. 抜け(アップ)
3. 空中(フラット)
4. ランディング(ダウン)
ダウンヒル |
フラット |
アップヒル |
このバランスに関係するのは?
重力の方向(常に変わりません)
板が進む方向(フォールライン、斜滑降など)
斜面の角度(ダウン、フラット、アップ)
以上の3つの要素に体の軸&運動を合わせて(感じて)滑れるようになると以下のスキルを身に付けることができます。
「自分の力」+「自然の力の利用」
バランスの良いきれいな抜け
空中でのバランスコントロール
確実なランディングバランス
また地形にタイミングを合わせて飛べることもとても重要な練習となります。
前足がジャンプポイントに掛かるくらいでアクションを起こすよう練習してみてください。
パークアイテムに対応するために以下のような環境での練習方法もあります。
自分で作ったポコジャンで、オーリー&POP、スライディングスピン、90&180、360
パークジャンプの脇のナックル(ランディングが始まる角)で、オーリー&POP、スライディングスピン、90&180、360
自然地形を遊んでくる「フリーライディング」には、以下のような上達要素が含まれています。
覚えておくと今後のフリーライディングも変わってくるでしょう。
日々変化する雪質、地形、ポコジャンに対応する判断力
数メートル毎に迫ってくるポコジャンなどに合わせる運動コーディネーション能力
思わぬ状況に対応する反射能力
止まらずに長く滑り続けることで必要とされる一点集中力と広い集中力
2. パークアイテムでの基礎確認
実際のジャンプでアイテムに慣れることが目的ですから、まずは「ストレートエアー」から。
シンプルな運動ですから。。。
抜けのタイミング
空中での軸のコントロール
ランディングまでの滞空時間
以上を覚えることができます。
フリーライディング内ではダウンヒル(下り斜面)やフラット(平ら)が多く、パークジャンプのように上に反り上がっている地形(アップヒル)はあまりないですね。
それが多くの人がなかなかパークジャンプにタイミング合わなかったり「あおらる」また「つんのめる」要因となっています。
フラットやダウンヒルでオーリー(後ろ足荷重の抜け)を練習する意味はここ(パークジャンプの反り上がり)で大きく活きてくるわけです。
オーリーを掛けるくらいの感覚で、きれいにリップに対して90度に蹴れるわけです。
フリーライディング内で似た地形(コース脇の壁など)を見つけて練習するか、小さなジャンプ台(急に反り上がる物でなくスムーズに上がっているもの)からトライするといいでしょう。
ハーフパイプは全ての要素が詰まっているので、ジャンプの練習には最適と言えるでしょう。
前回も書きましたが、ジャンプは以下のように4つのパートに分けて考えると頭を整理しやすいですよ。
例:
「抜け」ばかりを強く意識する人が多いですが、失敗の原因が「アプローチ」にあるとは考えられませんか?
アプローチ
ジャンプに向かって
必要なスピードを知りましょう。
直滑降で行ける(スピードチェック無しの)スタート地点を見つけましょう。
アイテムに向かう姿勢は高くもなく低くもなく、上半身のねじれが少ないことが理想です。
上に向いているジャンプ台からは、下から上に押し上げるようにプレッシャーが掛かってきます。
ジャンプに差し掛かったら、徐々に立ち上がるか下半身は固定します。
そしてこのプレッシャーに反発することで、自然の力を十分利用するのです。
抜け
ここから空中です
パークジャンプの反り上がりに慣れてない、またフラット(平地)やダウンヒル(下り斜面)でPOP(両足ジャンプ)に慣れている人はこの反り上がり(アップヒル)でノーリーになる人が非常に多いです。
上半身はともかく、下半身が蹴る方向はリップ(ジャンプの反り)に対して90度の方向ですよ。
リップで一気に立ち上がる(蹴る)とバランスを崩しやすいですが、しっかり板を踏めている(バランスが整っている)のであればトライしてみましょう。
空中
エアーの頂点
抜け^てからエアの頂点に達するまでにバランスを整えます。
エアの頂点で足を完全に引きつけ、できればグラブしてみよう。
上がってくる板を押さえつけるように腕と肩を被せます。
腕は肩より下で動かしましょう。
腕を肩のラインより上げると、体幹筋肉も上に引っ張られ重心も上に引き上げられます。
エアの頂点からは落下しながら上半身(または頭)をランディング角度に直角になるように倒していきます。
目線は自分がランディングする位置よりも数メートル遠い位置を見ておくとランディングでの「つんのめり」を防げます。
空中では少しの頭の傾き、腕の位置、上半身の回転運動などでバランスを変化させることができます。
逆に言うとグラブの位置で簡単に空中のバランスは変わりますし、上体の捻りで回り始めるということです。
ランディング
ここからまた「アプローチ」、次のトリックが始まっていることを理解しましょう。
高めの姿勢(筋力を一番発揮できる関節の角度)で両足ランディングの準備。
ランディングの衝撃吸収は低くなりすぎずに自然なヒザの角度で止めれることが理想ですが、衝撃が強い場合はそこからフルに下半身の可動域を使って吸収しましょう。
完全に沈みきると各関節を痛める原因になりますので、ランディング後は即座に地面に反発するように立ち上がり足元を安定させます。
すぐ次のアイテムが迫ってきますからね。
さあ、これでスピンの準備は整いました。
次回はお待たせのパークジャンプでのスピン実践練習です!
講師:高石 周 1970年4月11日生まれ 39歳 新潟県出身 現在カナダ・ウィスラーにてCSBA(カナディアンスポーツビジネスアカデミー)にて、スノーボードコーチとして活動。 Sponsors: Volkl, A- Seven, Flux, Cross 5 |