岩田克己氏と語る平昌オリンピック検証!平野歩夢が金メダルに届かなかった理由

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長年スノーボード専門誌の編集など行い数多くのオリンピック・アスリートの取材を続けて来た岩田克己(いわた・かつみ)氏。その取材網は、選手だけでなくコーチやジャッジ、協会にも及び取材力の高さでは、スノーボード界随一と言っていいだろう。スキー、スノーボード雑誌で働く前には、Focusや週刊大衆などで働いていたというから、そのエゲつないほどの取材力・分析力は、スノーボード・メディアの中では異質な存在でもある。かつては長髪で怖かった印象もあるが、最近は真面目な政府の仕事をしてちょっと優しい感じになった岩田氏と、今回のオリンピックについて語った。テーマは、『平野歩夢が金メダルに届かなかった理由』。

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Q
あのショーン・ホワイトの最後のラン。一発目のフロントサイドダブルコーク1440が決まって、次のキャブ1440もメイクして「ヤバっ!」と思いましたよ。持って行かれた!と。
正直、平野歩夢の2本目が決まった後のショーンの虚ろな目というか、やられ感を見た時、「金もらった!」と思っていたのですが・・・。あの最後の最後で決めるとは流石!
結局、ショーンが金メダルに輝きました。岩田さんは平野選手が金に届かなかった理由は何だと思いますか?

A
ショーンは一発目からリスキー高い1440、対して平野はストレートでしょ。あのへんジャッジの評価に差があったのかなー?とも感じられる。あと気になったのが回転方向。ショーンは縦、横、斜めにしてもバラエティに富んでいたけど、平野は一方向の後方回転が主。あのへんも評価が分かれたんじゃないだろうか?

Q
確かに。縦2回転、横4回転のダブルコーク1440からのスイッチスタンスからの同回転キャブ1440。さらにその縮小版とも言える縦2回、横1回転半のフロントサイドダブルコーク1260、そして最後は横3回転半のバックサイド1260。後方へ回すトリックが多かったですね。
対してショーンは、彼のシグネチャーでもあるトマホーク(ダブルマックツイスト1260)など、前回転も含めた横回転トリックも入れていてバリエーションがありました。
スノーボードのスタイルに関して、僕はショーンよりも断然に平野派で、あのバインを感じさせないほどのナチュラルな滑りはカッコいいと思いますが、オリンピックでは残念ながらやられたと思いましたよ。平野のスコアが出た2本目では5発ジャンプでしたが、エックスゲームズで99点を出した時のように6発飛んでさらに完成度も高かったら、金も獲れたと思うのですが。

A
ショーンは1440を2発続けた後、難度を下げたフロントサイド540で繋げたので、高難度のトリックを続けた平野の方に軍配が上がっていたと思う。まあ、ショーンにはブーツグラブという失敗もあったと思うが、高さでは圧倒的にショーンに軍配が上がっていたし、ブーツグラブというマイナス面を埋めるだけの評価はあったような気がする。あと、自分の勝手な想像だけど、もしかしたら平野の3本目は、1440を3発繋げようとしたのかも、って考えている。ショーンが今回のオリンピックで初めて1440を決めたので、もしかしたら歩夢はその上をいく、世界で初めての3連続1440にチャレンジしたのではないか?って。

Q
まさか!1440の3連発なんて、先の話の技のバリエーションなど吹っ飛ばすほど、インパクト絶大ですよ!これ決まれば、金メダルに相当しますね。そう言えば、オリンピック後に平野選手は、これ以上のスピンは難しく、将来的にはフロントサイド側だけの1440でなく、バックサイドの1440も行うことを明言しています。そういうことか・・・。

A
ソチの時の歩夢は惜しくも銀メダルだったけど、大会の後、あるジャッジと話をする機会があったので、平野の点数が伸びなかった理由を聞いてみたところ、「平野は高さが落ちてきた、そのへんが得点が伸びなかった面」と。
やはりハーフパイプ競技では、高さはかなりのアドバンテージを持っているのではないだろうか?北京では、平野がどこまで進化しているのか興味を引くところではあるが、パイプがデカくなったことでリスクが高くなる一方、皆同じ技を繰り出し、なんだか競技内容が体操競技のようになっていくハーフパイプ競技に対して「?印」を感じるのは自分だけだろうか?

Q
ジャッジの方もスノーボーダーですから。これまでスノーボード界が大切に来た「スタイル」というところも考慮して、どんな動きが得点につながるのか。そのへんのジャッジングの進化も期待したいです。
ところで、平野選手は予選3位通過。その結果、滑走順は平野の後にオーストラリアのスコッティ・ジェームス、そして最後のショーン・ホワイトということになったのですが、その影響はどう思いますか?

A
平野は予選をトップで通過することが絶対条件でした。
決勝で最後に滑るショーンに、相当なアドバンテージがあったと思います。
なので、平野は予選をトップ通過する必要があった。
ショーンが最後に滑ることに、そのショーンのネームバリューは絶対的な有利があったと思う。
また、平野の2本目の点数が伸びなかったのは、あそこであれ以上の高得点を出してしまったら、3本目の点数の出し方に、ジャッジが悩んでしまうという点も見逃せない。
逆に言えば、平野は2本目で完璧な滑りをしてジャッジに有無を言わせないほどの高得点を出させていたら、おそらく、ショーンの3本目の滑りで逆転は難しかっただろう。

 

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