【特集】自分でスノーボードを作ってみた

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プリント

Text: Satoshi IDA

ある日、知人が主催している「ジョウモウ大学」の授業で「雪山遊びの原点を探る旅~ハンドメイドスノーボードの世界~」というのが開催されることを知りました。スノーボードを自分で作ってみようというワークショップです。この時は「スノーボードを作る?どーせべニア板をスノーボードみたいな形に切って遊ぶ程度だろうなぁ」と思っていました。悪く言えば少しなめていました。でもなんだか楽しそうだなと思い遊び半分で応募すると、運よく抽選に見事当選。当たったからにはやってみようと、まずはじめに説明会的なものが行われるというので、座学の会場におじゃましてきました。そこでとんでもない衝撃を受けます。

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もう普通のスノーボードなんです・・・
お店で売っているような。しかも、フィッシュテイルもあればスプリットも。
構造でいけばサンドウィッチもキャップも・・・。文字通りカルチャーショック。
というわけで、どっぷりのめりこみました「自作スノーボードの世界」

前述のとおり、今回はジョウモウ大学主催のワークショップで先生は自作スノーボード歴10年に亘る第一人者の堀田建具製作所の代表、堀田さん。そう、本職は設計事務所ご用達の地元で有名な建具屋さんなんです。しかも、僕は以前に建築現場でお会いしたことがあるようなのですが、覚えていませんでした。超失礼な奴ですね。(注:今回この原稿を書いてくれたサトシは、普段は不動産関係の仕事をしている。)
スケジュール的には8月から月一回のペースで作業を行い、シーズンイン直前の11月には自分の板が完成する工程です。木工作業は、素人の僕に果たしてスノーボードが作れるのかどうか不安もありますが、とりあえずやってみよう的な精神で乗り切れればと、この時は楽観的に考えていました。

まず、作業に入る前にいくつか決めなければならない事がありました。最初は型です。
「型」?初っ端からよくわかりません。
先生の説明を聞いたら、ボトムラインの形状を決めてキャンバーをつくる作業のためのものだと勝手に理解しました。今回は、あらかじめ用意されていた型があったので参加者でジャンケンをします。僕は、幸運にも狙っていた型をゲットすることができました。その次はアウトライン。なんだか混乱してきそうですが、簡単にいうと板の形状で長さや太さ、サイドカーブ、ノーズ・テールの形状などです。僕は、実際に乗ってきた板のスペックを振り返りつつどんな板が作りたいか、今までの経験の引き出しをいろいろ開けて数日間妄想したのですが、そもそもどこをそんな風にいじるとどんな風に変わるか全くわかりません。板を買うときは基本的に長さとウェストぐらいしか気にしてないし、シンプルなグラフィックが好きというぐらいしか僕の引き出しにはありませんでした。また心材であるコアは、どんな滑りをしたいのか相談しつつ木の特性を考慮してもらい選んでもらいました。厚みは7mm、コアの中心はタモで両サイドにバンブー、間は桐にしてフリーライドよりの遊べる板を目指します。

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【ワークショップ初回】
出来上がっていたコアと初対面。これがスノーボードに!?あまり実感がわきませんでしたが、作業開始です。まずは、あらかじめ用意してもらっていたアウトラインの型紙をテンプレート用の板に張って切り出します。さっそく工具を使うのですが、木工作業初心者の僕が使ったことのある工具といえばインパクトドライバーぐらいしかありません。ドキドキです。スノーボードを作る以前に、工具の使い方の勉強が必要なのではというつっこみが頭をよぎりましたが、まずは先生にお手本を見せてもらって使い方を盗みます。さらに、お手本という口実を使い半分ぐらいやってもらうことが度々。そんな感じで作業が進みます。
そして作ったテンプレートをもとにしてスノーボードになる板を削っていきます。最初の方は慣れない作業で緊張してましたが、だんだん大胆かつ大雑把になっていきます。アウトラインができたら今度はノーズとテールの厚さがテーパー状になるように削っていきます。「ああ、そういえばそんな風になっている」とその時に気づきました。そしてノーズ・テールのスペーサーも作成し、インサートホールの穴を開けます。と、ここまで簡単に書きましたが、実際には半分ぐらいやってもらってます。カッコよく書くとコラボですね。

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【ワークショップ2回目】
今回はソールの加工。これまたテンプレートを使ってソールを切り出します。こちらはさほど苦労はなかったのですが(忘れてるだけかも)、次の作業が大変でした。「エッジの加工」です。このエッジがとにかく固い。専用のエッジを曲げる器具を使うのですが、なかなか思うように曲がってくれません。曲げすぎたり、全然曲がってなかったりの繰り返し。こっちを曲げると他の場所がおかしくなったり・・・大苦戦。せめてもの救いは、テールが分かれているフィッシュテイルの板ではなかったこと。割と普通っぽい板でよかった。そして何とかソールの形状に沿ってエッジを曲げられたら、ソールに瞬間接着剤を使ってエッジを装着します。

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【ワークショップ3回目】
今まででの作業でスノーボードを作るための準備である「コア」と「ソール」が整ったので、今回はいよいよ板をバキュームという方法で成型します。ワークショップ2回目で作ったソールの上にエポキシ樹脂をのせ、エッジにアスナーシート、その上にガラスクロス・ロービングクロスを重ねワークショップ1回目で作ったコア材をのせます。さらに、ロービングクロス、ガラスクロス、最後にトップシートを重ねFRP成型。と簡単そうですが一発勝負の為、先生は大忙しです。そんな忙しい中、板に色を付けたいからエポキシに色を付ける作業を増やす僕。エポキシの量が指定された量よりも多かったり、うまく色が出なかったりと、ここぞとばかりに先生の足を引っ張ります。
何とか作業も無事?終わり、最初に選んだ型にセットして真空状態で圧縮。あとは固まるのを待つのみ。一晩寝かせます。

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【ワークショップ4回目】
いよいよ完成です。どんな仕上がりになるのかワクワクします。さっそく、僕の苦手な工具ジグゾーを使って板を切り抜き、エッジに沿って2番目に苦手な工具トリマーで成型。その後、サイドウォールの角度付をしてサイドウォールをウレタン塗装2回、ドリルでインビスの掘り出す時は板に色を付けたせいでインビスの位置がわからずビビりながら作業してフィニッシュ。ソールに張った養生を剥がす時、実は誰にも気づかれないようにニヤニヤしてました。スノーボードに興味がない人からすれば完全にあぶない人です。

まさか本当に自分で板が作れるとは・・。正直、言われるがままに作業をすすめたので細かいところはよく覚えていません。(笑)マニアックな部材や工具がないと自作は無理ですが、スノーボードの新しい一面を垣間見れた気がします。すごく勉強になりました。帰ってから、本当にビンディングがつくかどうか心配ですぐに試してみましたが、全く問題ありませんでした。

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完成したスノーボードは完璧とまではいかなかったけど、今回のワークショップは充分すぎるぐらいに楽しめました。僕は趣味でフライフィッシングもするのですが、自分で作った毛バリで魚を釣った時の快感に近い感動が、この板で滑るときには感じられるのかと想像するだけで楽しくなります。

今回いい意味で既成概念をぶち壊してくれました。実際に過去に作った方々の板を見るといろんなのがありました。現物は見れませんでしたが、トイレのスリッパからインスピレーションを受けて作った人もいるとか。スノーボードはもっと自由でいいのかもしれません。
とりあえず、この板でどんな滑りができるのか、今から楽しみで夜な夜なニヤニヤしています。

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SPECIAL THANKS
堀田建具製作所  http://ht-craft.com/
ジョウモウ大学 http://jomo-univ.net/

 

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