プロ・スノーボーダーに捧げたい! 企業買収時代に生き残る方法

広告 five  

緊急特集企画

BURTONがFORUMを買収! Sims保有するHuffy社が民事再生法! QuiksilverがRossignolを$320ミリオン・ドルで買収!さらにはスポーツショップの倒産や買収話、そして最近、話題となっているライブドアとフジテレビジョンの株式争奪戦。まさに不安定な時代にいったい将来どのようにしたらいいのだろうか?と不安に思っているプロ・スノーボーダーたちも多いだろう。不安に感じている人はこれからジタバタする方法を考えるからまだマシで、不安のかけらもないライダーはもっと危ないかもしれない!?

STORY: Fusaki IIDA

広告

dmkでは自分の独自な判断や勝手な発想でこれまでにも、往来のスノーボード・メディアではあり得なかったちょっと奇妙なコンテンツを発信して来た。思いつくところでは、2年前に行った「プロ・スノーボーダーに捧げる確定申告」、3年前には「良薬?毒薬?2ちゃんねる 巨大掲示板スス板との付き合い方」なんていうのもやってみた。さらに最近では「プロになってから食う方法」というコラムを執筆したし、過去にもプロ・スノーボーダーたちがその時代で生き残るための方法を考えて提案して来た。

そして、今回も誠に勝手ながら、このような企業買収時代に生き残る方法という大胆な企画をやってみよう。まだまだ知識の浅い自分が発信するので、あまり力にはなれないかもしれないが、
「もしかしかたら、参考になるかもしれない」
そんな気持ちでこれからの提案を聞いてほしい。
「オレ、ワタシ、プロにならないし、興味ないもん!」
と思うかもしれないが、あなたが好きなプロ・スノーボーダーにも関わること。このサバイバル方法が人生のヒントになるかもしれないし、良かったら参考にしてください。


第一章
あなたの知らないところで明日の状況が変わる

企業買収って何だろう? 誰が何のためにそんなことをやるのか?
まず会社というのは誰のものか考えてみよう。家のおふくろが勤める親戚の八百屋さんは社長であるおじさんのものと言えるけど、それは有限会社の話。株式会社は株を持っている人の会社である。例えばライブドアというのも、ニッポン放送の50%もの株を取ることで、その経営権を握ったわけだ。
Rossignolの場合には、78才になるBoix Vivesという創業したおじいさんがずっと多くの株を握っていたわけであるが、最近になってその株をQuicksilverに売ったということである。

パワーズという中堅スポーツ・ショップを知っている人も多いだろう。ここは広島から創業した会社で、日本全国にずいぶん店舗も広げてかなり良いビジネスをしていたと思うのだが、最近になってヤマノホールディングコーポレーションというところが買収している。
「なんでビジネスが成功しているのに売ってしまうのだろう?」
と思うかもしれないが、例えば自分が経営者になったことを想定してみたらいい。

ある日、突然あの店の経営者が変わることも!業界再編成の波は知らない間に津波のように突然やって来るだろう。

あなたは、世界一のバインディング取り付けオタクになり、スタンス博士になったとしよう。そして、その勢いでスタンス取り付け専門カンパニーを起こし、世界中のスタンスに悩むスノーボーダーたちを救った。そのアドバイス料が拡大に増えて、会社もかなり儲かり、ある日、まったく知らない会社から「あなたの会社を3億円で買います」と来たら、どうするだろう?
「えー3億円! そんなにお金あったら間違いなく、一生スノーボードばっかりして遊んで暮らせるかも。売ってしまおう!」
と思うに違いない。そう考えればパワーズだってビジネスがうまく行ったとしても売ってしまうという心理が理解できるに違いない。実際にパワーズがどのような状況で買収されたのか、ということをくわしく調べたわけでないのわからないが、推測としてそういったことも考えられる。

ところで、その買収したヤマノホールディングコーポレーションというのは不思議な会社である。ウエブサイトを除いたところ経営理念には、こんなことが書いてあった。

美道五原則とは、女性の美しさの基本を「髪」「顔」「装い」「精神美」「健康美」に求め、その五つの美を整えることで女性の真の美しさを引き出そうとする考えです。五つの美がバランスよく調和し・・・

まったくもってわからない。ここはつまり美容関係の会社だろうか?その会社が、パワーズやビバスポーツを買収する意図はどこにあるのか?と。つまり、その会社にとってみたら、建前上スポーツ業界を良くしたいとかあるのだろうけど、「中堅ショップをより大きくしてそこから利益を得たい」という、最近、ライブドアがニッポン放送に仕掛けたマネー獲得意識先行の企業買収話と変わらないだろう。

最近のニュースを見ると、ニッポン放送の社員などはかなり嫌悪感を持ってライブドアに対して拒絶反応を起こしているが、自分の考えでは建前でも何でも業界を良くしてくれるのはありがたいことだと思う。ちなみに、自分のように考える人は業界に少ないようで、「スノーボードもやっていない奴が、こんなことを動かしているなんて」と、よく聞くことがある。北米でも同じような傾向だから、どうしてもこの業界のメディアはコア系に流れがちである。

話はややズレてしまったが、ともかくこの実例のようにスノーボード業界を知らない人間が、スノーボード業界を動かしているのは事実。よって、ある日、思いがけない時に今まであった報酬がカットされ、プロ・スノーボーダーの存続は難しくなる可能性もあるのだ。そこは肝に銘じて、次の項目に移ろう。


第二章

不安定時代に生き残るサバイバル考え方

「オレはこのメーカーのためにこれだけやったのに・・・」と思いながらも経営者が変わったとたんに契約からカット。さらには、そのメーカー自体が消滅してしまう、今まで付き合いの合ったメディアがなくなる。こういったことがある日、突然起こってしまうのが今の時代だ。そこで、ここからが知恵の出しようである。このような明日何が起こってもおかしくない時代、どのように備えるべきか。日頃からどんな考えを持ち、どんな活動をすべきか。

自分が行った仕事は経歴として残るので、それは1つの武器であると考えていいだろう。例えば、あるライダーはそのボードの開発に携わる。そういった開発した経験は立派な履歴として残るので、次に契約するメーカーに対して1つのアドバンテージが加わる。その他、そのメーカーのボードを露出させるために行ったメディア活動も、そのライダーにとって有効な履歴。
まずは自分が行った活動が、他のメーカーに対して有効な武器になり得るか確認してみよう。

例えばそのメーカーが「 ○○くん、キミはABCランキングで10位に入ったらボーナス100万円出すよ」と言われていて、その○○ライダーは雑誌などのメディア登場活動など、わき目も降らずに練習に明け暮れ、見事にABCランキングの10位に入っていた。しかし、ある日そのメーカーが他メーカーに買収されて、そのメーカーの方向性まで変えられて不要なライダーになってしまった。それで仕方なく他のスポンサーを探したが、他のメーカーではABCランキングとかまったく考慮されずにメディアに登場したことを重視。その結果、○○ライダーはまさに窮地に陥るのだ。

理想を言えば、すべてに長けていろいろな履歴を持っていること。メディア露出活動、試乗会、展示会などのヘルプ活動、キャンプ活動、大会活動、ギア・レポート活動などなど、そのメーカーを応援する活動が多いほどアドバンテージが上がる。しかし、どれもできるというのは困難だから、その中でもできる限りの活動をこなせるようにしといた方がいいだろう。時間の配分を考え、どんな活動にどれだけ時間を注ぎ、1つだけでなく、2つや3つはこなせるようにしといた方がいい。人間というのは身体は疲れるが、頭は疲れないというから(注:多くの人は目が疲れて頭が疲れたと勘違いするとのこと)、頭をフル活動させて、今の状況下でも1つでも2つでも仕事をこなせるようにしといた方がいいだろう。

やることやって飲んで騒ぐのは大いに結構!写真左はライダー知名度も高く、そして豪邸も持ち人生の成功者(?)デバン・ウォルッシュ。

ライダーという職業はどうしても華やかなところがあり、例えば海外遠征など出てしまえば、滑って、飲んで、さらに遊んで、という感じで流されてしまうそうになる。だけど滑って体力をつけるだけで安心せずに、そのギアに対するレポートなどをマメに作成したり、メーカー用のキャンプのアイデアなども出してみたり、自分のプロとしての活動範囲幅を広げること。メーカーに対する自分の有効性をPRしといた方がいいだろう。

ここで1つアドバイスするなら、『自分は1つの商品である』、と考えればわかりやすいかもしれない。自分がプロ・ライダーであるという商品になった場合、メーカーとしてはどういったことを求めているか。商品であるから、もちろんPRすることだって重要。PRの重要性を考えればPRに関する本を読むのもライダーとしての勉強である。例えばライダーでも布施忠のようにスーパー凄いクラスになれば、そういったことは不必要でスノーボードに没頭できる環境になるかもしれない。ただどんなレベルのライダーでもそのライダー業に関わることを勉強することに越したことはないだろう。

デバン・ウォルッシュなんかは、自分でメーカーの株なども持っているが、そういったところで多少の勉強はしているハズ。そう、どんな立場の人でも、いろいろ勉強しとけばそれに越したことはないのだ。だから、本屋とかで気になった本は、すべて買っておくのもいいし、気になったウエブサイトのページはどんどんコピーしてファイリングして置くといい。人生長くやっていれば、いずれこうしたファイル術のようなものは必要になって来るので、今からやっておいたことに越したことはない。ちなみに自分は小学生時代から八百屋の手伝いをして、ミカンを12個の袋詰めにした時、どのようにしたら見栄えがよく商品として売れるようになるか、とか考えて来たが、こうしたことささやかなPR術を磨いて来たことは今でも大変役立っていると感じる。

ともかく、自分ができる活動範囲を広げることがこの時代を生き残れるきっかけになるに違いない。

第三章
サバイバル力を強化する3つのアドバイス

先に、『自分は1つのライダーという商品である』という考え方をするとわかりやすい、と述べたが、ここではさらにそのへんのことをくわしく説明して行こう。

まずはライダー実力の定義について。
これはマーケットの世界でよく言われることだが、いい製品は、必ずしもいい商品でない。つまり、いい商品というのは売れる製品のことであって、いっくら本当に良い製品でもその製品がPR力などなく売れない製品だったら良い商品ではないということだ。

例えば、自分はこのサイトで販売しているプロテクターを本当に良い製品だと思うし、世界一のプロテクターだとも思う。実際、初心者の方からシモン・チェンバリンのような世界トップまでのライダーにも喜ばれている。しかし、これは製品に力があっても企業に力がないので、他のプロテクターに比べれば売り上げ高が圧倒的に少ない。いくら他の製品よりも良いものあっても、マーケットという観念の世界では良い商品にはならないのだ。
(注:元々このプロテクターを製作する会社はたくさん売ることだけを目的にしているのではなく、代表とスタッフが手作りで製作できる分だけを売るという方法をとっている)

ライダーも同様で、いくら実力があってもメディアの登場が少なく、稼ぎが少ないライダーは、このマーケット世界で言う「ライダー実力」はない、ということになる。逆に言ったら、本当は大してうまくないのに(注:極端な表現で恐縮するけど)世間で認められた実力が高ければ「ライダー実力」はアリという表現になるのだ。

バックカントリーでこれだけヤバい飛びを見せるルーブにしても、PR力がなければ実力が認められないのがプロの世界。今年はメジャー・フイルム・レーベル所属で一気に知名度が爆発する可能性があるが。

先日、ある方から「フサキさん、このライダーはヤバイですよ。普段、会社に勤めているけど 1260まで回すし、今いる日本のプロなんて目じゃない」というようなことを言われた。なるほど、コイツは凄いやつだと思った。だけど、現状このライダーの認知度が低ければ、やはりプロ=商品で考えた場合には「実力なし」という表現になってしまう。もちろん本来の実力があるので、飛躍するチャンスはあるだろうが。

ライダーの方に対して、「商品である」という表現は失礼だと思うけれど、お金が付きまとうプロの世界では、どうしてもPR上の考え方でそういった表現は避けられない。だから、くどいようだけど、自分の商品価値を高める努力が必要ということは理解していただきたい。

そこでここからは大きく分けて2つの提案をしてみたい。まず1つはすでに実力があり、認知度も高いライダーに向けて。もう1つはその他、大勢のプロ・ライダーたちへ。

まず、実力ライダー実力系の方は、自分のネームバリューがある内に、自分でコントロールできるブランドをどんどん育てるべきだと思う。佐藤康弘のファーストチルドレンや、西田崇&布施忠などのメイビーエムなどが良い例になる。海外では、デバン・ウォルッシュやクリス・ダフィシなどのワイルドキャット。デバンはアイリスなども含めて株主であるぞ! 海外にはこうした例がたくさんあるが、ピーター・ラインのフォーラムの株主も有名だ。株主というのは、毎年配当があるだろうから、有名ブランドに育てあげればそれだけでも食って行ける状況になりそうだ。ネイト・ボーザンのようにせっかくNEFFというキャップブランドを立ち上げても借金ばかりしていてはダメだけど。

「えー、だけどワタシ、オレにはそんなネームバリューないよ!」と聞こえて来そうだ。だけど、心配ご無用。そもそも自分は超トップ・ライダーたちに向かってこの企画を考えたのではなく、多くの困っていそうなライダーに向かって、この原稿を執筆する気になったのだから。そういった意味では、ここからが本番だ!
以下、3つの提案を紹介して行こう。

確定申告せよ!
いきなり、こんな話題で恐縮だが、この確定申告する意味は2つある。1つは、確定申告により所得を低くさせて、たくさん払った(?)源泉徴収を返してもらうこと。
もう1つは、自分のキャッシュフロー(お金の流れ)を理解し、そこから必要経費と不必要経費を導き出すことだ。

所得の決め方というのは、単純に自分が1年間にもらったお金から、経費を差し引いたもの。例えば、あるライダーは年間300万円稼いだとしよう。その内容は契約金160万円、メディア&キャンプ活動で60万円、その他80万円をアルバイトで稼いだとする。
だけど、プロ・スノーボーダーの経費というのは、それこそ無尽蔵に申告できるものだ。例えば、あなたが床屋で髪を切りたい、とする。その前には、ウエア撮影の前に行くといい。そうすれば、その撮影用としてのヘアーカット代、必要経費になるだろう。
あなたは、ライダー仲間と食事をしたい。その場合には、必ず情報収集のための話も行う。それで、その時の居酒屋の伝票は接待交際費になる。
彼女とハワイに遊びに行きたい。そんな時はボードも持って行き、砂浜でも練習だ。そうしたら、海外でのトレーニング費用扱いで、旅費交通費になる!?
もちろん、これは行き過ぎの考えで、本来経費というのは、その旅行でもスノーボード活動に準じた分だけ経費として申告すべきものだ。だけど、嬉しいことに(?)そんな細かいこと、気にしないというのが税務署の考え方。彼らだって調べるには人件費が必要だから、年収1億円とか、数千万円とかそういうビッグ・マンたちの脱税を狙った方が懸命なのだ。年収300万円で所得が50万円ほどのプロ・スノーボーダーの脱税なんてチェックする時間の余裕はないのである。
ともかく、こうして年間の報酬から経費を差し引いたのが所得になるので、所得金額を減らせば、源泉分はすべて返って来る。年間300万円稼ぎ、30万円の源泉を払っている人なら、その金額はそのまま返って来ることだろう。

次にキャッシュフロウの話。
こうして経費を計算すると、いかに自分が不必要なところでお金を使っているかわかる。例えば、年間の図書費なんか3万円以下だったりするのだ。本によって勉強できることは多大にあるので、本を読まない人生はもったいない。1冊の本が、その人のその後の人生の方向を大幅に変えることがあることを考えれば、いかに本が大事かわかるだろう。このように偉そうに執筆している自分も本を読むことによって、ある程度、蓄積された情報が脳に入っているだけに過ぎない。それを自分の執筆センスによりアウト・プットしているのだ。多くの情報を仕入れなければ、何が正しくてどうすべきか考える能力を身につかないし、貧弱な思想になってしまう可能性もあるだろう。

話を戻そう。
自分の経験では旅費交通費も以外に有効に使っていないことがあるので、見直すべきだと思う。例えば、大会に行くととてもお金が掛かるけど、本当にその大会に行くことはプロとして大事な活動になっていたか。きちんと賞金を稼いでリターンされているか、その大会結果がスポンサーに認められて契約金に反映されているか。
海外に行った練習費用もきちんとリターンされているか見直すべきだろう。

意外に大した額にならないのが通信費。自分の場合、あまり携帯を使わない、ということもあるが、手紙などの郵便物を送る代金は、本当に大した額ではないと思う。スポンサーに出すレポートの発送費用、またレンズに水が入ってしまったゴーグルのレンズを送る費用(注:ずいぶんと前の話ですよ。今のゴーグルは大丈夫)、さらには海外で気になった雑誌の切り抜きをスポンサーに送り報告するような費用は安いものだ。その他、仕事上話をしたい時でも、どんどん国際電話をかける。この電話により、ビジネスにつながることは大きいことを考えれば、積極的に通信費を使うべきだろう。
プロ・ライダーたちもよく海外に行くことが多いだろうが、そんな時にはスポンサーにどんどん手紙を送ったり、電話をしたり、様々な通信手段を利用すべきだろう。メーカーにとっては海外の生の情報をいち早く知れて価値ある情報をゲットできるし、またそのライダーの評価も上がるというワケだ。

情報をゲットせよ!
戦国時代、忍者を使って諜報活動をし、活躍したのは武田信玄だ。まだ、その信玄にこっぴどくやられたのは若き日の徳川家康。その後、家康は信玄に習い忍者の諜報活動に力を入れたという。そして、天下を取ったのは、みんなも承知のこと。

このように情報をゲットし、これからの活動を決める方向を打ち出すことは大切なことだ。「諜報」という陰険な考えでなくとも、単純に「知らないことは知りたい」という感覚で、どんどん行動すべきだろう。行動は力になる!のだから。

自分の場合もわからない世界には、どんどん飛び込もうとした。躊躇している自分にも出会うのは事実だが、それ以上に知らないことをそのままにしている方が恐かったし、行動しなければこのような自由業を歩めないという立場もあるからだ。また、自分が知りたいことは、そのまま他の人も知りたいのでは?と考え、数多くのインタビューもこなした。例えば、このサイト製作の初期の頃には、当時あった専門誌のすべての編集の方に尋ねてみたいと思い、インタビューした。というのも、スノーボード業界の舵取りの役目も行う専門誌の方が、どのような考えを持った方なのか興味があったからだ。

情報収集はこの業界に何かを伝える立場の方、メーカーやメディア、ライダーなどだけでなく、一般の方からも取るようにしている。例えば、dmkクラブ員の方と話すことで、発信者と受信者のズレを確認し、調整することもできるのだ。いつのどんな時代のリーダーたちも、底辺層にいる声に耳を傾けなくて失敗しているものだ。
ダイエーの産業再生機構も、まず新たに取締役になった人が、現場の店長さんに話を聞くことから始めたようだ。今までダイエーがこういったことを行ったことはなく、ここで始めて現場の声が活かされることになる。

このことをプロ・スノーボーダーに置き換えれば、プロ・ライダーたちは積極的にメーカーと話をする機会を作って、わからないことを聞ける体制を作ること。また、メディア関係者とも有効的に話せる機会を設けること。仲間を大切にして、他メーカーの現状を把握すること。
その他、気になったフレーズに耳を傾け、わからないことは人から聞き、また書籍、インターネットなども利用して調べること。例えば、あるライダーが「宣伝費用」というキーワードが気になったら、そのことを調べてみたらいいだろう。世の中の会社では、宣伝費用に売上げ金額からどれくらいに使っているか調べる。そのことから、ライダーに関する報酬の割合も考えてみる。こうすることで、今まで自分が見ていた景色に、メーカーや経営者としての新しい景色が伝わる。それは、まるで違ったカメラのレンズを見ると、違う景色が見えたかのように。

抽象的な表現でわかりにくいので、もっとくわしく説明しよう。
ライダーという立場だけで物事を見れば「自分の活動でどれだけやったのかPRする」のみで、一方通行の交渉になってしまう。
「担当の○○さん、ワタシはこれだけメディアに出ましたよ。メーカーのキャンプにも参加しました。昨年よりも、1.5倍の活動、ぜひ1.5倍の契約金アップをお願いします!」
だけど、メーカーの立場になれば宣伝に使える費用は、売り上げ金の10%だけだった。今年は、売り上げが50%もダウンしているので、とてもこれ以上ライダーに使える金額はない。そこで、
「○○ライダー、悪いけど会社の業績は良くない。だから、20%ダウンで了承してほしい」
と答える。ライダーの方は、会社のくわしい実情を知らないし、また会社というものがどうやって成り立っているか理解できなければ、到底1つの考えでしか見ないから、「このメーカーとは付き合いたくない!」なんて、かんしゃくを起こしかねない。

このような例は極端で、たぶん多くのライダーが「それくらいのことわかっているよ」と思っているだろうが、意外に他人の見ているレンズまで理解できない人が多いものだ。まあ、自分も含めて人間という動物はそういうふうにできているので、常に他人の見ている景色も理解できなければ、交渉での隔たりは出るもの。一方通行で考えないようにするには、まず「他人の考え」を理解しようとし、またそのためにも本などで知識を蓄積しておくことなのだ。相手に対する思いやりを深める方法は、勉強することから始まるのだ。

ここでのテーマをまとめると、情報を取ることに躊躇しないこと。ケチらないで、いろいろな人と飲み、話をして、またそのための行動もおろそかにしないこと。いつも同じような人たちばかりでなく、積極的に新しい人と付き合う努力をすること。

最終手段!?
唐突だが、自分は時々こんなことを考える。スノーボードの仕事は楽しい。でも食って行くのは大変だ。だけど、せっかく縁あって続けている仕事、なんとか一生続けてみたい。そのためには、他に仕事を持っていて、それでこの仕事を継続してもいい、と。

実際、最近そうしているライダーを知っている。dmkではキャンプのコーチや浪人シリーズ出演でお馴染みのカンジくん(田島寛之)だ。カンジくんは昨年、突然メーカーがスノーボード事業から撤退し、たちまちスポンサーがなくなるという状況に陥った。それで、いろいろあった結果、現在は貿易会社に勤めている。しかし、カンジくんのハウツーを伝える才能やコーチ能力、さらにはライダーとしての魅力は変わらないので、これからもdmkのキャンプのコーチや雑誌、ビデオなどのメディアにも登場するだろう。

他にも定職を持ったライダーは多く、こうしたことも1つのプロ・スノーボーダーの生き方だと思う。 このように、自分では1つ安定した仕事を持ちながら、もう片方でプロ・スノーボーダーをサイド・ビジネスとして行って行く方法はサバイバル術の最終兵器になるに違いない。

資産や株などを増やす方法など、世の中にその手の多くの本も出ているが、そこでよく言われているのは安定した株を持ち、それは生涯持つような形にして、さらにもう1つアクティブに動く株(儲かる可能性も損する可能性も高いもの)を持つ、というようなことを言われている。
そのまま人生に置き換えれば、不安定なプロ・スノーボーダー業はアクティブな株と考え、安定した仕事を他に持てば、長い間、プロ・スノーボーダーの仕事ができる可能性は広がるだろう。そう、だから最終手段は、潔く就職、もしくは事業を始めて、その一方でプロ・スノーボーダーを続けて行く方法である。こうすれば、永遠にプロ・スノーボーダーになれるかも!?

まとめ
自分のこだわりを捨てたところから始まる

自分の浅はかな知識でこのようなプロ・スノーボーダーに捧げたいサバイバル方法を伝えて来たが、「ようは幸せなら、それでいいでしょ?」 なんて、強引なまとめ方を考えている。

「あなたはなぜスノーボードが好きなのか?」
「プロという肩書きに魅力を感じたのか?」
「スノーボードを愛する者として、この楽しさや魅力を伝えれば肩書きなんていらないのか?」
「何か目標がないと、恐くなりそうなのか?」
「いつまでプロ・スノーボーダーと呼ばれ続けたいのか?」
「人生においてもっと大切なことは他にないのか?」

そんな哲学じみたことを考えれば、本当にあなたの生き方が見つかるのかもしれない。ようは、今の自分の立場を全部投げ出した時、どんなことが起きてしまうのか考えてみよう。そうなった時、あなたの中でどんな要因が減ったことが寂しく思うことなのか?
そのかけがえのない1つの要因のために、あなたは生きているのかもしれない。そして、そのように物事をシンプルに考え、自分を見つめ直した時に、あなたの方向性が決まっているかも。方向性が決めれば、恐れることはない。あとは、その目標に向かって行動するだけだ。

せっかく機縁で知り合ったスノーボードだから、ずっと付き合ってほしいけど、それをずっと仕事にすることもない。ようは、あなたが幸せならそれで、いいのだから!?

広告