文:飯田フサキ
やや古い話で恐縮だが、TRANSWORLD SNOWBOARDING誌11月号の中井孝治のインタビューはひじょうに興味深かった。
前回トランズ誌に関する批評コラムを書いた時、来月号予告のところに「独占インタビュー」とまで言葉を使わないで良いのでは?という意見を述べさせてもらったが、その意見が採用されたわけではないだろうが、「独占」というフレーズはなく、「Interview with Tkaharu Nakai 中井孝治が見据える NAKAI」という自然な感じのタイトルになっていた。
このインタビューのハイライトは、これまでに伝わってこなかった中井の素直な本音がビシバシ出るところだ。個人的に「良くぞこのコメントを引き出してくれた!」というところは、22箇所あった。思わず赤線を引いてチェックしたいほどのフレーズ。これほど興味深いコメントがガンガンと出るインタビューはかなり久々だ。
特に自分が印象的だったのは、カズ(國母和宏)に対するコメント。
大会に出ていた頃のようなライバル意識はなくて、お互いフィールドは違うけど、「いいものを残そうよ」と言い合える関係になりましたね。オレの先を進んでいることも認められるようになったし、ぶっちゃげ前よりも仲がよくなりましたね。
このコメント、なんか奥が深い、と思った。中井も天才的なセンスに恵まれたライダーだ。同じトップ・プロというフィールドで切磋琢磨し合う仲でもあるし、ライバルでもあるだろう。そんな存在に対し「オレより先に進んでいることも認められるようになった」とは、なかなか言えないものだろう。実際にそう思っていても、日本全国のスノーボーダーが読む専門誌でコメントする、というのは勇気がいること、だと思った。
逆に言うと、中井も同じ海外の撮影というステージに立ち、しかもAlterna Action Filmでは冒頭パートに立ったからこそ、自分をさらけ出せる勇気が出たのかな、とも思った。また、このように自分をさらけ出せる人間は強いし、今後の中井の成長から、ますます目が離せない、という気持ちになった。
他にも興味深いコメントはたくさんあるが、ユニークな印象も持ったコメントは、
前までジェレミー・ジョーンズ(Rossignol)のパートはおもしろくなくてスキップボタンを押していたけど、今はガッチリ観てます(笑)。
というところ。海外のバックカントリーでのライン系(注:クリフのような落下をするところを滑ること)を攻めるものは、これまでに中井にとっては興味がないことだったのだろう。だけど、先のシーズンに実際にバックカントリーに入り、その難しさや価値観がわかったのに違いない。これから成長していくキッズが、素直に大人のライディングも認めているようなコメントで、とても親しみも感じたし、中井に対して愛嬌も感じたようなコメントだった。
このインタビューは「脱ナショナルチーム。そして・・・」「コンペティターからムービースターへ」「中井孝治的スノーボーディング感」という大きな3つ章に分かれているインタビューで、さらに最後はインタビューアー(編集)が「ナカイズム」という形で締めている。そのすべての章すべてに興味深い発言があるので、ぜひ実際に雑誌を読んでほしいと思う。また全9ページの中には、まさに好き嫌いなしで「いただきます!」とでも言うようにスノーボードの様々な魅力が詰まったカッコいい写真が入っている。パイプ、ストリートレール、そして美しいバックカントリーの写真など。中井らしい、どれもスタイルが詰まった作品だ。
すでに12月号が発売されているので書店にはないかもしれないが、まだ読んでいない人はぜひバックナンバーのオーダーすることをオススメしたい。もしかしたら、あなたのスノーボード人生を感化させるコメントに出会えるかも!?