
スノーボードとともに進化してきたハーフパイプ。その歴史に、新たな転換点が訪れようとしている。
「Fun Pipe(ファンパイプ)」と名付けられたこの新しいコンセプトは、ハーフパイプをより多くのライダーに開かれた存在へと変えることを目的としている。
そのパイロットプロジェクトは、2026年5月、オーストリアのヒンタートゥクス氷河でスタート。Betterpark Hintertuxにある既存のパイプを改修し、Zaugg社の新型「13フィート・パイプデザイナー」が初導入される。
目次
誰でも楽しめる“ハーフパイプのブルーラン”
Fun Pipeは、いわばハーフパイプにおける“ブルーラン(中級コース)”。
その設計は、スーパーパイプとは明確に異なる思想に基づいている。
全長約120m、壁の高さは約3.5m、傾斜は14%と、あえて抑えられたサイズ感。さらに特徴的なのが、ラウンド形状のボトムだ。これにより、ライディング中の流れはよりスムーズになり、まるで波を滑るような感覚を生み出す。
低めの壁と曲面構造は安全性にも優れ、初心者でも短時間で自信をつけやすい。一方で、ライン取りやスタイルの自由度は高く、上級者やプロにとっても十分に楽しめる設計となっている。
スノーボーダー、スキーヤー、初心者から上級者まで、年齢を問わず誰もが楽しめる。それがFun Pipeの最大の魅力だ。
“ただのセクション”ではない、カルチャーの再構築
Fun Pipeが目指しているのは、単なる新しいパークアイテムではない。
そこには、スノーボード本来のカルチャーを取り戻すという明確な意図がある。
かつてハーフパイプは、単なる競技ではなく、コミュニティの中心だった。ライダーたちが集まり、滑り、互いに刺激し合う“場”そのものだったのだ。
しかし時代とともに、パイプは大型化・高度化し、よりプロフェッショナルな領域へとシフト。現在では世界的にもスーパーパイプの数は限られ、多くのライダーにとってはハードルの高い存在となっている。
Fun Pipeは、その流れに対するひとつの答えだ。
誰もが気軽に入り、滑り、上達し、楽しめる場所——その再構築を目指している。
プロジェクトを率いるのはシュテファン・プラットナー
このプロジェクトを主導するのは、MTNpoolやRock A Railで知られるシュテファン・プラットナー。
革新的なパイプ設計やストリートスタイルのセットアップで世界的評価を受けてきた彼は、次のように語る。
「ミニパイプの建設と維持をシンプルにし、ライダーにとってもアクセスしやすくする。そしてハーフパイプへの新たな熱を生み出し、世界中のリゾートにFun Pipeを広げていく。」
2026年のパイロットプロジェクトでは、PistenBullyとZauggもパートナーとして参加している。
2026年5月、ヒンタートゥクスで初稼働
春のフリースタイルシーンを牽引するBetterpark Hintertuxは、4月18日にオープン。
そして5月には、Fun Pipeが初めて一般開放される。
さらに、Nitro Snowboardsのサポートのもと、コミュニティイベント「Fun Pipe Camps」も開催予定。
- オープニング:2026年5月1日〜3日
- クロージング:2026年5月23日〜25日
期間中はコーチングセッションやセッション形式のライディング、著名ライダーの参加など、多彩なプログラムが予定されている。
中でも注目は、世代を問わず参加できる「Fun Pipe Games」。楽しさを重視したコンテスト形式で、新しいパイプカルチャーの象徴となりそうだ。
ハーフパイプは、再び“みんなの場所”へ
ハーフパイプはかつて、シーンの中心だった。
そして今、その役割を取り戻そうとしている。
Fun Pipeは、単なるサイズダウンではない。
“楽しさ”と“アクセスのしやすさ”を軸に、ハーフパイプをもう一度コミュニティの中心へと引き戻す試みだ。
2026年5月、ヒンタートゥクスから始まるこの挑戦。
ここから、新しいパイプカルチャーが生まれるかもしれない。

