スノーボードとオリンピック

Rider: @yaku89ryo
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文:飯田房貴 @fusakidmk

ミラノ・コルチナ冬季オリンピックで日本人選手が大活躍しました。
9個のメダルを獲得なんて、本当に凄いことです。
40年以上スノーボードを続けてきた私にとって、とても嬉しい出来事です。
この素晴らしいスポーツを、もっと多くの人に体験してほしいと思っています。オリンピックをきっかけにスノーボードを始めてくれる人がいたら、これほど嬉しいことはありません。

若い人だけではなく、お年を召した人にもぜひ挑戦してほしいと考えています。

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私はカナダのウィスラーでスノーボードインストラクターを20年間続けていますが、レッスンには60代の方も参加されます。中には60代から始める方もいます。意外と言っては失礼ですが、年齢を重ねた方ほど上達が早いこともあります。

おそらく、それなりの覚悟を持って始めているのでしょう。スポーツ愛好家で、「一度スノーボードをやってみたかった」と思い、決意してレッスンに参加される方もいます。

私自身、現在57歳です。あと3年で還暦を迎えます。しかし、スノーボードのおかげで若さを保ち、健康な生活を送れていると実感しています。毎日の食事はとてもおいしく、朝は早く起き、夜は早く眠る。とても健康的な生活スタイルです。

スノーボードの本質とは?

今回のオリンピックで日本人選手が活躍したことで、スノーボード人口も増えるのではないかと期待しています。
しかし、私が一番伝えたいのは、オリンピックはスノーボードの一面を映している鏡に過ぎないということです。
みなさんもご存じの通り、スノーボードは雪山を自由に滑るものです。オリンピック選手のようにジャンプやトリックをしなくてもいい。速く滑る必要もありません。

普段、都会で生活している人が、ときには雪山へ向かい、板の上に横向きに立ち、ターンを刻む。それがスノーボードです。
もしパウダーの日に出会えたなら、これまで体験したことのない感覚を味わうことができます。
歩けば苦労する新雪も、スノーボードという魔法のような板に乗れば軽やかに進んでいきます。ターンのたびに舞い上がるパウダースプレーで視界が一瞬白くなり、次の瞬間には幸福感に包まれる。気づけば、さっき立っていた頂上からはるか下まで滑り降りていることもあります。

これこそが、スノーボードの原点です。

1998年、長野で初めてスノーボード競技が正式種目として採用されました。
それ以前からスノーボードは競技として発展しており、ハーフパイプやアルペン種目が存在していました。オリンピック採用をきっかけに、当時の国際スノーボード団体は消滅し、その後はスキー連盟が管轄することになります。そこにはさまざまな衝突もありました。
それでも、オリンピックによってスノーボードが世界的に認知され、多くの若者が競技を目指すようになったのも事実です。

国際オリンピック委員会(IOC)は、若者から支持を集めるスノーボード種目を増やしてきました。
長野ではハーフパイプとアルペン種目のみでしたが、現在はビッグエア、スロープスタイル、スノーボードクロス、さらにオリンピックのために強引に作っちゃったような男女混合スノーボードクロスなんてものも(笑)。
冬季五輪は夏季五輪に比べて競技数が少ないため、新種目が追加されやすいという背景もあります。

その結果、「スノーボードは飛ぶもの」「トリックをするもの」というイメージが広がった側面もあるかもしれません。
しかし、スノーボードは本来、人と競うために生まれたものではありません。己と向き合い、雪山と対話し、自分の感覚を磨く遊びです。
だから、もしオリンピックを見てスノーボードを始めたいと思ったなら、飛ぶ必要はありません。トリックに興味がなくてもまったく問題ありません。ターンをするだけでいいのです。

オリンピックのスノーボードは、IOCが作り上げた「競技としての世界」です。それがスノーボードのすべてではありません。もちろん私も五輪を見て興奮し、感動しました。しかし、それは数ある側面のひとつに過ぎません。
野球やサッカーは、対戦の歴史の中で発展してきたスポーツであり、その頂点にワールドカップやワールドシリーズがあります。
しかし、スノーボードは違います。
ただ雪山に向き合い、自分の感覚を探す。
それは、とても平和で、自由で、豊かな雪遊びなのです。

スケートボードやサーフィンといった他の横乗りスポーツに比べると、スノーボードは比較的、誰でも始めやすいスポーツです。スケートのように転んだときに硬いコンクリートへ叩きつけられるわけではありませんし、雪はもう少しやさしく体を受け止めてくれます。また、サーフィンのように立つこと自体が極端に難しいということもありません。

もしこのコラムを読んで、「スノーボードをやってみようかな」と思った方がいたら、ぜひスキー場へ行ってレッスンを受けてみてください。きっと新しい未来が広がっているはずです。

最初はちょっぴり痛い思いをするかもしれませんが(笑)。

飯田房貴

1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
ウィスラーではスノーボード・インストラクターとして活動する傍ら、通年で『DMKsnowboard.com』を運営。SandboxやEndeavor Snowboardsなど海外ブランドの日本代理店業務にも携わる。
また、日本最大規模のスノーボードクラブ『DMK CLUB』の創設者でもあり、株式会社フィールドゲート(東京・千代田区)に所属。
1990年代の専門誌全盛期には、年間100ページペースで記事執筆・写真撮影を行い、数多くのコンテンツを制作。現在もその豊富な経験と知識を活かし、コラム執筆や情報発信を続けている。
主な著書に、
スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』
スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』などがある。
現在もシーズン中は100日以上山に上がり続け、スノーボード歴は41年(2026年時点)。
2022年には、TBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター』や、講談社FRIDAYデジタルの特集「スノーボードの強豪になった意外な理由」にも登場するなど、専門家としての見識が評価されている。

インスタ:https://www.instagram.com/fusakidmk/

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