
2026年2月7日、イタリア・リビーニョで行われたミラノ・コルティナ冬季オリンピック、スノーボード男子ビッグエア決勝。
この舞台で、日本スノーボード界の歴史を塗り替える瞬間が訪れた。五輪初出場の木村葵来(21)が、最終3本目でスイッチバックサイド1980を完璧にメイクし、大逆転で金メダルを獲得。さらに木俣椋真(23)が銀メダルに続き、日本勢によるワンツーフィニッシュが実現した。
男子ビッグエアにおける日本人の五輪メダル獲得は、これが史上初。木村は今大会、日本選手団にとっても記念すべき金メダル第1号となった。
しかも木村は、昨年まで代表選考レースで最後まで当落線上に立たされ、五輪出場自体が決して安泰ではなかった存在だ。その中で今季は結果を出し続けて五輪切符をつかみ、予選を3位で通過。決勝では崖っぷちに追い込まれながらも、最後の一跳びで一気に頂点へと駆け上がった。
五輪初出場、予選突破、そして大逆転での金メダル――この一連の流れは、あまりにもドラマティックだ。
決勝は、最後まで緊張感の張り詰めた展開だった。予選を3位で通過した木村は、1本目でバックサイド1980をクリーンに決め、89.00点をマーク。トップに立つ完璧なスタートを切った。しかし2本目、スイッチバックサイド1800で着地を乱し転倒。順位は一時4位まで後退し、表彰台すら危うい状況に追い込まれる。
それでも迎えた最終3本目、木村は再び大技バックサイド1980を選択。プレッシャーのかかる場面で一切の迷いを感じさせない滑りを披露し、90.50点。この日の最高得点を叩き出し、合計179.50点で一気にトップへと躍り出た。直後に滑走した木俣は着地で転倒し、結果として木村の金メダルが確定。まさに五輪という舞台で生まれた大逆転劇だった。
今季のワールドカップでは5戦すべてで決勝に進出。初出場となった冬季Xゲームズでもビッグエアで銅メダルを獲得し、代表争いでは誰よりも早く五輪切符をつかみ取った。そして本番の舞台で、その実力を疑いようのない形で証明してみせた。
銀メダルに輝いた木俣椋真は、1本目にバックサイド1980メラン、2本目にスイッチバックサイド1980ノーズグラブを成功させ、2本目終了時点でトップに立つなど、最後まで安定感のある滑りを披露した。
最終3本目では逆転を狙い、これまで実戦では成功させたことのない大技バックサイド2160に挑戦。しかし着地でバランスを崩し、惜しくも転倒となった。それでも合計171.50点で銀メダルを獲得し、日本勢ワンツーフィニッシュという歴史的快挙を完成させた。
銅メダルは、北京五輪金メダリストの蘇翊鳴(スー・イーミン/中国)。最終滑走でスイッチ・バックサイド1980を決めたものの、着地で手をつく場面があり80.25点にとどまった。それでも168.50点で表彰台を確保し、五輪2大会連続でビッグエアのメダルを獲得。世界王者としての存在感は最後まで健在だった。
この決勝には日本から4人が出場し、男子ビッグエアにおける日本勢の層の厚さを改めて印象づけた。
予選を首位で通過し、金メダル候補の筆頭と目されていた荻原大翔は、決勝では全3本で転倒し12位に終わった。結果にはつながらなかったものの、バックサイド2340(6回転半)という世界最高難度のトリックに挑み続ける姿勢は、強く記憶に残る内容だった。
また、全方向で高回転技を操る実力を持つ長谷川帝勝も果敢に高難度トリックに挑戦したが、フロントサイド1800、1980ともに成功させることができず、本来の力を出し切れない悔しい結果となった。
事前の評価では、実績から長谷川と荻原を上位に見る声も少なくなかった。しかし、終わってみれば頂点に立ったのは木村葵来、2位に木俣椋真という結果だった。この結末は、日本男子がいかに熾烈な代表選考を勝ち抜いてきたかを物語っている。表彰台に立った2人は、実力とともに流れをつかみ取った存在だったと言えるだろう。
結果として、日本勢は金・銀を独占し、さらに4人が決勝の舞台に立つという圧倒的な存在感を示した。木村葵来の金メダルは、ひとりの選手の努力と成長の結晶であると同時に、日本スノーボード男子全体が世界の頂点に到達したことを象徴する一戦だった。
男子ビッグエアでの金・銀独占は、日本スノーボード界が新たなステージへ進んだことを強く印象づける。
ミラノ・コルティナ五輪はまだ始まったばかりだが、この一本のジャンプが大会全体の流れを大きく変えたことは間違いない。平均年齢21歳で全員が五輪初出場という若きサムライボーダーたちが、次はスロープスタイルで歴史を塗り替えるか、注目が集まる。
スノーボード男子ビッグエア 決勝結果(ミラノ・コルティナ五輪)
| 順位 | 選手名 | 国 | Run1 | Run2 | Run3 | 合計得点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 🥇1位 | 木村 葵来 | 日本 | 89.00 | 15.00 | 90.50 | 179.50 |
| 🥈2位 | 木俣 椋真 | 日本 | 86.25 | 85.25 | DNF | 171.50 |
| 🥉3位 | スー・イーミン | 中国 | 88.25 | 73.75 | 80.25 | 168.50 |
| 4位 | オリバー・マーティン | アメリカ | 29.75 | 79.50 | 83.50 | 163.00 |
| 5位 | イアン・マッテオリ | イタリア | 26.25 | 80.25 | 82.25 | 162.50 |
| 6位 | デイン・メンジーズ | ニュージーランド | 81.25 | 79.50 | DNF | 160.75 |
| 7位 | フランシス・ジョビン | カナダ | 37.25 | 84.00 | 65.50 | 149.50 |
| 8位 | リオン・ファレル | ニュージーランド | 83.50 | 16.50 | 40.75 | 124.25 |
| 9位 | ロッコ・ジャミソン | ニュージーランド | 43.00 | 83.00 | 29.25 | 112.25 |
| 10位 | バレンティーノ・グセリ | オーストラリア | 23.00 | 86.75 | 16.50 | 103.25 |
| 11位 | 長谷川 帝勝 | 日本 | 71.75 | 16.00 | 28.75 | 100.50 |
| 12位 | 荻原 大翔 | 日本 | 21.00 | DNF | 13.75 | 34.75 |
※ 合計得点は有効2本の合計
※ DNF=着地失敗(得点なし)

