
かつて「雪がない=シーズン開始が遅れる」のが当たり前だったスキー場の常識が、いま大きく変わろうとしている。
カナダ・バンクーバー近郊のグラウスマウンテンでは、気温がなんと 20℃でも雪を作ることができる最新スノーマシーン「Latitude 90」 が導入された。これはカナダ初の試みであり、従来の“気温頼み”の造雪システムとは一線を画す存在だ。
Latitude 90とは?
Latitude 90はカナダ・ケベック州で開発された最新型の造雪システムで、外気に頼らず内部冷却装置で水を直接凍結させる仕組みを採用。これにより、−20℃から+25℃の環境でも安定して雪を生産できる。
そのため、従来のスノーガンでは造雪が難しかった高湿度・高気温環境でも動作可能だ。
実際、グラウスマウンテンではこの技術を使って、気温20℃でも2,000㎥以上の雪を生産し、雪解けもわずか10%程度に抑えることに成功している。
従来型スノーガンとの違い
| 項目 | 従来のスノーガン | Latitude 90 |
|---|---|---|
| 動作条件 | 約 −2℃~−5℃以下が必要 | 最大 +20℃でも稼働可能 |
| 原理 | 外気を利用して水を噴霧 → 凍結 | 内部冷却装置で水を直接凍結 |
| 弱点 | 高湿度や暖冬に弱い | 気候に左右されにくい |
| 主な用途 | 寒冷地・山岳地リゾート | 暖冬地域・都市近郊リゾートなど |
日本でも導入が始まっている
この「Latitude 90」システムは、すでに日本国内にも7〜10台ほど導入済みと報じられている。
ただし、どのスキー場が実際に運用しているかは公表されておらず、試験導入や展示を含む可能性もある。
また、他社による同様の“高温対応造雪機”を採用する動きも見られ、暖冬が常態化しつつある日本の雪山において、こうした新技術はシーズン安定化の鍵となりそうだ。
雪山の未来へ
気候変動による雪不足は、ウィンタースポーツ業界全体にとって深刻な課題だ。
だが、Latitude 90のようなテクノロジーが普及すれば、「雪がない冬」でも滑れる時代が現実になるかもしれない。
「雪山の未来を変える」のは、自然でも奇跡でもない。
それは、今を生きる私たちの意識と行動である。
テクノロジーが希望を生み、私たちの自然に対する想いがそれを守る――
そんな、新しい雪の時代がすでに始まっている。

