
3年ほど前、ウィスラーのレジェンド・スキーインストラクター、カワサキさんに身体のメンテナンスについて相談したことがあります。
「最近、疲れが溜まっていて、腰も少し重く感じるんですよね。なんか良いメンテナンス方法ってありませんか?」
そんな私の質問に、カワサキさんは迷わずこう答えました。
「プールがいいよ!」
最初は半信半疑でしたが、話を聞くほどに納得。プールなら浮力で関節に負担をかけず、全身を使った運動が可能。バタ足で脚の疲労を解消し、水中ウォーキングはリハビリにも最適とのことでした。
そこで、早速地元のジム施設「アルパインメドー」のプールへ。久しぶりに泳ぐ水中の浮遊感は、新鮮で心地よく、たった25メートルを5往復泳いだだけでも体が整った感覚がありました。それから週1回のペースで通うようになり、今では20往復、1000メートルを泳げるまでになりました。
56歳となった今でも、身体の調子は抜群です。ここでは、スノーボーダーにとって水泳がいかに重要か、8つのメリットを詳しく解説します。
1. 全身の筋力強化
水中運動は全身の筋肉をまんべんなく鍛えることができるのが最大の魅力です。
- 平泳ぎは内腿や二の腕を、クロールは背中や肩を、バタフライは広背筋や胸筋をバランスよく強化。
- 水の抵抗により、陸上運動よりも体幹やインナーマッスルが自然に鍛えられる。
- 強い体幹はパウダーやジブでの安定したライディングに直結し、ジャンプやターンの精度を高めます。
2. 心肺機能アップ
水圧が胸部を軽く圧迫することで、呼吸に負荷がかかり、肺活量が向上。
- 高地での滑走時や長距離のランディングでも息切れしにくくなる。
- 有酸素運動効果により、持久力の向上とともに疲労回復も早まる。
- 心肺機能の強化は、連続で滑る日やハードな雪質でも安定したパフォーマンスをサポート。
3. 姿勢改善
プールではバランスを取るために自然と背筋が伸び、姿勢が改善されます。
- 猫背や巻き肩の改善に効果的。
- 良い姿勢はスノーボードの基本フォームやカービングの精度向上に直結。
- 長時間滑走する日でも腰痛や肩こりの軽減が期待できます。
4. ケガ予防・リハビリ
浮力によって関節への負担が少なく、安全に筋力トレーニングが可能。
- 膝や腰に優しく、怪我のリスクが低い。
- 怪我後のリハビリや柔軟性維持にも最適。
- 水中ウォーキングや軽い泳ぎは、安全に関節可動域を広げ、早期回復をサポートします。
5. 持久力・疲労回復
プールでの運動は有酸素運動としても効果的で、血流を促進。
- 滑走後の疲労回復が早くなる。
- むくみや脚のだるさの軽減に効果的。
- 水圧により血液循環が改善され、筋肉に必要な酸素や栄養素が効率よく届くため、翌日の滑走も快適に。
6. ストレス軽減・メンタル強化
水に浮かぶだけでも副交感神経が優位になり、心が落ち着く。
- 緊張やストレスを緩和し、集中力や判断力の向上に繋がる。
- 浮遊感や水流の刺激が心地よい感覚を与え、滑走前のメンタル調整にも最適。
- 水中で呼吸を意識することで、冷静な判断力を養うことも可能です。
7. 柔軟性・バランス感覚向上
水中では、陸上よりも多方向の動きを取りやすく、柔軟性とバランス感覚を自然に鍛えられる。
- パウダーやジブ、ジャンプ時のバランス感覚に直結。
- スノーボードのトリック精度や安定性を高める。
- 水中での反復運動は関節や筋肉を柔軟に保つため、怪我の予防にもつながる。
8. 長期的な健康・持久力
年齢を重ねても続けやすく、心肺機能や筋力を維持できるのがプールの魅力。
- 安全に全身運動ができるため、長期間のスノーボードライフを支える基礎体力づくりに最適。
- 血流改善やストレス軽減、筋力維持によって、生活習慣病リスクの低減や長寿効果も期待。
- 定期的なプール習慣は、年齢に関係なくパフォーマンスを維持する強力な味方です。
まとめ
プールは浮力によって関節に負担をかけず、全身の筋力・心肺機能・柔軟性・バランス感覚・メンタル・リハビリ効果まで、スノーボーダーに必要な要素を総合的に鍛えられる万能トレーニングです。
週1回の水泳でも十分な効果が得られ、浮遊感や水流の心地よさはメンタルのリセットにも最適。スノーボードをより長く、より安全に楽しむための習慣として、ぜひプールトレーニングを取り入れてみましょう。
泳ぎが苦手な方は、水中ウォーキングやビート板を使ったバタ足から始めてもOK。通ううちに楽しくなり、自然と泳げるようになります。特に身体が疲れやすくなった年齢の方には超おすすめです。


飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴は40シーズンを超え、約20年にわたり雑誌、ビデオ、ウェブなどを通じてハウツー記事の発信に取り組んできた。
1990年代を代表するスノーボード専門誌『SNOWing』では、「ハウツー天使」というコラムを執筆。季刊誌という発行ペースの中で100回以上の連載を達成し、金字塔を打ち立てた。『SnowBoarder』誌でも初期からハウツーコーナーを担当し、中でも読者へのアドバイスコーナー「ドクタービーバー」は大人気となった。
自身が監修・出演したハウツービデオやハウツー本も大ヒットし、1990年代のスノーボードブームを支える存在となった。
現在はカナダ・ウィスラーを拠点に、インストラクターとして世界中の人にスノーボードの魅力を伝え続けている。
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。

