
中国のスノーシーンが、いま世界で最も勢いを増している。
アメリカのスノーメディア「SnowBrains」が9月25日に公開した記事によると、中国の2024-25シーズンのスキー・スノーボード来場者数は2,610万人に達し、日本(2,440万人)やスイス(2,310万人)を上回ったという。
この数字は、2016年に「中国スキー産業白書」が初めて発表されて以来、過去最高。
前年比12.9%増という成長率は、北米の好景気期にも匹敵する勢いだ。
背景には、2022年の北京冬季オリンピックを契機に広がった“ウィンタースポーツ熱”がある。
中国スノーボーダーが全体の7割
SnowBrainsの記事で最も注目すべきは、来場者の約70%がスノーボーダーだったというデータだ。
これは驚異的な比率であり、アメリカやヨーロッパではスノーボーダーの割合が30%前後であることを考えると、中国は“スノーボード大国”へ向かって進化しているとも言える。
学習のしやすさやファッション性、SNS映えするアクティブなイメージなどが、新規参加者をスノーボードへ引き寄せているのだろう。
中国では「Burton」が最も人気のブランドで、Salomon、Nitroが続くという。
スノーボードを中心としたカルチャーが一気に根付いている。
一方、日本はどうか
SnowBrainsの記事では、日本とアメリカのスノーボーダー比率を「30〜33%程度」としているが、これは明確に誤りだ。
日本国内では、すでに2000年代以降スノーボーダーがスキーヤーを上回っており、レジャー白書などの調査でもスノーボーダー比率は50〜60%。
ゲレンデの光景を見ても、若年層の中心は圧倒的にスノーボーダーである。
つまり、中国の「スノーボーダー7割」というデータは、日本の現状とそれほど遠くない。
むしろ「日本がかつて経験したブームを、中国がいま体験している」とも言える。ただ日本よりも人口が圧倒的に多い中国だけに、今後ますますスノー人口が増える可能性を秘めている。
室内スキー場ブームが支える成長
中国のスキー人口を支えているのが、急増する屋内スキー施設だ。
現在、国内には66カ所の屋内スキーセンターがあり、そのうち上海の「L+SNOW」やハルビンの「BONSKI」は世界最大級。
2024-25シーズンには、この2施設だけで560万人の来場者を記録した。
この数字は、国内総滑走数の約22%にあたる。
積雪量や標高の制約を人工雪で補い、南部の都市部でもスノーボードが楽しめる環境が整備されている。
日本の「スノーヴァ」や「狭山スキー場」と比べると、“桁違い” と言ってよいレベルだ。
日本のスノーボード業界へのヒント
中国市場の爆発的な拡大は、アジア全体のウィンタースポーツシーンに新しい波をもたらしている。
特に、スノーボード文化を先に確立した日本にとっては、チャンスでもある。
・日本ブランドのノウハウや技術を中国へ発信する
・アジア圏ライダーの交流イベントを企画する
・中国人スノーボーダーのツーリズムを取り込む
といった方向性は、業界にとって大きな可能性を秘めている。
引用・出典
本記事のデータおよび引用は以下のSnowBrainsの記事を参考にしています。
Source: SnowBrains – “China’s Ski Industry Continues Impressive Growth” (September 25, 2025)
https://snowbrains.com/chinas-ski-industry-continues-impressive-growth/
また、日本国内のスノーボーダー比率はレジャー白書・SIAデータを参考にしています。