ゴンドラ派?チェア派?スキー場リフトの知られざる進化と特徴

広告 five  

文:飯田房貴 @fusakidmk

スキーやスノーボードを楽しむとき、なくてはならない存在が「リフト」。
けれど、リフトにはいくつもの種類があり、それぞれに役割や快適さの違いがあることをご存じでしょうか?

リフトを知れば、ゲレンデでの体験がちょっと違って見えるかもしれません。

広告

初心者の味方「サーフェスリフト」

ゲレンデの下でよく見かけるマジックカーペット。海外ではロープトウやTバーもまだ現役ですが、日本ではほとんど見かけません。私は90年頃にニュージーランドのマウントハットに行った時、下から頂上までTバーで驚きました。現地のスノーボーダーはTバーに乗りながらタバコを吸うほど普段使いで、これまた驚き!

サーフェスリフトは初心者や子どもでも安心して使える手軽さが魅力です。設置コストも安く、雪や風にも強いのが特徴。ただし距離が長いと疲れてしまうので、主に練習用や短距離移動向けです。

(Tバーにはドラマがあります。私はこれまで数多くの喜劇を見て来ました。)

定番「固定グリップチェアリフト」

昔ながらのチェアリフトで、常に同じ速度で運行するため、乗り降りは簡単。シンプルで維持費も安く、今でも中小規模のスキー場では大活躍です。ただし速度は遅めで、寒い日にはじっと座っているのが少しつらいこともあります。

日本の固定グリップチェアには、シングルチェアもあり、チェアをハングするためのバーが付いています。怖い人はこのバーを手で回すようにしてつかむこともありますが、私も昔、仲間と一緒に乗ったとき、「怖くないことを見せるぞ」と、あえてバーに手を回さずに座っていました。シングルチェアは日本独特の存在で、海外の人はとても珍しがり、驚くこともあります。シングルチェアならではの、ちょっとスリリングな思い出です。

(日本のシングルチェアは、海外の人にとって憧れでもあり、また怖い対象にもなっています。)

現代の主力「高速リフト(脱着式チェア)」

近年の人気リゾートには欠かせない存在。乗降時は椅子がケーブルから外れてゆっくり動き、走り出すとスピードアップします。安全で効率的に輸送できるため、リフト待ち時間を短縮できるのも魅力です。

ただし、初心者の方は乗降時に転ばないよう注意が必要です。チェアが来る勢いに慣れていないとバランスを崩しやすいため、係員の指示に従い、リラックスして乗ることが大切です。

また、快適さを重視するなら迷わずこのタイプを選びたいですが、風や寒さに対してはゴンドラほど防御力はないため、防寒対策も忘れずに。リフト下を眺めながら滑走ルートの確認ができるのも、チェアリフトならではの楽しみです。

(昨シーズン、私が見た超驚きの光景。なんと6人乗りのチェアに、7人も乗っているのです!高速チェアならではのアクシデント。)

快適さ抜群「ゴンドラ」

完全に密閉されたキャビンで、寒さを気にせず移動できるゴンドラ。仲間とおしゃべりしながら山頂まで行ける快適さは格別です。長距離輸送には最適ですが、スキー板を外す必要があるので短距離だとちょっと面倒に感じる人も。「景色を楽しむならゴンドラ」と覚えておきましょう。

ウィスラーでは、ゴンドラを使わずにリフトを乗り継いでアルパインに行くことも可能です。ただし、多くの人は快適さや寒さ対策の理由からゴンドラを選びます。また、ゴンドラのキャビン内では座ってゆったり休めるため、滑走の合間に疲れをリフレッシュできるのも大きなメリットです。

(強風や雨の日でも、マイナス20度のような激寒い日でも、いつでも快適なゴンドラがあれば、いつでも快適にスキー、スノーボードが楽しめます。)

特殊なリフトたち(海外ならでは!)

日本ではまず見かけないユニークなリフトも、海外のリゾートでは現役です。

  • カブリオレ(Cabriolet):屋根のない立ち乗り型。村や駐車場とベースエリアを結ぶことが多く、風を感じながら乗る体験はまるでアトラクション。
  • チョンドラ(Chondola):チェアとゴンドラが混ざったハイブリッドタイプ。珍しい存在ですが、乗り物好きにはたまりません。
  • トラムウェイ(Tramway):100人以上を一気に運ぶ巨大キャビン。アルプスや北米の大規模リゾートで活躍し、まるで遊園地のアトラクションのような体験が味わえます。

海外旅行ならではの「リフト体験」を楽しみたい人は、こうした特殊リフトもぜひチェックしてみてください。

(世界にはさまざまなリフトやゴンドラがある。電車を撮る人を「撮り鉄」というけれど、将来は「リフト鉄」や「ゴンドラ鉄」が現れるかも!?)

スキー場リフト・ゴンドラの歴史と種類

年代種類特徴主な用途・補足
1930年代トウリフト(ロープトウ)ロープに摑まって引っ張られる簡単なリフト初心者や練習用、短距離移動向け。日本ではほとんど見かけない
1940〜50年代Tバーリフト2人乗りや1人乗り用、バーで引っ張られる海外ではまだ現役、初心者や子どもも安心。距離が長いと疲れる
1950年代固定グリップチェアリフト常に同じ速度で運行、シンプルで維持費安中小規模のスキー場で多い。シングルチェアは日本独特で海外では珍しい
1970年代脱着式高速チェアリフト乗降時はゆっくり、走行時は高速大規模リゾートの主力。効率よく輸送でき、快適だが初心者は乗降時注意
1980年代ゴンドラ完全密閉キャビン、長距離輸送に最適景色を楽しみながら移動可能。短距離は板を外す手間あり
1990年代〜特殊リフト(カブリオレ、チャンドラ、トラムウェイ)ハイブリッドや大型キャビン、屋根なしタイプなど主に海外リゾート。観光・輸送・体験型として人気

リフトを知ればスキーがもっと楽しくなる

「今日はゴンドラでのんびり景色を楽しもう」
「せっかくなら最新の高速リフトで効率よく滑ろう」
「レトロな固定リフトで昔ながらの雰囲気を味わいたい」

普段何気なく使っているリフトやゴンドラも、スピード、設置や運営コスト、快適さはそれぞれ違います。その違いを知るだけで、スキー場での体験がぐっと広がります。次のスキー・スノボ旅では、ぜひリフト選びにも注目してみてください。

飯田房貴

1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
ウィスラーではスノーボード・インストラクターとして活動する傍ら、通年で『DMKsnowboard.com』を運営。SandboxやEndeavor Snowboardsなど海外ブランドの日本代理店業務にも携わる。
また、日本最大規模のスノーボードクラブ『DMK CLUB』の創設者でもあり、株式会社フィールドゲート(東京・千代田区)に所属。
1990年代の専門誌全盛期には、年間100ページペースで記事執筆・写真撮影を行い、数多くのコンテンツを制作。現在もその豊富な経験と知識を活かし、コラム執筆や情報発信を続けている。
主な著書に、
スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』
スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』などがある。
現在もシーズン中は100日以上山に上がり続け、スノーボード歴は40年(2025年時点)。
2022年には、TBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター』や、講談社FRIDAYデジタルの特集「スノーボードの強豪になった意外な理由」にも登場するなど、専門家としての見識が評価されている。

インスタ:https://www.instagram.com/fusakidmk/

広告