
スノーボードは、仲間と一緒に楽しむと格別です。笑いながら滑ったり、技を教え合ったり、ゲレンデの時間は一層充実します。でも、たまには一人で滑る時間も持ってみませんか?
一人で滑ると、自分のペースで思う存分練習できます。仲間に合わせる必要はありません。ターンの角度やジャンプの感覚、スピードの加減……納得いくまで繰り返し練習することができます。
私はシーズン中、8割以上、ウィスラーのスクールで生徒さんにレッスンをし、またライダーと撮影の仕事をしています。しかし、1週間か2週間に1度ほどは、自分一人で山に上がっています。
一人で滑る時間は集中力を高め、観察力を鍛えるチャンスです!雪面の凹凸やライン取り、フォームの微妙な違いに気づきやすくなり、自分の滑りを客観的に見つめ直せます。仲間と一緒では気づきにくい、細かい改善点を何度も練習できます。自分が納得いくまで!
もちろん、精神的なリフレッシュにも最適です。広がる雪山の静けさ、冷たい空気、滑る自分の音だけ。仲間の声や雑踏から離れ、雪山の中で自分と向き合う時間は、想像以上に心を解きほぐしてくれるでしょう。
リフトやゴンドラで偶然会ったスノーボーダーと話すと、何か良いアイデアが見つかるかもしれません。
一人で滑ることは、新しいチャレンジの場でもあります。安全策に流されず、自分のやりたいラインやトリックに挑戦できます。失敗しても、それはすべて自分の経験となり、確実に成長につながります。仲間の目を気にせず、新しいことに挑戦して転んでも大丈夫。密かに練習したかった“コソ練”にも最適です!
仲間と過ごす時間も大切ですが、一人で滑る時間もまた、スノーボードの楽しさを深める大切な時間。次にゲレンデに行くときは、たまには一人の時間を作ってみませんか?自分と向き合う滑りが、新しい発見と自信を運んでくれるはずです。
以前、私と親交の深かったカナダ人のプロスノーボーダー、シモン・チェンバレンに普段の練習方法を聞いたところ、こう話してくれました。
「適当に一人で滑りに行って、2、3本フリーランして身体を慣らし、パークに入って、リフトに乗る時、知らない人でも仲良くなって、一緒にセッションしたりする」
スノーボードのプロや上手い人は、常に同じレベルの仲間と滑っていると思っていましたが、意外な答えでした。
また、このオフシーズンに埼玉クエストで取材した日本代表の宮村結斗選手も、孤独な時間を大切にしていると、言ってました。友人とセッションすることもありますが、ほとんど一人で滑り、自分のコンディションや天候に合わせて練習時間を決め、目標に向かって繰り返し練習しているそうです。
あなたがスノーボードを好きで、でも一人で滑ることに躊躇しているなら、ぜひ勇気を出して雪山に行ってみてください。そこには誰にも束縛されない、自由な景色が広がっています。

一人で滑るスノーボードのメリット
- 自分のペースで練習できる
仲間と滑るとペースを合わせたり、休憩のタイミングを気にしたりすることがあります。一人なら、体力や集中力に合わせて納得いくまで反復練習が可能です。特にターンやジャンプなどの技術向上には最適です。食事内容と時間も自由に選択できます。 - 集中力と観察力が上がる
周囲に気を取られず、自分のフォームや雪面の状況に集中できます。自分の滑りを客観的に観察しやすくなるため、細かい修正点にも気づきやすくなります。 - 自己発見・チャレンジの機会
仲間と一緒にいると安全策や流行の滑り方に流されがちです。一人で滑ると、自分が本当にやりたいラインやトリックに挑戦しやすく、新しい発見や成長につながります。 - 精神的なリフレッシュ
静かな雪山で自分と向き合う時間は、心を解きほぐし、ストレス解消やリフレッシュにもつながります。 - スケジュール調整が自由
仲間の予定に左右されず、空いている時間に滑れるため、短時間でも効率的に練習できます。 - 自己管理能力の向上
装備や休憩、体調管理も自分で行う必要があります。この経験は雪上だけでなく、日常生活でも役立つ自己管理能力を高めるトレーニングになります。

飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴は41シーズンを超え、約20年にわたり雑誌、ビデオ、ウェブなどを通じてハウツー記事の発信に取り組んできた。
1990年代を代表するスノーボード専門誌『SNOWing』では、「ハウツー天使」というコラムを執筆。季刊誌という発行ペースの中で100回以上の連載を達成し、金字塔を打ち立てた。『SnowBoarder』誌でも初期からハウツーコーナーを担当し、中でも読者へのアドバイスコーナー「ドクタービーバー」は大人気となった。
自身が監修・出演したハウツービデオやハウツー本も大ヒットし、1990年代のスノーボードブームを支える存在となった。
現在はカナダ・ウィスラーを拠点に、インストラクターとして世界中の人にスノーボードの魅力を伝え続けている。
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。

