スキー場とインフルエンサーの“方程式”──アメリカ業界誌『SAM』が探る、新たな関係性

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アメリカのスキー場業界誌『SAM(Ski Area Management)』が2025年3月号で、「インフルエンサー×スキー場」という興味深く現代的なテーマを特集しているので、紹介しよう。

この記事「The Influencer Equation(インフルエンサー方程式)」では、SNSの普及により変化しつつあるスキー場マーケティングにおいて、インフルエンサーとの関係がいかなる価値を持ち得るかに焦点を当てている。

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インフルエンサーは観光客の行動を動かすか?

SAMの記事内では、複数の事例が紹介されている。

たとえば、あるリゾートではフォロワー数の多いインフルエンサーによるストーリー投稿が1万回以上再生されたが、それが実際の来場者増にはつながらなかったという。逆に、地域密着型のマイクロインフルエンサーが地元客を呼び込んだケースも存在する。

このことから、数値的な影響力(フォロワー数、再生回数)のみではなく、インフルエンサーの背景やコンテンツの質が重要であることが明らかとなった。

数値化が困難な「影響力」

マーケティング担当者にとって難しいのは、インフルエンサーとの取り組みが実際のROI(投資対効果)にどうつながっているのかを測定することである。

記事では、多くの担当者が「インフルエンサーとの連携が本当に意味を持っていたのか」について、明確な答えを持てていないという現状を報告している。

さらに、ギャラを受け取ってプロモーションを行うインフルエンサーと、自発的にスキー場の魅力を発信するインフルエンサーでは、信頼性やコンテンツの熱量に大きな差が出ると指摘されている。

成功の鍵は「選び方」と「語れるストーリー」

では、どのようなインフルエンサーと組むべきなのか。SAMの記事では、成功事例に共通するポイントとして以下が挙げられている。

  • スキー場のブランドや価値観と親和性のあるライフスタイルを持つこと
  • 自然体で高品質な写真・動画を継続的に発信していること
  • ウィンタースポーツへの理解と愛情が感じられること

つまり、単なる知名度ではなく、スキー場が伝えたい「ストーリー」を代弁できる人物かどうかが鍵を握っている。

日本のスキー場にも応用可能か?

このような議論は、アメリカのスキー業界に限った話ではない。日本においても、インバウンド需要の回復や若年層のウィンタースポーツ離れへの対策が急務となる中、インフルエンサーとの連携は今後ますます注目される領域である。

しかし、海外の成功事例をそのまま模倣するだけでは意味がない。スキー場のローカル性や文化、利用者層を理解したうえで、誰とどう組むかという「戦略」が求められるだろう。

結論

『Ski Area Management』による今回の特集は、「インフルエンサー×スキー場」というテーマに対して、現場の実感とデータに基づいた冷静な分析を示している。

今後、日本のスキー場がマーケティング戦略を構築していくうえでも、インフルエンサーとの関係性を再定義し、「誰が語るべきか」「何を伝えるべきか」という問いに対する明確な答えが求められてくるはずである。

※元記事:
The Influencer Equation – Ski Area Management(SAM) March 2025
https://www.saminfo.com/archives/2020-2029/2025/march-2025/the-influencer-equation

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