
ショーン・ホワイトが新たに設立したプロスノーボーダーの大会「THE SNOW LEAGUE」。その記念すべき初代王者に輝いたのは、男子ハーフパイプの戸塚優斗、女子ハーフパイプの冨田せなだった。
この大会は、プロスノーボーダーが他のプロスポーツ同様に大きな賞金を獲得できる場を作りたいというショーンの思いから始まった。ファーストシーズンは来年3月までに計4大会が予定され、賞金総額は160万ドル(約2億3700万円)と超豪華だ。
初戦はアメリカ・コロラド州アスペンで開催され、男子20名、女子16名の招待選手が参戦。従来の大会とは異なり、まずは4組に分かれてのグループ予選が行われ、その後、各組の上位者が決勝トーナメントへ進出。決勝トーナメントでは、サッカーW杯のような1対1の直接対決で勝敗が決まる方式が採用され、これが大きな見どころとなった。

目次
戸塚優斗が激戦制す!歩夢&流佳との日本人頂上決戦
男子ハーフパイプの決勝トーナメント準決勝では、平野歩夢と戸塚優斗という国内最高峰ライダーによる夢の対決が実現。
最初に滑ったのは戸塚優斗。スイッチアーリーウープバックサイドロデオノーズグラブで入り、スイッチバックサイドダブルコーク1080、バックサイド900、フロントサイドダブルコーク1440インディ、鮮やかにキャブ1080トラックドライバーでフィニッシュ。
通常のワールドカップではここでスコアが出るが、このスノーリーグでは対戦相手が滑り終わった時点で得点が発表されるため、この時点で優斗のスコアは不明。しかし、ハイレベルなランでジャッジに強くアピールした。
続いて登場したのは平野歩夢。伝家の宝刀ともいえるフロントサイドトリプルコーク1440トラックドライバーを皮切りに、キャブダブルコーク1440、フロントサイドダブルコーク1260インディ、バックサイド900、フロントサイドダブルコーク1080トラックドライバーという黄金ルーティーンを完成。
回転数の多さから高得点が期待されたが、ジャッジの評価は…
戸塚優斗 94.5点
平野歩夢 92.2点
おそらく、優斗のスイッチアーリーウープバックサイドロデオを含む5つのトリックのバラエティが高く評価されたのだろう。
しかし戦いはまだ終わらない。準決勝2本目、逆転を狙う歩夢はフロントサイドトリプルコーク1440トラックドライバーからスタートし、3発目にはスタイリッシュなクリプラーメソッドを放った。バラエティに富んだ構成だったが、着地でバランスを崩し得点を伸ばせず。
結果は83.0対78.7で優斗が歩夢を破り、決勝進出を果たした。
決勝では、準決勝でアレッサンドロ・バルビエリ(アメリカ)を下した平野流佳と戸塚優斗が対戦。今季のハーフパイプ総合チャンピオンであり、クリスタルグローブを獲得した平野流佳との一騎打ちとなった。
決勝も最初にドロップしたのは戸塚優斗。準決勝同様にスイッチアーリーウープバックサイドロデオノーズグラブから入り、最後には大技フロントサイドトリプルコーク1440も披露。一発目のアーリーウープから終始高さのあるランで、持ち前の爆発力を発揮し、ダイナミックな滑りを見せた。これで95.5点というハイスコアをマーク。
後に滑った流佳も91.0点という素晴らしいスコアをマークしたが、優斗には届かなかった。
2本目では優斗が完璧なランを決めたのに対し、流佳は途中で転倒。これにより、優斗が初代王者の座を手にした。
これまで見慣れてきたXゲームス、ワールドカップ、オリンピックとは違い、滑る本数が増え、選手にとってより過酷な戦いとなった。優勝した優斗は「長い一日、たくさん滑った」と振り返る。特に準決勝での歩夢との対戦は相当なプレッシャーだったはずだ。その中で、北京オリンピック覇者の歩夢、そしてシーズン王者の流佳を破ったことは、優斗にとって大きな自信となったに違いない。2026年ミラノ・コルティナオリンピックに向けて、さらなる飛躍が期待される。
準決勝で優斗に敗れた歩夢は、3位決定戦でアメリカのアレッサンドロ・バルビエリを破り、表彰台に登った。これで日本男子勢は、表彰台独占に成功!!
The Snow League アメリカ/アスペン大会 男子ハーフパイプ結果
1位 戸塚優斗(日本)
2位 平野流佳(日本)
3位 平野歩夢(日本)

冨田せな、白熱の接戦を制し初代女王に!
女子ハーフパイプ決勝は、準決勝でチェ・ガオン(韓国)を破った冨田せなと、小野光希を下したマディ・マストロ(アメリカ)が対戦。新リーグ初代女王の座をかけた激しい戦いが繰り広げられた。
1本目、冨田せなが安定したランで好スタートを切ると、2本目ではマディが完璧な滑りを見せ、スコアは1対1のタイに。優勝の行方は最終3本目へと持ち越された。
迎えた運命の3本目、冨田せなはフロントサイド1080テールグラブを成功させ、安定感のある滑りで会場を沸かせる。一方、マディも得意のダブルクリップラーインディ、バックサイド900ミュートを決めたが、最後のトリックでわずかに着地ミス。結果、78.5対78.0という僅差で冨田せなが勝利し、記念すべきスノーリーグ初代女王に輝いた。
試合後、冨田は「新たなリーグの初戦で優勝できたことは大きな意味がある」と感極まった様子でコメント。W杯最終戦での初優勝に続き、新リーグでも実力を証明した。
なお、小野光希は3位決定戦で惜しくも敗れ、4位という結果となった。
The Snow League アメリカ/アスペン大会 男子ハーフパイプ結果
1位 冨田せな(日本)
2位 マディ・マストロ(アメリカ)
3位 チェ・ガオン(韓国)

新フォーマットで開催されたTHE SNOW LEAGUEの記念すべき初戦では、男子は日本勢が表彰台を独占し、女子は冨田せなが僅差での優勝を果たすなど、見応えのある大会となった。
一方、男子のスコッティ・ジェームス(オーストラリア)、女子のクロエ・キム(アメリカ)といったトップ選手が不在だったのは残念だった。今後、THE SNOW LEAGUEがさらなる発展を遂げるためには、世界最強の選手たちが集結することが不可欠だ。次戦以降の展開にも注目が集まる。