先日、レッスン中に生徒さんからこんな質問を受けました。
「よく、身体を深く倒して滑っている写真や映像を見かけますが、どうやったらあんな風に滑れるようになるんですか?」
その質問に対し、私は「簡単ですよ!早速やってみましょう」と返答し、いわゆる“ビッテリーターン”を練習するレッスンを始めました。
まず取り組んでもらったのは、斜滑降で小さな姿勢を取る練習です。具体的には以下のような動きを試してもらいました:
- ヒールサイド: 後ろの手で板をインディのようにグラブする、または手を後ろ膝付近に添える。
- トゥサイド: 前の手を前足のハイバックに触れる、または膝付近をタッチする。
こうした「グラブターン」のような姿勢でトラバースを行うことで、身体を低くする感覚に慣れてもらいます。ただし注意点として、低すぎる姿勢やグラブを意識しすぎて板がズレないように、カービングの基本姿勢を意識することが重要です。
次に、カービングしながら山側に向かって切り上げる動作を加え、J字を描くような「Jターン」を練習します。ここまで慣れてきた段階で、トゥサイドではハイバックに添えた手をほぼそのままの位置に保ちながら、もう一方の手を雪面やその近くに触れるよう指導しました。
これにより、大まかではありますが、カービングターンをしながら手を雪面に近づける“ビッテリーターン”の形が徐々に完成していきます。
その日のレッスンでは、まず身体を倒し込むのではなく、トゥサイドでもヒールサイドでもカービングを意識しつつ、手を雪面に近づける感覚を身につける練習を中心に行いました。そして、生徒さんが感覚に慣れてきた頃、私は「写真を撮りますよ」と声をかけ、スマートフォンを構えました。
最初はアクションする位置が遠かったりと、撮影に慣れていない様子でしたが、何度もトライするうちにカメラに近づき、迫力ある“ビッテリーターン風”の姿勢を収めることができました。その写真を見た生徒さんは大喜び。自分の滑りが形になった瞬間の達成感を感じている様子でした。
写真がスノーボードを上達させる理由
このように、自分が「カッコいい」と思える写真を撮影することは、スノーボードにおけるモチベーションアップにつながります。そして何より、その理想の姿を追い求めることで技術が向上していきます。
普段SNSなどでかっこいい映像や写真を発信しているライダーたちも、その一瞬を切り取るために日々練習を重ねています。憧れの一枚を撮るための情熱は、スノーボードを上達させる大きな力になるのです。
今シーズンは、どんな写真を撮りたいかをイメージし、それに向けてチャレンジしてみてください。そのプロセスそのものが、あなたのスノーボードを一段と引き上げてくれるはずです。
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飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴40シーズン。その大半を雑誌、ビデオ、ウェブなど、スノーボードメディアでのハウツー記事の発信に費やしている。
1990年代を代表するスノーボード専門誌『SNOWing』では、「ハウツー天使」というハウツーコラムを執筆。季刊誌という環境下で100回以上の連載を達成し、金字塔を打ち立てる。『SnowBoarder』誌でも初期からハウツーコーナーを担当し、その中でも読者へのアドバイスコーナー「ドクタービーバー」は大人気となった。
また、自身でディレクションし出演したハウツービデオやハウツー本も大ヒットし、1990年代のスノーボードブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボードクラブ「DMK Snowboard Club」の責任者として活動し、レッスンを行っている。普段はカナダ・ウィスラーでインストラクターとして、多くの人にスノーボードの魅力を伝え続けている。2016-17シーズンには、ウィスラーのインストラクターMVPを受賞。
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。