文: 井田 聡
僕は前のコラムでも書きましたが先シーズン、ブラッコムのテーブルで右膝靭帯断裂というケガをしてしまい、シーズン半ばで仕方なく日本に帰ることになりました。そして入院、手術を行い、今は完璧ではないけど前のように滑れるようになりました。あの時、僕は調子に乗っていて、確実に転ばない自信がありました。だから、おもいっきり直滑ってアプローチし、ランディングの長さなど考えないで飛べるだけ飛んで、みんなを驚かそうと思っていました。みんなといっても別に、大した数のギャラリーがいるわけでもなく、そのジャンプ周辺にいた僕の仲間2、3名とリフトに乗っている人たち(?)ぐらいでしたが。というか、ほとんどいなかった、と言っていいでしょう。それなのになぜか、何を勘違いしたのか自分がうまくなったと過信してしまいやっちゃったワケです。よーするにバカです。でも入院中いろいろなことを考え、スノーボードをすることを真剣に考えることができてよかったと思ってます。ケガをすることはマイナスかもしれないけど、自分を考え直したりできるので、初めはマイナスだとは感じるけどトータルでプラスマイナス0かなとも今は思います。
でも、こんなことを書いたからってケガしたやつが偉いわけじゃなくて、僕が一番凄いと思うスノーボーダーはケガをしない人。自分のことをよく知っていて正しい判断が下せる人。地味だし全然目立たないけど凄いことだと思います。どんなにぶっ飛んでる人よりも断然にカッコいい。
最近いろいろな友達とすべる機会があって、滑りを見てると恐ろしくなる人もいる。朝方のカチカチなところで初めから猛スピードで飛んで行く。
そして凄く派手なコケ方をしてる人。しかもシーズン初めの11月から。自分も以前、その人そのものだったから気持ちはわからなくもないけど・・・。
僕は以前、休憩を取るのが凄く嫌だった。「オレがこうして休んでる間にも、コツコツ練習して着々と腕を上げてるやつがいるんじゃないか? 休んでていいのか?」と思っていたから。でも、今考えればいきなりそんなうまくなるやつもあまりいないし、みんなある程度の段階を踏みながらうまくなっている。だから「気楽に楽しみながら滑ることもうまくなるコツなんだな」と最近は思う。一日中だらだら滑るんだったら、午前中だけ集中して滑って昼から上がって温泉でも行くのもアリだなと思えるようになったのです。単にオヤジ化してきただけなのかもしれないけど(笑)。
昔、シーズン初めから飛ばしていた頃は「みんなビビってんのか?ついて来いよ!」ぐらいのことを思っていたけど、今では「まだ先が長いんだからテンション上がるのもわかるけど気楽にいこうよ」と思えるようになった。だって、もしここでケガしたらどーすんの?滑れなくなるよ! 軽いケガならまだ治せばいいけど、もし治らないケガで滑れなくなっちゃたりとか、生死にかかわることになったら・・・。
先日、僕の知り合いの弟さんがスノーボードによる事故で亡くなってしまった。僕はその弟さんとはいっしょに滑ったことはなかったけどショックを受け、なんとも言えない気持ちになりました。友達の話では、前の日にお酒を飲んで明日スノーボードに行くと楽しそうに話していたそうだ。
くどいようだけど、ケガや事故には十分に気をつけてください。ホント最高にカッコ悪いです。スノーボードでケガしたと自慢げに話す人を自分も含めて、です! よくそういう人を見かけますけど、はっきりいってダサダサです。本当に気をつけてください。「今のエアー決まったー!みんな見てくれた?」と思っていても、残念ながら自分が思ってるほど他人は自分を気にしていません(笑)。少し寂しいですが。
最後に僕の知り合いの弟さんがスノーボードの事故によって亡くなってしまったことに心よりご冥福申し上げます。これを読んでくれた人、すべてのスノーボーダーのケガと事故が少しでも減りますように!心から願っています。