文:飯田房貴
先日、BURTONが提唱しているLTRプログラム(注:安全に最速に初心者が上達できるプログラム)の撮影のため、ウィスラーの初心者エリアがいる一帯に行った。このエリアは、一面緩斜面が広がり、コース幅もひじょうに広く、初心者が最初のターンをするのに適している。多くのインストラクターたちが快晴の下、初めてスノーボードにチャレンジする人たちを楽しそうに指導していた。
この光景を見て、僕は7年ほど前に行ったハワイへの新婚旅行でサーフィンを習ったことを思い出した。マウイ島にあるサーフィンの初心者用ビーチとも言えるところで、そこでサーフィン・スクールに入りサーフィンにチャレンジしたのだ。ボードは安全に上達できる素材(注:発泡スチロールのような感じ)で立ちやすいように長めにできていて、また波は遠くの方から穏やかに長い時間のものがやって来る。一度、ボードの上に立てばずっと波に乗っていられるので、ひじょうに気持ち良かったし、何しろ初めて波に乗った感覚に感動してしまった。沖に行きやすいようカレントもわかりやすくて、多くの初心者サーファーたちがそこに連なってポイントまでパドリングしていた。あの日、あの場所で波の上に立てなかった者がいない、それくらい初心者にとってはパラダイスな環境だった。
ウィスラーの初心者が集まるエリアも、初めてスノーボードを行う者にとってはパラダイスだった。その要点を紹介すると。
1)初心者がプレッシャーを感じにくい緩斜面で広いバーン
2)同じシチュエーション(初心者)が一同に集えるエリア
※他にスピードを出して滑ってくる暴走スキーヤー&スノーボーダーは来ない場所
3)上に運んでくれるカーペット式リフト
※そのカーペットに乗れば、上まで運んでくれる
4)リフトの降り方を練習できるチェア
広いバーンなどは、カナダならではの環境であるが、初心者が集まるエリアに暴走スキーヤー&スノーボーダーが来ないよう大きなサインやボード、強制的にスピードを落とさせるフェンスのようなものは日本でも実現が可能だし、さらに初心者が気軽にハイクのような気持ちで10メートルから20メートルほどの距離を上まで運んでくれるカーペット式リフトも置くことは可能だ。またリフトの降り方を学べるチェアを置くことも可能だろう。
(ベルトコンベアのように気軽にビギナー・ライダーたちを運ぶカーペット式リフト。初心者には大変ありがたいものである)
日本を見れば、そういった施設があるところはひじょうに少ないと思う。
その他、日本を取り巻く初心者の環境は、さらに辛い事実ばかりだ。初めてスノーボードをやる人が満足できない安物レンタル用具。また、上達論ばかりふんだんに入れ、肝心の生徒を楽しますという基本を知らないインストラクターたち。
(注釈:カナダのメソッドでは、生徒を上達させることより楽しますことを主眼に入れ、そのインストラクターのメソッドが制作され、研究されている。すべてのカナダのインストラクターはプロフェッショナルなイントラとして、どのように生徒に接するべきかモラムも踏まえて指導されている。)
今、日本のスノーボード業界は、新規参入者がひじょうに少ないことが問題となり、どんどんと業界が縮小されている懸念があるが、今回のコラムで伝えたことがしっかりとできていない、と思う。
どちらかと言うと、雑誌はコア層に主眼が置かれ、大切な底辺層拡大ということを忘れがちのように思われるが、スノーリゾートとまた僕たち含めたメディア関係者、さらにはその関連業者も含めて、真剣に初心者を受け入れる環境を考え、そして改善できるように行動すべきだろう。