k祭りパート2!inアルツ磐梯(後編)

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こうしていつも通りの和やかな宴会となったが、しかし今回はキャンプ開始の当初から、珍客が来るとの噂がささやかれている。いつもの年なら浪人ライダーだが、今年は…?
そういえば今朝、アルツのカフェテリアにも現れた黄色いマスクの男がいた。彼の名はマツモト・レンジャー。地球から遠く離れているらしいマツモト・ワックス星から迷えるワックス初心者を救いに、また面倒くさがり屋のぐーたら・ボーダーを救いに、愛と勇気と使命をその熱き胸にこの地上に降り立った正義のワックス戦士だ。彼は彼の救いを求めるすべての人々のもとに昼夜を問わず駆けつける。そのマツモト・レンジャーが今夜この宿に現れるというのか!?

和やかな宴会場の照明が突然消えた。これはマツモト・レンジャーが現れる前兆に違いない。「キャー!助けてー!マツモト・レンジャ~!!」という女の子の叫びがあがる。すると廊下を隔てる磨りガラスの引き戸に黄色いシルエットが現れた。なおも助けを求める女の子の声。その声に応えるようにスルリと引き戸を引きあけて登場したのは黄色いファイティング・スーツに身を包んだマツモト・レンジャーその人だった。みんなの歓迎に片手を挙げて応えるマツモト・レンジャー。だがマツモト・レンジャーはその任務の特殊性ゆえ一切の言葉を話さない。そこでクラブの中でもなかなかのエンターティナーで知られているリュウさんがその通訳に当たることになった。いろいろな質問が繰り出されるうちにマツモト・レンジャーが実は一人ではないことが判明した。イエローの他にレッド、ブルー、グリーン、ホワイトがいるらしい。「レッド、ブルー、グリーン、…ホワイト?」首を傾げるみんなに対し、それがワックスの色と呼応していることをゼスチャーで示すマツモト・レンジャー。「おおおー…」感心したみんなからどよめきにも似た声が上がる。「それじゃ、黄色は一番暖かいじゃないですか?」とレンジャーのスーツの色を指摘するリュウさんに、自分の胸を指差すレンジャー。そうかハートが温かいというのだ。


左)ガラスの向こうに黄色い影・・・、何者かが現れた!
右)遂に噂の新ヒーロー、マツモト・レンジャー 登場だ~!

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そのマツモト・レンジャーから今夜はプレゼントがあった。浪人3でも紹介している丸い筒に60cmくらいの板を載せてバランスを取る練習ができる筒と板のセットだ。全員分はないのでほしい人だけレンジャーとのジャンケンで勝負した。
レンジャーは身体を張っていろいろなパフォーマンスとともにサービスしてくれたが、そのレンジャーのファイティング・スーツにいつしかうっすらと汗がにじんできた。残念だがそろそろマツモト・レンジャーの地上にいられる限界の時間が来てしまったようだ。みんなの「ありがとう!マツモト・レンジャー!」の声に送られ、レンジャーは疲れた身体を引きずりながら宴会場の廊下に派手につまずいてから消えていった。

しつこいようだがdmk祭りの宴会はこれでは終わらない。実は宴会の途中で私とアヤ会長とリュウさんで悪巧みをし、『みんなへのプレゼント』と称してカンジくんとムラッチョさんの板を宴会場に持ってきてしまおうと計画していた。そうして当惑する2人を見て笑って、「冗談でーす」と終わりにしようと思っていたのだ。「カンジくんに悪いんじゃないの?」と少し動揺を見せるリュウさんの背中を押し切り、宴会場に板を持ち込んだ。「実はこれも今回のプレゼントでーす」の声に、予想通り「えー!なんだよそれ!?」「ビックリしたー」と驚くムラッチョさんとカンジくん。ところがカンジくんは「この板はダメだけど、家にある別のだったらいいですよ」と言う。戸惑ったのはこっちだった。「この板は中古だし、新しいのが家にあるんで…。僕は乗ってないから出してもいいですよ。そっかー、持ってくれば良かったですねー…」と逆にちょっぴり申し訳なさそうにしている。カンジくんごめん!決して申し訳なくなんて思わなくていいんです!


左)マツモトレンジャーからバランス・マシーンの筒と板のプレゼント
右)カンジくんの板の争奪戦で見事に勝ち抜いたリュウさんがその喜びでボードを高々く上げる

ともかくノリにしろ何にしろカンジくんがいいと言うんだからもらってしまおう、ということでここでまたもや熱い熱い争奪戦。最終的にこの最高の幸運を手にしたのはなんと悪巧み一味のリュウさんになった。もともとBX畑のリュウさんは遊べるこの板が本当にほしかったらしく、かなり恐縮しながらも興奮気味に喜びをかみしめていた。

このあとも会場の一角では変身前のマツモト・レンジャーではと噂されているワックス・マスター・マスミさんによる『アイロンがなくても良く滑るワックス講習会』が開催され、普段あまり板の手入れをしないぐーたらなボーダーへ救いの手を差し伸べ、別の一角ではコーキくんとカンジくんがレンジャーがプレゼントしていった筒を横一列にずらっと並べて板で乗りこなす遊びをしていたり、それぞれに楽しい時間を過ごした。

2日目。今日はニッポン・オープンのスーパー・パイプ・ファイナルの日。 10時からの女子の決勝には橋本ミッチャンが残っている。なんとなく焦る気持ちから、宿からのバスは8時15分に発車。チェックアウトのために荷物の移動があったりでバタバタと支度をして、ドタドタとバスに乗り込みアルツへ向かう。「あ、ゴーグル忘れた」「あれ?ケータイどこだっけ?」慌しかった支度のせいで2、3人が忘れ物をしている。でもそのためにバスを戻すわけにはいかない。ま、仕方ない、とあきらめているところにアヤ会長の携帯が鳴った。次の瞬間「え!マスミさん!?忘れちゃった!?」アヤ会長の素っ頓狂な叫び声がバスの中に鳴り響いた。見回すとバスの中にマスミさんの姿がないのである。当然全員乗っていると思って、誰も確認しなかったために、あのマスミさんを宿に忘れてきてしまったのだ。嗚呼、昨日あんなに頑張ってくれたマスミさんを忘れてくるなんて…。これはさすがにUターンだ!宿が近づくと、宿の前の雪道にイジケて座り込んでいるマスミさんの青いウエアが見えてきた。「マスミさーん!ごめんねー!!」みんなに拍手で迎えられたマスミさんだった。

10時からのニッポン・オープン女子スーパー・パイプ決勝は、みんなで応援することになった。ジャム・セッション形式なので選手たちは45分間に入れるだけ入る。12人中日本人選手が9人も残っている。外国人選手もハンナ・テーター、ケリー・クラークなど一度は見てみたいと思っていた、ここ数年ノリにノッてる女の子たちだ。個人的にはケリー・クラークに注目していたけれど、ハンナの900は完璧で、トーラ・ブライトのマック・ツイストのカッコ良さは本当に惚れ惚れするほどクールで、見ていて気持ちがいい。日本勢は予予選からの勝ち上がり組みがかなり強気な滑りをみせ、ベテラン勢を押す勢いだった。我らがミッちゃんも大健闘。あとで知った結果は5位入賞だった。

観戦はミッチャンの応援だけのつもりだったのに、女子を観てしまったら、もう男子を観ずにはいられなかった。女子でこの高さとこの技なら男子はいったいどうなってしまうのだ。男子にはショーン・ホワイトを始め、アンディ・フィンチ、アンティ・アウティなどやはりここ数年、オープン・シリーズ、Xゲームなど名のある大会を荒らしまくっている強豪が顔を揃えている。

そして果たすかなやはり男子は凄かった。 720゜は当たり前1080゜がバンバン出る。高さも長さももの凄い。素人の目しか持っていない私にはもう何回転回しているのかわからない。しかしその中でも群を抜いていたのがアンティ・アウティ。回す回す。勢いが凄い。何だかわからないけどすっごく回した!と思ったら「1260!」ってDJのライオくんが叫ぶ。え?なに?5回転ってこと?1260が360で割っていくつなのかバカな頭で必死に計算する。しかも完璧にメイクしている。ウソ?事前に仕込んできた予備知識でアンティがルックス的にもいい男なのをチェック済み。うーん、やられた(笑)。

だがもう一人凄かったのがショーン・ホワイト。なにしろどんなことをやってもビタビタに決めてくるその着地の安定感は完全に他を抜いていた。パイプの壁に板がピタッと吸い付く。やっぱりベテランの強みなのだろうか。

しかしそれにしてもみんな体力がある。これだけの勢いでメイクしながら後半になればなるほどヒート・アップしてくる。 45分がもの凄く短い。前のライダーがパイプを抜けるのと同時に次のライダーが「待ちきれない」とばかりにスタートしてくる。 前のライダーがベースにいる観客の前を通り過ぎるまで眺めていると、次のライダーがすでにドロップインしているので、うっかりすると見逃してしまうほどのハイ・ペース。最後、競技時間の45分が終わった後にもまだ数本のサービス・ランを見せてくれたライダーが何人もいた。正直、女子の後半には疲れが見えたが、男子ってやっぱり凄いんだなと思った。


左)ジュニア・ジャムに出場するヒナの勇姿。ピースサインでやる気満々
右)いつも心温かい気さくなミッチャンとハッピー記念撮影

誰が優勝したのか結果が知りたかったが、表彰式は3時半。私たちはもう宿へのバスに乗っていなければいけない時間だ。男子のファイナル観戦は、私はパイプ・サイドで観戦していたが、一部のキャンパーは橋本ミッチャンといっしょにベースの方で観戦していたらしい。さっきまでファイナルで勇姿を見せてくれていたミッチャンと男子のファイナルを観戦できるなんて…。ミッチャンの気さくな心遣いが嬉しいエピソードだ。ちなみにこの大会の入賞結果とカンジくんがプロの目で詳しくレポートしてくれた記事がdmkのwebサイトに2月28日付のニュースとして (http://www.dmksnowboard.com/news/200502.php)に掲載されているので、興味のある人はこちらを見ていただきたい。

今回2日目からほんのちょっとだけ顔をみせてくれたミノル部長と、ここでお別れの都所さん親子とバスの中で閉会式をした。ちなみに菅野家のひなちゃんはジュニア・ジャムに出場していたため、みんなとのお別れの挨拶は朝の時点で済ませた形だった。

帰りのバスの発車前に今度は誰も忘れないようにしっかり確認する。すると…やっぱり一人忘れている。しかし今度はマスミさんではなく、初参加のヤマヒロくんだ。危ない、危ない。慌ててリュウさんが探しに行って、今度こそ忘れ人なく宿に帰ることができた。

ありがたいことにさぎの湯さんでは帰りの温泉も使わせてくれた。西日が差し込む眩しいほどの湯船に観戦で冷えてしまった身体を温めた。キラキラと輝く湯船の中でさっきまでのファイナルの余韻がゆっくり溶け出して、どことなく勇気をもらえたような気分で風呂を出た。

そして、いざ帰りのバスこと移動宴会号へ!朝の食料調達同様、今度はお酒の調達のために運転手さんにお願いしてコンビニに寄ってもらう。それぞれ確保した自分のアルコールを手に、サロン形式に並べられたバスの後部座席に納まった。ここからの宴会の楽しさは本当に格別。この楽しさは実際に体験してみないと、いくら文章で書いても伝わらない。カンジくんがこのキャンプに参加してくれるのは、半分にはこの宴会バスがあるからとも聞くくらいだ。

書いても伝わらない楽しさだが、それでもその一部を紹介すると、今回のターゲットは概ね初参加のイッシー。その攻撃の中心はオヤジ哲学。そして同じく初参加のヤマヒロくんのあだ名がdmkに初の米名『デューク』に決定。さらにリュウさんの圧倒的な威力を持ったちょっぴりわびしい恋心テーマの爆笑トークにはほぼすべてのメンバーが撃沈され、最後にはコーチであるカンジくんまでも年季の入ったお姉さん軍団に容赦なくやっつけられて、フラフラになるという始末だった。

楽しかったけれど南浦和の駅にはあっという間に着いてしまった。このキャンプはニッポン・オープンの観戦を含め初めての企画だったから、スタッフ側にはそれなりの苦労があったと思う。それでもフサキさんがいないのにここまで濃いキャンプができたのはある意味凄い。まぁ考えてみれば、毎年この時期の日本でひどい花粉症に悩まされるフサキさんにとって、今年のこの異常な量の花粉が舞う日本に帰ってこなかったのは、偶然にしろ正解かもしれない。帰ってきたらたぶん即死だったろう。

しかし終わってみればずいぶん流動的なキャンプだった。こんなに流動的に動いて、それでもどうにかまとまって終わることができたのは、すべてみんなの協力と、周りの環境に恵まれたからに他ならない。残念ながら私はバートンの試乗をついに1本できなかったが、今回もバートンの下枝さんに一方ならずお世話になった。またバスの運転手さんと、さぎの湯の方たちにもお礼を言わなくてはならない。そして最後に橋本ミッチャンと田島カンジくん!楽しいキャンプにしてくれて本当にありがとう!!

来年、このキャンプはどんな形になるか分からないけれど、とりあえず今回も成功のうちに数えていいと思う。
シーズンはまだ折り返したばかり。dmkはまだまだキャンプがある。この調子で後半のキャンプに期待したい。

レポーター:森原真知子(愛称:モリッペ)
dmkクラブの創立当時からのレポーターで現在、クラブ専属レポート部長。元々はミナミ・スポーツのフサキのスノーボード・キャンプに来ていたキャンパーだったが、その執筆力やレポート力を買われて元祖dmkレポート担当になる。ちなみにその頃、モリッペはバンドのレポートを書いていた。意外な事実(!?)
当時は、A4サイズの紙レポート時代でそのコピーや宛名書きなど多大なワークを背負っていた。現在は和やかに(?)レポート担当を行っていて、dmkレポート陣の中でもリーダー的な存在となっている。
dmkクラブではムラッチョ顧問やアヤ会長と共に、古株さん。
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