高石周の教えてコーチ!「空中での視界について」

広告 five  

世界の舞台でコーチとして活躍する高石周さんが、スノーボードの上達に関する悩みから、環境の提案など、様々な角度からスノーボーダーの相談に乗ります。
今回は、多くのフリースタイラーが気になる空中での視界について。

news150303e

news131002f

広告

質問者:ryo

初めまして、ブログ拝見させていただいています。
早速なんですが、私は年間平均滑走回数20強くらいの6年目です。
最近とても悩んでいるのが、スピン中の視界についてです。

360までのスピンやフロントフリップなんかは、抜けてからランディングまで見えているのですが、540や720、コークの540や720、バックフリップの時は、抜けた瞬間頭が真っ白になるというか、気づいたらランディングという感じで、ドライブしたり手や尻もちをついたりメイク率が悪いです。
グラブを入れたり、入れようとしたりはできるので、意識はあります。

いろいろなハウツーで目線の送り方などを勉強しても、何も見えて無いので実践できず困っています。
何度も練習して慣れるしか無いのでしょうか…。
空中での視界を得る練習方や意識の仕方はあるのでしょうか?
返信頂けると嬉しいです。

 

news131002g

トリック数が多いですね~!
スピンだけでなくフリップもできるなんて素晴らしいです!

さて、空中で視界をどのように得るのか?


視界は空中での自分の位置、状態を理解する重要な要素ですからね。
確かにこれが見えていない状態では空中でのコントロールも難しくなります。

360などの低回転ではずっと周囲が見えていて空中での状態を把握できている。
しかし回転が速くなったり、縦に回って上を見え上げている状態では雪面が視界から消えてしまうので、空中での状態が把握できない。

低回転で雪面をずっと見ていられるのは納得ですね。
では高回転ではどうしたらいいのか?

人間の空間認知能力には差があります。
高回転でも把握している人はいることでしょう。
例えば体操の内村航平選手なんかは空中で高速に複雑に回りながら、地面の色などで自分の空間的な位置を把握できるそうです。
しかしそこまでの空間認知能力は一般人にはそうそう簡単に持てるものではありませんね。

ではどうしましょう?
内村選手のやっていることに少しヒントがあります。
内村選手はどこを基準に空中バランスを把握しているのか?というところです。
それは「地面を見る」です。

当然だと思われるかもしれませんが、空中に目をやった状態で空間での位置や状態はそう簡単にを把握できないのです。
「ぜったい動かないもの」で「確かにそこにあるもの」を基準にしないと空間での認知は難しいと考えられます。
ある程度は、地面が見えなくとも重力などを感じながら空中での状態を把握するスキルはトランポリンなどで身に付けることは可能です。
しかしそれだけではがっちりと地面にランディングすることは難しいですね。

例えば縦回転で上を向いている時は、重力を感じて自分の状態を把握するしかなく、より確かな空間認知を得られるのは地面が見えたときからとなります。
当然地面が見えてからの方が空間認知は簡単ですから、ずっと見えていたいですよね。
しかし縦回転ではどうしても見えない時間帯はあるわけで、ここはあきらめるしかありません。
ただし次のように考えればどうでしょう?
地面が見えない時間帯を減らして、地面が見える時間帯を増やす。
そうすれば、より空間認知できる時間も長いということになりますよね。
つまりできるだけ速く目線を地面にもって行けば、つまり「ガン見」している時間が長ければ長いほど、空中バランスを整える時間も長くなるということです。

これを横回転(スピン)で考えてみましょう。
まず高回転では初速が速いです。
ここは縦回転で言うところの「上を見上げている状態」と同じことにしましょう。
そうするとここでの視界はあきらめるということになります。
では横回転の場合、どこが縦回転の地面が見える時間帯にあたるでしょう?
それは正面(進行方向、ランディング方向)を見える時ですね。
この正面が見えている時間帯が長いほど、空中バランスを整える「ガン見」の時間も長くなるということです。

例えばFS540の場合、板が180回ったあたりから一気に目線だけ360まで回してしまいます。
FS720の場合も同じです。
ただ540より回転力が強いので、540のように正面を「ガン見」してても下半身だけ回っていくだけですね。
「ガン見」することで回転力も殺して720をぴったりランディングに合わせることができるわけです。

BS540ではどうでしょう?
これは抜けた後に一気に目線を360回すことでランディングの「ガン見」ができますね。
ここで目線と一緒に腰の回転力を止めてしまえば360。
腰の回転力を保ってランディングの「ガン見」を切れば540となるでしょう。
BS720の場合は板が360回った時点で目線を一気に720まで回しこみましょう。
そしてランディング「ガン見」です!
つまり「ガン見」するまでの視界はあきらめるわけですね。
さて、ここまで「ガン見」を基本に話を進めてきましたが、空間認知能力が高ければ、以下のような方法で「ガン見」しなくても空間認知は可能です。

自分を回転の中心として、目線を回転半径2メートルあたりで回しましょう。
低回転であれば誰でもこれで近くも遠くも見えて安定します。
ついでに頭や上半身も起きるので回転軸も立って回しやすいです。
高回転であれば空間でのバランス能力と、この「2メートル半径の目線」で得られる情報を合わせることで、空間認知は確かなものになるでしょう。

参考までに。
私は、7年ほど前にHPナショナルチーム所属だった「渡辺コウダイ」という選手をコーチングしていました。
彼はマックツイストが非常に上手くて、その感覚を聞いたことがあります。
コウダイはびっくりすることに「ランディングぎりぎりまで何にも見えないですよ。怖いんで本番以外ではほとんどやりません。」って言っていたんです!
その当時同じナショナルチームにいた国母選手も同じことを言っていたそうです。
これは「ガン見」は難しいので、空間で重力を感じながらバランスを感じ、あとはランディングしているイメージに合わせているだけ、と言えます。

目線は空中でのバランスをコントロールする大変重要な要素ですが、空中での認知能力も合わせて習得することが大切だと思いますよ。

下記URLから投稿を確認できます。
http://6218.teacup.com/snbw/bbs

 

広告