誰もが憧れる(?)BURTONのライダー担当/峯村 俊之

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フサキ(以下F):何がきっかけで、バートンに勤めるようになったんですか?
峯村(以下M):僕は関東の代理店のライダーで、その時はまだ他の仕事をしていました。バートンでやりたいっていう話をしてたら、たまたま小倉さん(注:バートン・ジャパン社長)に話が通って、アメリカまで行って副社長にあって話が決まったみたいな。

F:アメリカまで行って。へえ、それは凄い。小倉さんの一存では決められなかったんですか?
M:というのは、今ある既存の部署じゃなくて「もの」をつくる商品開発の方だったから。日本には今までなくてその辺のこともあったんです。

F:自分でボードを作りたかったんですか?
M:そうですね。日本人が関わる何かを作りたいと思って。

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F:ライダーとしては、ボードを作るって別のものじゃないですか? ライダーは滑りで魅せたりアドバイスとかするものですから。ボード開発という分野は、好きだったんですか?
M:もともとモノ作りは好きで、それじゃあボードもということで、単純に作ってみたかったんですね。

F:それで決まったのは、何年ぐらい前ですか?
M:それは5年前ですから27才の時ですね。

F:ところで、一部の声で「最近バートンはどんどんフォーラムっぽくなった」と。つまり飛び系ばかりに力を入れているんじゃないか?と言われてるんですけど、どうですか?
M:スノーボードはみんなができるけど、シーンを引っ張ってるのはやっぱり一番成長し続けるているプログレッシブなライダーだっていうのは間違いないと思うんですよね。でもクレイグ・ケリーや、ヨハンのスタイルも凄くスノーボードにとって必要だと思う。だからどれを淘汰するとか関係なくで一番シーンを作ってる子達をフォーカスするべきだと思う。

F:なるほど、今熱い!という部分を押しているということですね。
M:でも、もしバートンがフォーラムだったらクレイグ・ケリーはもうとっくにバートンにはいないし、ヨハンもいないと思う。

F:うん、確かにそうだなあ。
M:トレバーばっかりみたいなのを集めてるって話をされたけど、でもそうじゃない。やっぱりスタイルが違うから。それは、ジェイク・バートン(注:バートン創始者であり代表)も言っていたみたいにスタイルばっかりみせて人に伝わるものであれば、それは若さでもフィールドも関係ないと思う。

F:で、そのジェイクなんですけど社長を辞めてライダーになったって言う話ホントですか?
M:それは2年ぐらい前の話ですね。いわゆる社長だったんですけど、社長を降りて。でも、やることって言ったら、ビジネスっぽい話しかないからライディングも好きだし、実際に毎年全部の商品をジェイクは試してます。

F:えっ、ジェイク自らボードをチェックしているのか! それは、凄い。
M:今、ニュージーランドで試してて、毎年全部の商品を試してます。(注:インタビューは9月に行なわれた)

F:え!ニュージーランド行って全部ですか?
M:ええ、毎年。

F:大した社長だなあ。僕はニュージーランドによく行っていたけど、ジェイク・バートンなんか滑っているのは見たことないけど、どこにいるんだろ?
M:それはパウダーがあって、人もいなかったりするところなので、逆に見かけられないって感じですね。

F:テリエなんかもニュージーに行って、撮影しに行ったっていう話もありますが。
M:そうですね。

F:それとはまた別で。
M:はい。別で。

F:ジェイク・バートンって、カッコいいなあ。
M:ジェイク自身が滑るっていうこと自体を大事にしてるんで、それがやっぱり伝わって行き今のバートンがあると思います。

F:うんうん。興味深い。ところで、多くの人がバートンに勤めたがっているんですけど、何かアドバイスありますか?「世間は甘くないよ」とか「厳しいよ」みたいな、ものでも。
M:いや、そんな難しくないとおもう。

F:えっ、そうなんですか?
M:部署によると思う。

F:例えば英語なんかは大切ですか?
M:なくても、大丈夫かな。基本的には日本語なので。ただ、バートンの場合はグローバルっていうイメージを踏襲するので、日本だけのかけ離れた戦略はしないと思います。例えば、日本だけで売るための日本人モデルのボードは出さない。それってやろうと思えばできるけど、あえてしないというか。NUってボード覚えてますか?

F:いや、知らないです。すみません。
M:去年リリースしたバートン初日本人モデルをNARUとUEが作ったんです。そしてNUはその年に全て完売しました。

F:あー!あー!ありましたね。はいはい。
M:これは2人が先ず、その前の年にSEVENを担当して、その後に2人の滑りと物作りについて独創的な考えがバートン・グローバルで認知され、実績が認められて全世界でも発売されました。

F:フーム、それは凄いなあ。
M:今、他のメーカーがやっている誰々モデルのシグネーチャっていうのは日本でしか売っていなくて。そういうことがやりたいんじゃなくて、ちゃんとグローバル・レベルでやれるものしかやらないのです。

F:なるほど。わかりました。では峯村さん自身は、バートンに入る前はどんなライダーだったんですか?
M:パイプもやるし普通にも滑るし、何でもやりましたよ。きっかけはパイプでしたけど。

F:スノーボード始めたきっかけは?
M:きっかけはテレビでちょっと見かけて「あ!いい」と思ってショップに行った感じですね。

F:篭もりました?
M:いや、篭んないで毎週通ってダブルヘッダーみたいなのもありましたよ。土曜日行って帰ってきてまた違う友達と。数はすごい行きましたね。

F:何処へ行きました?
M:当時はまだできるところが少なくて、水上とか。

F:何年前ですか?
M:12~13年前。

F:あーそんな前。パイプもないですね。
M:パイプもほとんどなくて

F:一番厳しい時代だったかもしれないですね。
M:一番下向きになりそうな時。
(注:15年以上も前だと、スノーボードに対するゲレンデの受け入れが明白でなく、とりあえず滑れたところが多かった。ところが、12年前になると、これは危険だという認知が高まり、滑れるゲレンデと滑れないゲレンデが決まって来てしまった。当時はスキーで十分儲かっていたので、それでも良かったのだ。ところが、今ではスノーボードを入れずに飯は食えない、ということで多くのゲレンデで再び滑れるようになったのである)

F:仕事になったスノーボードですけど今でも熱く滑ってますか?
M:滑ってますよ。昔は夏も仕事がてらキャンプに行ったりとか、今年からは夏は夏!って感じで滑らないでサーフィンとか夏しかできないことをやって。冬はどうせ自分の時間はないからそれも含めて一緒に楽しく滑ろうって自分が楽しめるように計画をしてます。

F:そういう時はバートンの仲間とかと滑ったりするんですか?
M:いや、社員はあまりないですね。ライダーとが多いかな。

F:なるほど。結構いい刺激になりますよね。
M:たまにキッカーとか誰も行かないときは僕が先行ってやられて。

F:おーお!(笑)
M:「大丈夫だ」とか「あそこはやめよう」とか。

F:ハハ(笑)。結構切り込み隊長的なんだなあ。
M:僕が引っ張らないと10代の子とかはやらなかったりとかするんで。最初は。だから、僕じゃなくて引っ張る子がいればいんだけど、いつもいるわけではないんで、いなければ犠牲になったりとかも。

F:凄い。ところで、好きなライダーは誰ですか?
M:僕はヨハンが好きですね。

F:ヨハン!オールマウンテンライダーだ。その理由は?
M:やっていることが細かくなくて、とにかく凄い。逆に細かくて「今、何やったんだ?」みたいな細かいのも好きですけど、「おー!」みたいな。スティーブ・グラハムみたいなのも結構好きで。

F:おー。いましたね。エクストリームの兄ちゃんだ。
M:あの人凄く単純な人で、アラスカで滑って2回ぐらいしかターンしないんですよ。

F:それは単純過ぎる(笑)。いっしょに滑りました?
M:一回カナダでいっしょに滑ったことありますけど。

F:カナダのどこでですか?
M:ブラッコムで夏グレイグ・ケリーキャンプやってて。

F:へえ、グラハム、来てたんですか?
M:5年ぐらい前、その頃は毎年来ていたと思います。

F:キャンパーで参加?
M:最初2年ぐらいキャンパーでそのあと雇われて。

F:雇われたとは、大したもんだなあ。特にその時代としては。グレイグ・ケリーのキャンプと言ったら、人懐っこいあのキース・ウォレンス(注:当時のバートンの中ではクレイグ・ケリー。ジェフ・ブラッシーに次いで人気があった。手足の長い独特なスタイルは一部熱狂的なファンがいた)とかいたのでは?
M:いました、いました。スティーブ・グラハムもいて。

F:あーゆーの出るのあこがれだったんだよなー。僕はローカルで金なかったから、普通に滑ってただけだから。
M:向こう行っちゃうとそこまでしようって気にならないんじゃないですか?毎日、滑れるし。

F:そう!それがよくないんですよね。それに気づいた頃にお金出して積極的にキャンプに行ったりして。みっちゃん(注:dmkでは再三紹介して来た橋本通代。世界で5本指に入るトップ・ハーフパイプ・ライダー)なんかもそうですよね。去年あたりからお金出して、積極的にキャンプに参加するようになった。
M:篭ればいいってモノじゃないですからね。

F:篭っても普通はある程度まで、なんですよね。同じ場所でもシチュエーションを変えて「気づき」がないと新しい自分を見つけられないから。ところで、他社メーカー・ライダーでこいつうまいなーって奴います?
M:結構、いるんじゃないですかね。でも、うまいのと魅力のあるのは違うから。

F:魅力ある人います?
M:いますよ。でも、コミュニケーションがその前に大事だから。

F:確かに。峯村さんから見て、日本人の中でだれがレジェンドですか?スノーボード界を動かしたって言う意味で。
M:まず、竹内さん(注:日本のクレイグ・ケリーとも言われる竹内正則プロは、現役時代は世界大会で唯一入賞した実績がある。今でもバックカントリーでのパフォーマンスはトップ)ですよね。

F:そうですね。
M:その次は吉村ですね。僕にとっては。

F:おー。そうですか。
M:会ってみるとわかると思うんですけど・・・。合わない人は合わないけど。やっぱり凄い。人に対してもはっきり言うっていうか・・・。自分の考えをしっかり持ってるし。それを理屈じゃなくて説明できるし、ライディング・レベルでも今はフリーライディングがフォーカスされてるけど。世界でもまだパイプでバックサイド540°は誰もやってなかった頃、その昔に、ナルがやって、ハイカスケードで誰だ!って話になって。その後に540°があたりまえになってきたっていう。

F:へー。そうなんだ。
M:スノーボードにおいてもそういうものを持ってるし、そう意味ではナルを知ってる世代の人たちは高橋信吾と吉村。ウエもすばらしいライダーですけど、動かしたっていう意味ではナルのほうが僕的には凄いかな。

F:信吾君はどんな感じ
M:信吾はスノーボードがメドイン・ジャパンの中だけでやってた時代に外国帰りが「勝った」っていう意味で。

F:あぁ、なるほどね。確かにカナダのウエストビーチなんかでシグネィチャー作ってましたからね。「オー信吾君モデル売ってるよ!ウェストビーチに!」みたいな。
M:日本オープンでブライアン・イグチに勝ちましたよね。

F:あっ、そーだそーだ。それ、ブライアン・イグチがまだ大会において凄ごかった時期ですよね。
M:うん。だから、信吾はそれで。

F:なるほど。バートンが他のブランドに勝っている点っていくつかあると思うんですけど「ここが勝ってるんだよ」って言うのあります?アピールというか。
M:あまり意識したことないですけど、とにかくライダーが一人一人いいスタイルを持っていれば、プローモーションする上ではチームとかもあるけど基本的には一人一人がバートンに対してハッピーであればいいと思う。だから、いい道具があっていい環境があればそれでいいって話で。すごくシンプルに考えたいんですよね。

F:今期のラインナップのテーマってあります?
M:今期は、えー。カタログご覧になったことあります?

F:いや、あまりないです。大体みましたけど、左脳が働かなくて(笑)
M: 6つぐらいに分かれて、コンタクトとパークを遊ぶ何かと大まかなフリーライディングとウーマンズとって分かれています。多分いろんな会社がその隙間を狙ってると思うんですけどバートンは基本的にはコアでなので、そこまで細かい隙間を狙っているわけじゃないです。けど、ライダーが欲しがって作られたスプリットもあるし、大会で高く飛んだり、気持ちよくキッカーから抜けれるボードもある。そしてフリーライディングだけでも調子のいいボードもある。逆に本当にローカルしか好きじゃないのもあるし。そーいう意味ではバートンはすべてのスノーボードをサポートします。

F:例えば、ローカルにしかっていう部分はどういうものなんですか?
M:具体例でいえば、スワロウテイル。スワロウテイルっていうと玉井太郎さんの頃じゃないですか? 今はGENTEN STICKというブランドのダブルピンテールって言い方をしてるんです。そのボードって凄くニセコで支持されています。というのはニセコはあまり斜度がなくて雪が軽いから結構ターンをするとブレーキになっちゃう。だからターンをしても失速しないボードを作りたくて、そうなっているように思えます。実際にどうかは定かではないけど。

F:あれはテールが失速しない部分がキーになってるんですか? トップが尖がっているのはなんとなくイメージできますけど。
M:ボードの解説の時は、凄く気を使うんですけど、ボードの性能については硬さや、形だけではいえないと思います。ひとつひとつの性能が組み合わさってそのボードの性能ができあがっているものだから。例えばよく聞かれるのは、このボード
は硬いですか?とか。硬いと乗りにくいんですか?っていう話をよくするんですけど、硬いだけじゃ乗りにくくならない。他のいろいろなもののバランスなので、だからそういう形にしてるんだと思うし、それが組み合わさった結果そういうものになっているので、そういうものが欲しかったからそうにしてるわけで。だからTERJEが作ったFISHについても形だけをこうしたいとかっていって作られたものではなく、それぞれを突き詰めらああいう形になったということかな。

F:どんなシェイプなんですか?往来のスノーボードのシェイプ?
M:ちょっと持ってきますね。

F:懐かしい形してますね。
M:これ11月にレイトで出すんですよ。テリエってやっぱりパイプとクォーターっていうイメージあるじゃないですか? でもフリーランも凄く好きで。それで作ったみたいです。

F:これでパイプには入んないですよね?
M:入んないですね。石打のニッポン・オープンの時にパイプに入る直前まではこれ乗ってましたね。パイプの上まで来て履き替えて。

F:器用なやつだなあ。違和感とか出て、大会で嫌がりそうですけどね。
M:全然関係なかったですね。(笑)

F:何センチですか?
M:156!

F:テリエにしたらちょっと短いんじゃないですか?
M:でも結構、幅広いからカバーできる。シャノンでもジム・リッピーでもこれで。

F:ほー。やわらかめですか?
M:そうでもないです。

F:それでは、今期の抱負を伺いましょう。
M:たくさんライダーと滑りたいです。

F:あと最後に夢をお願いします。
M:やっぱり、山に大きい家を作ってみんなで住みたいですね。

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