今回の特集は、北米で発行している業界寄りの専門誌、FUTURE SNOWBOARD TRADE NEWS誌で掲載されていたTop Selling Brands Across Nationという「人気ブランド調査」のコンテンツを元に、北米でどのブランドが人気があるのか、ということを紹介していきたい。また、この調査から、どのようなことが読み取れるのか、ということも伝えていこう。
文:飯田フサキ
Top Selling Brands Across Nationとは?
まずは、この「人気ブランド調査」のコンテンツTop Selling Brands Across Nationが、どういうものか伝えたい。
これはFUTURE SNOWBOARD TRADE NEWS誌のスタッフであるジェニファー・スレグワート氏と、分析専門家のブラッド・ファーマー氏が、北米全土の人気ブランドをショップに対して調査し、どのブランドが人気があるか、ということを紹介しているものである。
聞き取り調査に参加したショップは、アメリカ、カナダで200店舗にも及ぶ。
質問内容は「あなたのショップで人気のあるブランドは?」というもの。ボード、ウェアーなどのギアの他に、ビデオの売れ行き調査までしてあるので、ひじょうに興味深い。
また、一番人気のあるブランドを5ポイントとして、2番目が3ポイント・・・、そして5番目が1ポイントとして、トップ5ブランドまでの聞き取り調査を行っている。
実際にこの専門誌を拝見すると、北米のエリアを5地区に分けて、そのエリアごとの人気もチェックできるようになっている。例えば、アメリカでも西海岸と東海岸のエリアでは、違う売り上げ傾向も出ているのだ。また、アメリカ中央のロッキーでは、日本ではあまり馴染みのないNever Summerというボードが意外にも人気が高い、という結果も出ている。エリアの特色も出て興味深い。
今回、この特集では、エリアまでの細かいところまでは伝えないが、各ギアなどの順位とポイントを伝えて行こう。
Boards部門
1位 Burton 643ポイント
2位 Rome 465ポイント
3位 Lib Tech 415ポイント
4位 Gnu 212ポイント
5位 K2 194ポイント
6位 Ride 188ポイント
7位 Forum 151ポイント
8位 Capita 125ポイント
9位 Never Summer 120ポイント
10位 Arbor 110ポイント
11位 Salomon 107ポイント
Burtonが、1位なのはあたり前という印象だが、それほどポイント差がなくRomeが2位にいることが驚き。自分のイメージとしては、Burtonがダントツの1位で、2位以下は大きな点数差があると思われていたからだ。
アメリカの展示会で堂々と掲げられていたRomeのメッセージTHIS IS SNOWBOADRDING。確かに今、最もスノーボードらしいブランドかも。
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Romeのブランドを始めた方たちは、かつてBurtonにいたスタッフであると聞く。Burtonのボード作りのノウハウを知り、またプロモーション戦略においてもBurtonに負けない強さがあるのかもしれない。しかしRomeライダーたちは勢いがあるけど、Burtonの認知度の高いスター集団と比べると、それほどのレベルではないようにも思えるのだが。だから、これほどまでにRomeの躍進ぶりが、やや不思議でもある。いつの日にもトップを追う2番手は魅力的なコア・ブランドに見えるということなのか。この勢いは、かつてのSimsのようにBurtonの良きライバルとなりそうだ。
一方でBurton傘下となっているForumが7位というのは、元気がないポジションに感じる。かつては、Burtonをも凌ぐ勢いのあったブランドが、今ではBurtonの持つブランドとなり、そしてLib TechやK2といったブランドよりも下にいるのだ。ビデオ『That』など、多大なプロモーションをやっていた割には、もう一つ結果が出ていないように思われるのだ。
また、Salomonが、Never SummerやArborよりも下で11位にある、というのも意外であった。Salomonはクオリティの面では、申し分ないと思われるのだが、もう一つ横乗りたちには見向きされないところもあるのかも。
ちなみにLib Tech が3位にいるが、元々Libはアメリカで人気が高いということと、昨年リリースしたバナナ・テクノロジーが受け入れられていることが、この高順位の要因ではないか、と思われる。こうした流れは、日本にも来るのではないだろうか。
Boots部門
1位 Burton 658ポイント
2位 Thirtytwo 504ポイント
3位 DC 316ポイント
4位 Salomon 235ポイント
5位 Vans 182ポイント
6位 Rome 139ポイント
7位 K2 132ポイント
8位 Ride 107ポイント
9位 Northwave 102ポイント
Butonが圧倒的に強いと思いきや、ここでも2位ブランドThirtytwoが大健闘。
看板ライダーにシモンを立て、さらにはJPという大御所、さらにはジョーという注目新人も加入させたThirtytwo。
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失礼ながら日本のマーケットを相手にしていると、Thirtytwoが北米でここまで人気があるとは意外である。DCの方がずっと下のポイントで3位にあるのだ。読者のみなさんもこの結果には意外では?
Thirtytwoの特徴は、何と言っても軽量。また人気ライダーがいるので、イメージもとても良いのだろう。
しかし、日本では足回りのギアとなると、最もユーザーのジャッジが厳しいもの。単にシモンやJPが使っているからカッコいいだけでは、売れないという部分もある。今後、日本でもアメリカのように人気を高めるには、アジア人のような足に合わせられるかどうか、ということに関わってくるのではないだろうか。イメージも大切だが、それ以上にクオリティ。「軽くて快適」ということがユーザーに伝われば、北米のような結果につながるだろう。
ボードが11位というところで、ブーツが4位にあるSalomonは、健闘していると言えるのではないだろうか。Salomonのブーツのクオリティは良いと聞くし、またモデル数も豊富なところから、そのような高順位なのだろう。スポーツ全般のシューズなど、元々世界的に高テクノロジーを持つカンパニーでもある。
ちなみにブーツの老舗ブランドと言ったらNorthwaveだけど、こちらはビデオに登場する人気ライダーが少ないので、イメージ的に弱いのかも。ヨーロッパでは売れてそうな気がするけど。
ところでシューレースの代わりとなるBOAシステム。少ない力で均等にブーツを締めることができるというものだけど、アメリカでの人気は、どうなのだろうか。
BOAを積極的に使っているDC。また一部モデルで使用しているThirtytwoだが、BURTONの Speed Zone レーシング・システムなど、クイックに閉める方法は、他にもある。順位を見る限りでは、まだ圧倒的なシェアではないし、これが未来のシステムという強さ、成長も感じない。BOAシステムは、これからこのシステムを使用するブランドの力でその評価が分かれてきそうだ。
Bindng部門
1位 Burton 781ポイント
2位 Rome 407ポイント
3位 Ride 301ポイント
4位 Union 185ポイント
5位 Flow 165ポイント
6位 K2 164ポイント
7位 Flux 161ポイント
8位 Salomon 131ポイント
9位 Forum 126ポイント
10位 Technine 117ポイント
11位 Drake 89ポイント
予想通りBurtonが圧倒的な強さを発揮した。
バインディングは、相性の良い同ブランドのものを使いたいというユーザーが多い。
またBurtonの足回り用品(バイン&ブーツ)は多くのライダーに認めらている。実際、自分が見て来た有名なプロたち、例えばS・M、A・Bなどもスポンサーが決まっていない時、Burtonの足回り用品を使っていた。やはりBurtonは良いモノを作っているのだ、ということをライダーたちの使用状況を見てもわかる。
Burtonは来季、2つのビスで留める新システムをさらに多くのモデルに広げているし、またまたシェアを伸ばす気配。
ハイバックがこんなグニャグニャな画期的なバインのFlux。国産ブランドながらアメリカでも大活躍中!
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それにしてもここでも2位にRomeが来ていようとは! きっと日本ならこのような2位結果は出ないのだろうが、やはりアメリカでのRomeの地位は急速に高まっていることを伺わせてくれる。
3位に入ったRideは健闘。来季は、1つのラチェットで留める方式など採用し、Burton同様に新システムによる戦略で挑む。
日本のメーカー、Fluxは7位と健闘している。スノーボードのメーカーでは、日本のメーカーが世界に発信するということはまだ難しい状況だが、この7位はまさに尊敬できる結果。他の上位バインのクオリティには負けていないし、むしろクオリティ面では、トップ3に入っているとも思われるので、ここからさに上位を目指してほしいところだ。元祖トゥ・スイトラップを始めたブランドとしても、ぜひトップを目指してほしいもの。
あと気になるのは、特徴的な装着方式を持つFlow。5位という高位置にある。日本やヨーロッパでも人気が高く、脱着がとても早いシステムで有名だ。しかし、この方式、座って履くような初心者だと逆に付け難くなってしまうので、そのへんの改良あったらもっと上位に行けるのでは?
Luggage部門
1位 Burton 662ポイント
2位 Dakine 583ポイント
3位 Ogio 192ポイント
4位 Rome 177ポイント
5位 Volcom 144ポイント
6位 Bakoda 94ポイント
このようなバッグ類の部門でもBurtonが1位。本当に強い勢力であることを改めて伺わせてくれる。
そもそもバッグ類で名を広めているDakine、Ogioの奮起を期待したいところ。
ちなみに北米で旅をしていると、たくさんOgioのバッグを持っている業界人が多い。このブランドのバッグ、値段も安い上、元々バッグ屋さんでクオリティが高いだけに、日本でももっと人気が出そうなものだ。
Outwear部門
1位 Burton 538ポイント
2位 Speial Blend 305ポイント
3位 Volom 294ポイント
4位 686 267ポイント
5位 Session 187ポイント
6位 Holden 176ポイント
7位 Four Square 173ポイント
8位 DC 170ポイント
9位 Bonfire 164ポイント
10位 Greanede 139ポイント
11位 Analog 126ポイント
ウェアーもBurtonが強かった。ついでにBurtonファミリーであるAnalogまで11位に入れている強さ。
Burtonは、すべてのライダーのスタイルに応えるようなモデル数を持つし、また価格帯も広く、多くのスノーボーダーたちに受け入れられている。
Speial Blendが2位。ライダーうんぬんなしに、デザインがカッコいいので売れる、というショップさんからの意見が多いブランドだ。
仲間ブランドのFour Squareは7位ということから、アメリカではスペブレがより強いんだな、ということがわかる結果でもある。
日本ではプロ・ショップなどでしか手に入らないVolomのウェアーが3位。
ウェアー・ブランドの686、Sessionが4位、5位という関脇クラスにいる。このようなブランドがトップを脅かすようになると、ウェアー・カンパニーとしての誇り、アイデンティティ(存在価値)なんか見えてきて、おもしろいのだけど、どうだろう。
元々、カジュアルとしても名を馳せていたHoldenは6位だ。来季からアウトウェアーもやるNomisもこんな具合に成長して行くと、個人的には嬉しいのだけど。
ところでこのカテゴリー、まだRomeの勢力は及んでいない。来季に向けてウェアーをリリースさせたRomeは、間違いなく来季このカテゴリーで大きな影響力を及ぼすだろう。
Goggles部門
1位 Oakley 493ポイント
2位 Anon 448ポイント
3位 Electric 344ポイント
4位 Smith 315ポイント
5位 Dragon 272ポイント
6位 Spy 250ポイント
7位 Von Zipper 245ポイント
Oakleyが1位。それは当然のことながらわかる。だけど、かなりポイントが迫った勢いで次にAnonが2位に入り、またまたBurton軍団の強さを思い知らされた!
ジェレミー・ジョーンズがバイクで全米旅した理由は、anonのプロモーションという野望も秘めていたりして!?
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今から7、8年前だったか。Burtonからゴーグルがリリース、Anonが出る!と聞いた時、正直あの時はこれほどまでのブランドになるなんて思えなかった。というのも、天下のBurtonが出した割には、デザイン、品質が良くないと思ったからだ。しかし、今ではAnonはデザインもカッコ良いし、品質も向上。アメリカでは2番目にスノーボーダーに受け入れられるゴーグル・メーカーに。それにしてもそのブランドを向上させる力を持つBurtonには恐れ入る。
3位には、最近サンタのお姉ちゃんの広告でやたろと目立つElectric。それほど人気が高かったのか、という感もあるけど、アメリカでの結果。
その後にSmith、Dragon、Spy、Von Zipperが続き、アメリカの順位というものがこういうものであるのか、と興味を引いてしまう。日本にいるとなかなかわかり難いけど、これがアメリカの順位だ。
Accessories部門
1位 Burton 507ポイント
2位 Dakine 341ポイント
3位 Grenade 304ポイント
4位 Neff 250ポイント
5位 Coal 155ポイント
6位 Spacecraft 139ポイント
7位 Rome 135ポイント
8位 Volcom 123ポイント
ここでも一番は・・・、もう、今さらブランド名は言いません(笑)。この分野でも1位、本当に強い。
2位はアクセサリーで有名なDakine。北米でドライバーやボード用の鍵などを探していると、大抵Dakineが見つかる、というほど人気ある。
Dakineはグローブも多く出している。
3位にはダニー・キュスで有名なグローブ主力ブランドGrenade。
4位Neffと、5位Coalはご存知ビーニー主力のブランドだ。
このアクセサリーというカテゴリー、つまり小物という分野は、ビーニーのようなものから、グローブ、また工具類のようなものまで含まれているようで、やや分野作りがあやふやに感じる。
日本には小物は豊富だし、アメリカのパワーがそれほどまでにやって来るとは感じ難い。ただ、近年日本でもNeffの人気が高まっているように、ビーニーなどのファッション性というところには注意して良さそうだ。
Movies部門
1 Picture This 454ポイント
2 Optimistic ? 433ポイント
3 We’re People too 265ポイント
4 Catch The Vapors 253ポイント
5 Thanks Brain 234ポイント
6 Any Means 227ポイント
7 Child Support 115ポイント
8 Lines 109ポイント
最後は、ビデオ部門。ここでは、大御所マックダグのPicture Thisが堂々1位。これは予想通りの結果。
2位にはAbsinthe FilmsのOptimistic ?だ。日本でも海外作品モノとしては2番目に売れているハズなので、ある意味、順当な順位だけど、そのポイント差があまりないので意外。日本だと際立ってPicture Thisが売り上げが上位という印象がある。
もう1つのマックダグ作品、We’re People tooが3位にあるということを意外に感じる方も多いだろう。というのも日本での海外モノ作品順位では、もっと下にあるからだ。しかし、北米ではWe’re People tooもひじょうに人気が高いのである。来年はジョー・セクストンもこのシリーズに登場するので、要注目だぞ。
もう一つの老舗レーベル、Standard FilmsのCatch The Vaporsは4位。こちらもかつてはTBシリーズを出していた大御所だけに、もっと上にいても良いのだろうけど、もう一つ視聴者のニーズに合わず、ダイナミックな大人のバックカントリーを見せ過ぎかな。こういうレーベルがあっても全然OKだけど。
このスタンダード作品とは逆行するかのように若造なジブ・スタイルを見せるThanks Brainが急上昇で5位。こういう作品がさらに上に行くのは、時間の問題かもしれない。
Romeのチーム・ビデオのAny Meansは、6位。やはりアメリカのRomeパワー健在!
そして7位には、Child Supportが入ったぞ!!! うぉー、ショーン・ジョンソン(注:プロデューサー)流石だ。カナダでは、ホワイトアウトに次ぎ、大関か関脇クラスに思われていたDefective Filmsの作品が、7位だったとは!本当にビックリするし、北米で7位にしたショーンの手腕には頭が下がる思い。あれ、ってことは、この作品のエンディングに流れるオレのバカ面は、ずいぶんたくさんの人に見られたってことか。 ガビ~ン。