今季プロになった有望株に今の心境を聞く/加藤 高正(2)

広告 five  

 

今季プロになった加藤高正だが、ケガに泣かされ続けあまり良いシーズンを送れなかったようだ。こらから先、ケガを克服しながらどのように活路を求めていくのか。そのへんの心境に迫ってみた。

フサキ(以下F):彼女できた?
高正(以下T):また、それですか(笑)。おかげさまで、まだ一人もんです。

F:プロになったから、もてそうなもんだけどなあ。
T:いやあ、そういうのは関係ないですね。

広告

F:今年のポッカ・ナイトロ・ジャパンの成績で念願のプロに上がれたわけだけど、どんなシーズンだった?
T:その直後にケガしちゃったから、結局あんまり滑ってないんですよね。だけど、そうなる前まではいい緊張感で滑ってました。プロに上がらなくちゃいけないということで、プロ戦しか周らなかったら。

F:それは秋から冬にかけて良い緊張感だったってこと?
T:いや、冬からですね。秋にフィンランドに行っていた時は、絶対にプロに上がれるって信じて練習していたから、あんまりプレッシャーなかったんですよ。12月の最初のプロ戦で 上がれなかったから、後の2つはもの凄い緊張感で滑っていました。とりあえず、2戦目の八幡平では転んじゃったから、次のポッカまでの1週間はかなり気合入れて滑ってた。だけど、悪いイメージが出てこなくて、不思議と次でなれるって思っていました。

F:普通は八幡平で転んじゃったら、悲観的なものとか出てきそうなもんじゃない。そういうのは、なかったんだ?
T:ただ、一戦目の木曽駒でジャッジに不信感を持ってしまって・・・、上がれたと思っていたんですよ。だから次の八幡平はどういうルーティーンにするか迷いました。だけど、そこで転んで吹っ切れて、次は自分を信じて自分の滑りを完璧にやろうと思い練習をしました。当日の北志賀(ポッカ・ジャパン大会)のパイプは好きじゃなかったけど、もう来た壁で飛ぼうと。来た壁で絶対立つんだという気持ちで挑みました。それが功をそうして、見事に転ばずに決勝に残れました。

F:なるほど。そのプロ・トライアル戦に出れたというのは、誰かの推薦で?
T:うん、うちのボス(同じスクーター・ライダー曽根和広)の。そっちのが凄いプレッシャーだったんですよ。やっぱりほら、推薦してくれる人の名前もあるじゃないですか。その人にも失礼な滑りはできないし。オレにしてみたら雲の上のような人から推薦もらえたわけだから、その名前を汚したくなかったから。ゴッチ(後藤伸介プロ)も曽根くんの推薦で上がったじゃないですか。そういうのもあるし。だから、曽根くんにも「上がってね」って言われたから、結構そのプレッシャーはありました。

F:推薦イコールだいたい上がれるということが多いの?それとも推薦でも上がれない人の方が多いのかな?
T:どうなんだろう、推薦だからやっぱりそれなりにうまい人ばかりだと思うけど。

F:だけど、一説によるとファミリーとかボーイフレンド、ガールフレンド的なコネクションで出て、どうしょうもない結果に終わったということも聞いたけど。
T:それは、ないこともないんじゃないですかね。やっぱり、そういうのはよくないっていうか・・・、いいのかもしんないけど・・・、オレも仲がいいからってだけで推薦をあげるっていうのも変だと思う。

F:そうかあ、プロになれれば推薦をあげれるわけだね。じゃあ、来年誰にあげるの?
T:わからないですね。でも、やっぱり自分的に見て引かれるものがある人なら。

F:誰だろう。秀樹?(注釈:千葉秀樹は加藤高正、臼井マコトがアマチュア時代にdmkがコーディネイトしていっしょに撮影している。3人いっしょにスノーボード・ニッポン誌に登場し、また3人ほぼ同時期にスノーイング誌のニューカマーのコーナーに登場している。フサキ編集長は勝手に爆弾三銃士と名付けて3人を売り出した経緯がある。しかし、千葉秀樹だけは今のところプロに上がれていない)
T:うーん、秀樹は自分の力で取って来てほしいかな、どっちかっていうと。まっ、くれって言われれば喜んで。

F:ふーん、だけど秀樹のことだから意地でも自分の力で上がってやるぜ!って思っているんだろうなあ。まっ、話を戻そう。今期はやっとのことでプロになれて、ケガに泣かされて、回復してきたところにカナダにやって来てウエストビーチ大会、ところがまたまたハプニングが待っていましたね。
T:ありましたね。ついてないですよね。ウエストビーチに関しては、前々からプロになったら出ようと思っていたので出たんですけど、見事にやられてしまいました・・・。(注釈:見事にやられたとは転倒してケガをしてしまったということ。高正はプロ戦の後もキャンプで、半月板損傷してしまい雪の降る季節はずっとリハビリに精を出していたのだが、その復活のウエストビーチ大会で再びケガをしてしまったのである)

F:復活の大会なのに、ひじょうに残念だよね。
T:まあ、やっぱり一ヶ月半まともなトレーニングしていなかったし、板にも乗っていなかったから・・・それでいきなりウィスラーのきついパイプに入って、大会という緊張感に身体が思うように動いていなかったというのが原因ですね。ていうか緊張感がなさ過ぎたのかな。

F:今、考えてみたら反省点はあるということだよね。
T:いっぱいありますねえ。ただ、大会という独特の雰囲気の中で、なんとなく気づいてはいながら、やってしまうという。まだオレも若かったなというか、経験不足なところを見せてしまいました。

F:2週間でずいぶん勉強したようだね。
T:そう、ですね。これから先、まだスノーボード続けたいから、ケガに対してもどうしたらやれるかということを考えているところなんですけど・・・、でも、やっぱり、うーん、そういうところを変えていかないといけないし。やっぱり身体というのは正直なもので、筋力が衰えていると思うように動かないし、ただそれをわかっていてもその場の雰囲気や気持ち的なもので、やってしまうという自分の甘さ、というのが今回やってから反省していますね。

F:今日たまたまインターネットしていて、印象的な言葉を見つけたんだ。あるサーファーの言葉なんだけど、それをメモったんで高正に捧げようと。「私の一番の強みは自分の弱いところを知っていて、それを克服するためには何でもやることだ」これは、ブライアン・ケウラナという人の言葉。どう?
T:素晴らしい。

F:ようは、今、自分がケガをしてしまった、こうしなくちゃいけないということで大人になって、そのためには何でもするんだってことで。それでこの人は、サーフィンで極めた人だと思うのだけど、それも高正だったらできると思うから。
T:僕も3年半前にヘルニアの手術をして、その時はもう二度とスノーボードなんてできないって言われてたし、自分でも思ってたんだけど、それを克服したじゃないですか。

F:そうだよね。
T:だけど、今、それが一段落してしまって身体を鍛えるということが疎かになってしまって。自分が思っている以上に筋肉が衰えてたから・・・、でもその時はどうしても克服したくて、どうしてもスノーボードをやりたくて、そういう強い気持ちがあって、筋トレとかももの凄くやれたし、実際ヘルニアをやった後に、スポンサーがついて、今プロにも上がれて、自分で考えても不思議なくらい、奇跡としかいいようのないことをたった3年間でやってきたから、ある意味そこに変な満足感があったのかもしれない・・・、そこで油断しちゃったのかなあ。

F:そこで神様が「思い上がっちゃいけねえ!」とばかりにガツーンと来たのかもね。
T:そうだね、もう一回あの時の気持ちを持てと。有頂天になっていたわけじゃないけど、気持ち的には嬉しかったし、でもあの時のトレーニングをしていたから、身体も壊れずにこれたんだと思うのを、自分が勘違いしたというか・・・怪我したときにそれに気づいて、自分が情けなくなってきて・・・

F:あの時は、身体デカかったもんな。本当、こいつはスポーツ・マンなんだなって思ったよ。T:やっぱり人間のおっかないところで、自分の周りの環境が良くなってくると、甘えがでてくるというか。F:恐いねえ。オレにも言えることだけど。
T:自分はそうはならないと思っていたけど、やっぱりなっていたと思うし。今回のこのケガで改めて自分の身体の弱点を指摘されたわけだし、治療することができないことだから、そのためには何かをしなければもっと弱くなってしまうし、やっぱり筋肉をつける方法が一番いいと思う。実際、腰をやった時も筋トレが効いたと思うし。またしっぺ返し食らわないように今からちゃんとトレーニングやらないと、と思っています。

F:努力はマメにやっとかないと出せなくなるからね。
T:うーん。人間の恐ろしいところは、何かをやってから気づくという部分があるから、そのへん気を付けていかないと。誰かが言っていたけど、「継続は力なり」。そのへん意識してトレーニングとかやっていかないといけないと思います。

F:最後にみんなに聞いているのだけど、夢をお願いします。
T:夢ですか?今はまだはっきりとは見えてないんだけど・・・、ん~見えてなくもないかな・・・あんまり語りたくないんだけど、内に秘めてやるほうなんで。実現したときに言います。これが夢だったって。

編集後記:
以前と違って最近はプロに上がるためのハードルが上がっている。その中で加藤高正はプロになったのだが・・・。しかし、神が彼に与えたハードルはまたしても残酷なものだ。ケガを克服してこれから高正はどこまで登りつめるのか。今後の彼の行動に注目していきたいと思っている。

 

広告