フリーランで滑りを表現するライダー/田中 裕志

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dmkグローバルの一員として、雑誌のハウツーを任されている田中裕志。
フリーランというカテゴリーで生きる難しさを味わいながらも、ポジティブに生きる彼に直球インタビューを試みた。

フサキ(以下F):今期を振り返ってみて、どうだった? フサキ(以下F):今期を振り返ってみて、ど ヒロシ(以下H):今年はあまり自分のスノーボーディングをしていないシーズンですねえ。なんか仕事がメインになっちゃって、職業ボーダーになっていましたね。

F:インストラクター?
H:そうですね。CASIのブレップがほとんどで。

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F:ブレップって?
H:CASIのレベル1(注釈:日本で言うC級インストラクター? この免許を取ればインストラクターになれる)を受けるためのコースで、レベル1を目指す人たちに教える仕事(注釈:つまりヒロシはインストラクターの免許を取る人たちに教えていた。彼はイントラのイントラという立場である)です。

F:ふーん、それなら凄いじゃない。結構、いいお金もらえるんじゃないの?

H:いや、お金は全然変わらないです。ただ、それをやると月曜日から金曜日まで通しで仕事もらえるんで。

F:じゃあ、自分のフリーランの時間って少なかったんだ。
H:そうですね。ほとんど、なかったですね。なんか新しいことにチャレンジすることとか、今年はなかったんで、それで夏のキャンプ(本webでも紹介しているグレーシア・キャンプのこと。結構プロでもキャンパーで参加している)に出たいなあ、というのが凄いありますよね。

F:でも、春なんかは珍しくパイプに入っている姿とか見たけど。
H:そうですね。今シーズンは、真面目にハーフパイプをやろうかなあ、と思って。今まではフリーランしか興味なかったけど、まあ多少はできるように。パークとかも流して、最後の方はブラック(注釈:ブラッコムにある超特大テーブル・トップのこと)とかも普通に飛べるようになって。

F:なんで、またパイプとかに興味を持つようになったの?

H:うーん、別にできなくてもいいかなあ、と思っていたんだけど、今はトータル的にスノーボードをできるようになった方がこしたこととはないと思ったんです。もちろん、滑りがうまくなりたい、カッコいいという姿を求めていたいけど、やっぱりパイプに入ってへなちょこだといくらフリーランがうまくなってもダサイかなあ、と思って。

F:そうだよね。

H:だから、ある程度飛べたり、回ったりというのができないと、と思って。

F:オレなんかあ、パイプ自体がおもしろい、パークじたいがおもしろいから、それをやるという部分はあるんだけど、もう1つはパイプとパークをやることによって、フリーランがうまくなるということを思ったんだ。ヒロシはどう思った?

H:そうですね。オレもそう思いますよ。やっぱりエアーはトータル・バランス、ボディ・バランスとかのいい勉強になるんで。滑りの感覚にもつながるし、特にパイプの滑りの感覚はフリーランの感覚に影響してくるし、凄くクロス・オーバー・トレーニングになるんでね。まあ、やってておもしろいですよね。できないことができるようになるっていう、楽しさみたいなのがあります。

F:今、ヒロシは雑誌(注釈:実日社のスノーボーダー誌のこと)でハウツーとかをいろいろ考えてもらっているんだけど、どうだろうヒロシから見て、これを読んでくれている読者に対してアドバイスとかある?
H:やっぱり一番お客さん教えてて思うのは、また若い子たちと話して思うのは、情報に流され過ぎているってことです。

F:例えば?
H:例えば、スノーボードが好きで、雑誌を読んで自分なりに研究しているっていうのは凄くわかるし、それはいいことだと思うけど・・・。だけど、そればっかりで自分で経験していないことをあまりしないというか、頭でっかちで経験をしていないと思うんです。とにかく思ったことはすべてやってみる、ということが大切だと思っているんです。例え間違っている情報でも、とりあえずやってみることだと思うんです。

F:その間違っているというのは雑誌とか?
H:間違っているていうか、いいとか悪いとか、ありますよね。例え勘違いしやすいことでも、自分でいいと思ったら、体験してみることって大切だと思うんです。その体験すること自体が、サンデー・ボーダーだと滑る時間が少ないんで、難しいかもしれないけど。インストラクターというのは、言葉で教えて頭でわからすことじゃなくて、やらせてみて身体で覚えさす。そこが一番大事なポイントだと思うんで、雑誌についても、こうこうだったらこうだよって、ただ納得させるだけでなく、これをやってみれば、こういうことができるんだよって、それを絵的に見せてあげて、身体で納得させることができればベストなのかなあ、と思うんです。

F:なるほど。ところで、ヒロシのさあ、ハウツーのモットーって何かあるの?
H:うーん。

F:難しい?ポリシーみたいなもので、いいよ。

H:自分が教えるからには、うまくさせてあげたいって凄く思うますよね。うまくさせてあげると、来てくれる子たちも喜んでくれれるし、自分も楽しいし、やっぱり仕事というよりも好きでスノーボードをやっていて、好きで教えることなんで、できるだけ自分も楽しみたいし、お客さんたちも楽しませてあげたい、ただやっぱり人間なんで、体調が悪かったり、気分が悪かったりで、そういった至らない部分もありますけど、でも、キホン的には、楽しませてあげて、なんて言うのかな、上達させてあげてハッピーにして帰してあげたいなあって。

F:オレなんかも、今年気付いたことだけど、「自分が楽しまなきゃお客さんを楽しますことはできないんだ」って思ったね。

H:そうですねえ、カナダのメソットでもそれは凄くいいますよね。「お前たちがレッスンを楽しまないと、生徒たちもついてこなくて楽しくならないんだよ」って。

F:日本では、それが忘れている部分もあると思うなあ。
H:逆に言えば、楽しんでいれば、そんな大したことをやっていなくても、結構みんなうまくなっているんですよね。楽しい、楽しいという気持ちがポジティブになれるんで。

F:最後にこれからの目標を!

H:今までは、単純に日本とカナダに行ったりして、5年も同じことをやっていたんで、そろそろ新しいこにチャレンジしてみようかなあ、と思って。夏はウエイク・ボードをやってるんで、そちらの方も頑張っていきたいです。


編集後記

フリースタイル全盛の世の中で、フリーランに賭けるというのは、なかなか難しいことである。スポンサーも付きにくいし、大会もないワケだら賞金ももらえない。その難しい世界で羽ばたこうとしているヒロシは、今後どのようにして活路を見出していくのか。フリーランと同時に、ハウツーで多くの人にスノーボードの楽しさを伝えることも、今まで同様に頑張ってほしいと思った。

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