早いものでシモン・チェンバレンと出会ってから5シーズン目を迎えた。シモンは確実に毎年ステップアップして、今では世界のトップ・ライダーの仲間入り。誰もが認めるプロ・ライダーになった。その間、シモンのライディングはもちろん、考え方、またオフトレ練習など拝見して来た。今から紹介できることは、そのシモンのオフトレの一部だけど、こんなことをやっているんだよ、ということを紹介してみよう、と思う。そして、この企画がみなさんのスノーボーディングに参考になれば、と思う。
photo & text :Fusaki Iida
ボールを使ったトレーニング方法
これは昨年SnowBoarder誌の囲み記事のような扱いで紹介した、シモンのボールを使ったトレーニング方法だ。SnowBoarder誌のシモンのハウツーは毎年、自分が写真&ライティングを担当していて、シモンと相談しながら作っている。今年もSnowBoarder誌の2号でシモンの基本的なジブ・ハウツーをやったので、まだ見ていない人はぜひチェックしてみてほしい。
さて、このボール・トレーニングのテーマだが、主に腹付近の筋力を鍛えるためのものだ。腹筋、背筋は、バランスを取る重要な鍵となる筋力だし、トリックを決めるため、またリカバリーをするための大事な筋力だ。そこで、シモンはこのボールを使ったトレーニングを行っている。
まずは、ボールを使って腕立て伏せをやろう。
通常の腕立てよりも、体が起きている分だけ楽に感じるが、実際にはボールは転がりやすいので、バランスを保ち難い。ボールを一定の場所に保ち続けるのもハードだ。実際にやってみると、腕の力、また腹筋の力が必要とされることがわかる。
この腹筋の運動は、真っ直ぐに起きると腹筋の中央が鍛えられる。
そして左右に起きると、左右が鍛えられる。
ボールを使わないでやるのと違いは、ボールを使った方がボールを動かさないようにするため、より腹筋を使って体のバランスを取るところ。結果、腹筋を使うし、体の軸への意識も生まれ、なかなか良いトレーニングだ。
脚を伸ばしたところから曲げると、脚の裏側の筋力も鍛えられる。と、同時に腹筋、背筋も鍛えられる。
以上、簡単にボールでできる3つのトレーニングを紹介したが、自分がシモンにちょっとの時間で見せてもらっただけでも10近くもあった。きっとこのボールを使ったトレーニングで20以上、いや30ぐらいあるのだろう。
このボールを使ったトレーニングの特長は、ともかくだいたいどんなトレーニングしても腹筋、背筋を鍛えられるところ。さらに腕や脚なども鍛えることができて、ひじょうにいい。ウチにもあるけど、大して高くないし(注:日本では4000円ほどらしい)、ダイエット効果、しいては健康のための適度な運動にもなるので、ぜひ購入してみてやってみてほしい。
実際のトレーニング例などは、きっとボールが買うとマニュアルがあるだろうし、自分で工夫していろいろできる。
シモンのように立てるようになったら、キミも一流ジバーになれるかも!?
室内ジブトレ
これはvitaminJIB(DVD)でも紹介した室内ジブトレ。シモンはシーズン前になると、ママに叱られるのを気をつけるようにして、こればっかりやっていたって。実際この室内ジブトレってハンパない運動量になるから良い汗をかくし、ボードに乗る良い練習だ。スノーボードのDVDを見ながらやると、かなり良いだろう。ぜひ、vitaminJIBを見ながらやってみてね。シモンは簡単そうにやるけど、実際にやってみると意外に難しいし、おもしろいから。
ノーズに乗ったり、テールに乗ったり。
スピンしたり、こんなポーズを決めて遊んでみたり。
ところで、オーリーとかノーリーとか、何度やってもシモンのようにカッコよくできないものだ。そこでシモンにどうしたらいいかな?と聞くと、あまりコツとかは話さずに「ともかく練習」と答えが返って来る。実際シモンも練習のオニで、ともかく同じことを繰り返しやっていたということだ。
俊敏性も鍛えるということだ
シモンの話で、今でも興味に残っているのは、俊敏性を鍛えるトレーニング。これはスーパーボールのように壁にぶつけると跳ね返って来るボードでやるということだが、形がちょっと変形していて、思わぬところに飛ぶということだ。そのボールを取って俊敏性を鍛えると。それの応用として、スーパーボールを跳ね返りが予想し難い壁を使ってやってみたらいいと思った。そして、実際、自分は子供のスーパーボールを使って、時々遊んでみたりする。結構おもしろいし、俊敏性を鍛えられる。そう言えば、先日NHKのガッテンで卓球が脳活性に良いとあったけど、これなんかも同じような効果があるんだろうね。
ちなみにシモンのトレーニングというのは、NHL(北米プロ・アイスホッケー)のトレーナーが見てくれている。以前、デバン(ウォルッシュ)も同じようにやっていると言っていたけど、結構な金が掛かるらしい。いわゆるジムで行う筋力トレーニングは自給系のトレーニングと違って、もっと複雑系なトレーニングになるらしいけど。オレの勝手な予想だと、柔軟性に筋力、持久力(もしくは筋持久力)などが土台で、さらには瞬発力や俊敏性も鍛えているのだと思う。まあ、お金がない人は、前回の特集でやったやつも参考にしてほしいけど、とりあえずスーパーボールで俊敏性を鍛えるのはオススメ。レールやエアーの場面でも一瞬の判断で体を動かし、リカバリーする状況だって出て来るものだから。
パイプ(左)にジブ(右)何をやるにも敏捷性は役立つだろう
シモンのスタンスは?
ところでシモンのスタンスって気にならない?
これも昨年、SnowBoarder誌で撮影したものだけど、改めてお見せしよう。スタンス角度はいくつだったか忘れちゃったけど(前足15度、後ろ足-15度くらいだろう)、左右角度はいっしょだったって覚えている。このスタンスが自然に踏みやすい、とも言っていた。
ちなみに同じ左右角度なんだけど、おもいっきり降ってあったのはマーク・アンドレ・ターレ。確か左右共に21度くらい振ってあったような。合計で42度のガニ股かスタンスかあ(笑)。凄いね。
スノーボードも90年頭ぐらいまではダックにせず前足21度、後ろ足9度とかメインだったけど、今ではダックってあたり前になったね。実際自分もダックだけど、踏みやすいので好き。
またまたちなみに、って話になるけど、よくカービング・ハウツーをいっしょにやるベン・ウェインライトというライダーは「イスに座ってダラーンって両足を垂らす。その時の角度こそその人のスタンスじゃない」と言っていた。「ああ、それも一理あるな」って思っていたけど、だったら世界中の人、すべてがダックスタンスかな!?
シモンは努力する天才
シモンって、だいたいスマートに見えるし、天才肌に見える。だけど、シモンと接してわかるけど、努力する天才でもあるんだ。
スノーボードに出会って、毎日滑りたくて、裏庭に擦りアイテムを3つも作った。来る日も来る日も毎日練習していた、と兄のマットが言っていた(このくわしい話はPEAK#02で紹介している)。そしてフロントボードをやり始めると、自分が納得できるまで何度もハイクして練習。また、スイッチフロントを始めれば、それも自分が納得できるまで何度も練習。暗くなるまでやっていたからお父さんが、電灯を設置してくれたんだって。凄いファミリーだね(笑)。
昨年もこの時期よくゲレンデでシモンに会ったけど、車で1時間も掛かるウィスラーの隣町スコーミッシュから毎日通っていた。どんな天気でも必ず。「この時期はシーズンパスを持っているとレストハウスの食事が半額でいいね」なんて気さくなことを言っていたな。昨年シーズンインの頃は「お友達を迎えに空港に行った日以外は、ともかく滑った」と言っていた。
あとハウツーの仕事も始めると、サクサク上る。特に4年前か3年前の夏に初めていっしょにハウツー撮影した時にはビックリだったなあ。ともかくハイクが早い。いろいろなライダーと仕事したけど、デレック先生(注:元Burtonライダーのデレック・ハイト、現在オークリーのチーム・マネージャー)の早さを超えた! ここだけの話、日本人のそのへんのライダー、特に能書きばかりぶっこいてハイク遅い奴には、見せてあげたいね。一流選手はこうした泥臭いようなハイクとか、しっかりとやるぞ、って。こうしてハイクが早いのも練習のオニだからだろう。実際、シモンに限らず世界のトップと言われている人はサクサク早い。忠くんもそうだと言うし、デバンなんかもこの時期よく滑るというし、話しているとトップのライダーは日頃からどんな努力をしていて、どれだけスノーボードに惚れているか、とわかるものだ。例え、そういうことをストレートに話さなくても、わかってしまうってことはある。「僕練習していますよ」って堂々を話しちゃうライダーが大してやっていなかったりするんだよなあ。もちろん一概には言えないけど、シモンなんかも自分がどれだけやっているか、ってことを決して見せないタイプ。だけど、確実に努力しているのはわかる。
今、これを読んでいるあなたもいろいろなためになる情報を得ようとするだろう。だけど、大切なのはその情報を活かして努力すること。結局はあたり前の話に落ち着いてしまうのだけど、良かったら今回の特集記事、ご参考に!