※こちらのコンテンツ、さらにわかりやすく解説した「6つのステップでカンタン!スノーボード基本技オーリー」を以下ページにアップしています。
スノーボーダーにとって、必要不可欠と思われるテクニック、オーリー。
オーリーのレベルは大きく分けると、3つあるように思われる。
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クオリティの高い上レベルのオーリーを目指そう!
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1つはテールをバネに利用することができずにまったくオーリーができないオーリー初心者(下レベル)。
もう1つは、テールを利してボードを飛び跳ねることはできるが、一流ライダーのようにカッコよくできないという段階(中レベル)。
あえて批判を恐れずに言えば、僕はライダーと言われる人でも、まだうまくオーリーができていない人も多い、と思う。
自分なんかも、専門誌のハウツーでオーリーを見せたこともあったけど、一流ライダーとは程遠いレベルのオーリーしかできていないのだが。
これから紹介するマーク・ソラーズやシモン・チェンバレンのオーリーは、あきらかにクオリティが高い!
テールのバネをしっかりと使ってボードをポップさせ、上半身を安定させる。その利に適った身体の動きは、僕たちの永遠のオーリー・バイブルとなりそうだ。そう、これが僕たちが目指す最高レベル、クオリティの高いオーリー(上レベル)である。
そこで、今回の特集では、今季、少しでもクオリティの高いオーリーができるように、シモンやマークのテクニックを参考にしながら、論理的にオーリーの解析していこう。
このハウツーを参考に、オーリーの魅力を知っていただければ、と思う。
Text & Photo: Fusaki Iida
基本はテールプレス
なんとかオーリーの格好をつけるには、
まるで船を漕ぐように、あるいはブランコを漕ぐようにして、身体の体重を前から後ろに持って、その勢いでテールで蹴ると良い。
すると、なんとなくオーリーっぽくなっていたりする。
オーリーのまったくの初心者は、オーリーの感覚が補うためにも、このような手っ取り早い方法で、まずはオーリー感覚を楽しむのも良いだろう。
しかし、オーリーで最も重要な点は、いかにテールにプレスする筋力やテクニックがあるかだ。
テールプレスがしっかりとできていれば、それだけテールでポップ(飛び跳ねる)する力も蓄えられる。
実際にオーリーする時も、まずはテールプレスからやると良い。
テールプレスの状態では、体重は後ろ足に乗っている。その体重をポップして(飛び跳ねて)真ん中に持っていくだけで、自然にオーリーの形になるのだ。
テールプレスをした状態から(一番右写真)、そのまま後ろ足で真上に蹴る(真ん中写真)、さらに両ヒザを胸に引きつけるようにすると(左2番目写真)、良い形でオーリーが決まる。着地は、ヒザをやわらかく使ってサスペンション。 ※まるで動いた状態でやっているようにも見えますが、その場で止まってテール・プレスからオーリーをしています。 |
このテールプレス、やってみた人はわかるけど、結構、足腰の筋力が必要である。女性ライダーの多くで、うまくオーリーができない人は、このテールプレスがうまくできていないケースが多い。また根本的に、女性ライダーは、男性ライダーよりも筋力が弱い傾向になるので、うまくテールプレスができないものなのだ。
しかし、ちゃんとスクワットなどをして足腰を鍛えて、何よりもテールプレスを何度も何度も練習した人は、うまくプレスができるようになる。すると、その分、オーリーもカッコよくなり、乗れている印象をもたらすライディングになってくる。女性ライダーでも「あの子は乗れている!」という印象を与える子は、確かにプレスがうまいものだ。
よくありがちなカッコ悪い例は、足腰が弱くて、腰を折って無理に体重を乗せる例。これでは、カッコ良くないし、この方法でやる限り、いつまで経ってもオーリーに必要な筋力もついていかないと思う。
よくプロ野球の選手は、実際にピッチャーのボールを打つ練習や、トスを上げて行うトス・バッティング、さらには自分のスイングをさらに鋭くする素振りなどが行われるが、プレスはこの素振りと同じようなものだと考えると良いだろう。
プレスをやることは、今、その場で部屋の中でもやることは可能だ。畳や床が痛まないためにも、ヨガマットかタオルなど敷いて、実際にボードを付けて練習することができる。かつて世界のホームラン王の王貞治は、畳が擦り切れるくらい部屋の中で、一本足打法の練習に明け暮れたというが、あなたもそれぐらいの根性でプレスの練習をすればきっとオーリーのクオリティが上がって来るだろう。
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意外にできそうでできないカッコ良いスタイルは、影練習で蓄えられるもの。
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実際、僕がよく知っているライダーの平野創(ヒラノ・ハジメ)は、この練習でプレスがうまくなり、カッコ良いスタイルを確立した。
ハジメは、3シーズンほど前だったか、福岡ビッグ・エアのシーズンパスを持って、室内ゲレンデで練習を積んだ。しかし、そのシーズンパスは、土日は使えなかった。そこで、土日は更衣室で、ひたすらその場でプレスなどをやるジブ練をしたということだ。
よくハジメのスタイルは「日本人離れしている」と言われるが、その背景にはこのような努力もあったのである。
外国人ライダーでは、このようにストイック感じで熱心にジブ練をしている人はいないように思うが、ともかくよくゲレンデなフラットの場所でプレスなどの練習をしている。また彼らは、さらにスケートボードというバックグランドを持ち、そこでも散々オーリーしまくっているから、自然な形でオーリーに必要な筋力が備わっているようだ。
ともかく、様々な練習アプローチはあろうが、クオリティの高いオーリーを決めるのに、プレス力は欠かせない。
だから、オフのこの時期は、毎日ジブ練をするようにしよう。何しろお金は掛からないし、やらない手はないってものである。
かつてシモンもママに叱れるほど、家の中でジブ練をやったと言う。
ノーズプレスしたり(左)、テールプレスしたり(中)、ジャンプしたり(右)、また時には実際にアイテムに入るところや、入っているところなどイメージして、ジブ練をやろう。やればやるほど、うまくなるぞ! |
プレスがある程度まともにできてくると、オーリーはかなり楽に感じてくると思う。あとはゲレンデで、どんどん試して行けばいい。
オーリーのきっかけとして、小さな雪ダルマを作って飛び越すのも良いし、あるいはゲレンデにある障害物、ロープなどをジャンプするのも良い手だろう。もちろん、障害物系のジャンプをする時には、絶対に他人の迷惑にならない状況であることが大切。万が一、ケガをさせてしまったら大変だ。くれぐれも気をつけてほしい。
ナチュラルな地形でオーリー、パークのアイテムに乗る時にオーリー、またできればスケートでもオーリーの練習ができると良いぞ。
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イメージトレーニング教材
オーリーの基本であるプレスは理解できたと思う。
また、プレスやオーリーは、どこでも練習ができることを理解していただけただろう。
次は実際に小さなキッカーでオーリーをしてみよう。
ここで良きイメージトレーニングの教材を用意をした。
それはマーク・ソラーズのオーリーだ。
わかりやすいように、横と後ろから撮影した。
マークのジャンプは、空中で余裕ができるためピークでは、上半身と下半身を捻る格好、シフトをしている。
だけど、あなたが実際にやる時には、そんなことする必要はない。
ポイントは、なんと言ってもアプローチから抜けの部分だ。ここをよーくイメージして挑もう。
POINT
1 肩の力を抜いてリラックスしてアプローチ
2 リップが上がる手前で、股関節、ヒザ、足首を曲げ、同時に両手をつぼめる。
注)この時、低い姿勢を取る意識が働くあまりにヒザを曲げずに腰を曲げてしまう人がいるので気をつけて。
3 抜けの部分では、ボードのテールぎりぎりまで蹴るのを待つこと。
注)ボードの先が出たぐらいで飛んでしまいがち。もっともっとテールで蹴れるように待つことが肝心だ。
4)蹴る時に両手を広げよう。
5)空中に出たら両ヒザを胸に引きつけるようにすること。まるで、自分がボールになったかのように空中で小さくなってみよう。
6)着地ではランディングの先を見て、着地したらヒザをやわらかく使って吸収するようにすること。
この横からと後ろのカットは、同時にビデオ撮影もしてます。この映像は、PARK NO GOKUIで登場!
ビデオ映像は、よりイメージを深めるのに役立つので、このクオリティ高いオーリーを習得するためにも、
ぜひご参考にしてください。
まとめ
以上、オーリーのコツややり方を述べて来た。
最後におさらいの意味もこめて、ここでしっかりとオーリーの方法の理論、メソッドを確認しておこう。
1 基本はプレス。プレス力がなければ、カッコ良いオーリーはできない。
2 プレス力を上げるためには、スクワットなどで足腰を鍛えること。また家の中や雪上のフラットなところで行うジブ練を行うこと。さらにこのジブ練の時、止まった状態でのオーリーも行ってみる。応用編としてノーズプレスからノーリー、さらに自分の気持ちをファン(楽しく)させるように実際にアイテムに乗ったことをイメージしたいり、スピンしたりしてみよう。
3 実際に小さなキッカーでオーリーしてみよう。
よくある質問
Q なかなかオーリーがうまくできません。どうしたら良いでしょうか?
A よく、オーリーにトライした人が、「うまくできない」という言われるけど、そのほとんどのケースでは、単に練習が足りないケースがほとんどです。
初めて補助輪なしで自転車に乗る子供が、何度も練習してやっと乗れるように、オーリーだって最初は何度も練習しないとうまくできないものなのです。
最初は「なんとなく形なって来たかなあ」という感覚で、次に「こんな感じだよなあ」という感覚になり、そして「ああ、こんな感じだろ!」というものが見つかり、だけど自分のビデオを見たら凹んで「もっと練習しなくちゃ」という気持ちになり、改めてやる気を出し。そんな気持ちで、徐々にゆっくりと上達という階段を上るもの。
実際にシモンも「ともかく練習だね」と言っています。「うまくできない」という暇があったら、もっともっと練習しましょう。
Q オーリーに適したボードの長さや固さはありますか?
ボードが長かったり、固い板だったりすると、オーリーはやり難くなります。
実際、女の子で固いボードを購入しちゃったという例は何度か見て来ました。彼女にしてみたら、カービングに適した高速安定性のあるボードを購入したつもりだけど、いざオーリーをやるとなかなかできない。これはテクニックうんぬんの前に板が固過ぎて、できないという状況。
比較的に男性よりも脚力が弱い女性は、固いボードで苦労しているパターン少なくないので、気をつけましょう。
ちなみに固いボードでオーリーを頑張った子は、柔らかいボードに乗ったとたんに天国のように感じたりします。
僕も3年前だか、柔らかいジェレミーのボードを乗って、あまりにもオーリーがしやすいのでビックリしました。
もちろん柔らかい板は、高速に弱いので、そのへんも考慮して考えないといけませんが。
Q オーリーをやるのに適したスタンスは?
僕は以前、前足21度、後ろ足6度というようなスタンスでライディングしていました。多くの人も、そういうノーマルなスタンスでスノーボードを始めたと思います。
だけど、実際のところ身体に負担に掛からないスタンスというのは、前足21度、後ろ足がマイナス6度というようなダックスタンスではないか、と思うのです。
このことを話すと長くなるので、結論だけを述べますが。
そして、オーリーをやる時には、後ろ足が内側に入っているスタンスよりも、外側に振られているダックスタンスの方が蹴りやすいように思います。
実際、多くのライダーを見ても、ダックスタンスが主流です。
たぶん、ダックにしていない唯一のライダーは、テリエだけではないでしょうか?
よくスタンスに捉われて、自分の滑りの悪さがスタンスにある、と考えている人が多いので、あまり意識されない方がいいと思います。
ちなみに外国人ライダーは、自分のスタンスを知らない人がたくさんいますよ。スタンスに捉われずに、だいたいこれくらいだろ?とやっている人が多いのです。
Q オーリーで高さを出す秘訣は?
練習方法として、障害物などを使って、だんだんと高さを出すような練習は良いです。だんだんと大きな雪ダルマを作って、それを飛び越すという遊びが良いですね。
あと、「もっと瞬間的に早くテールのバネを利用して蹴ろう!」とアドバイスすると、より高さのあるオーリーができる方も多いです。
しかし何よりも、ここで伝えて来たプレスを強化をすることが大切だと思います。練習にまさるものはなし、です。基本練習は、本当に大事だし、一流ライダーにとっても大切なことだと思います。
あるアドバイスは、時に飛躍的にあなたの感覚をサポートすることがあります。しかし、大事なことは、基本をしっかりと習得すること。地味な練習をないがしろにしないことが、長い目で見て上達します。
Q スイッチでのオーリーがうまくできるコツは?
ずっとレギュラーのオーリーばかりやっていると、スイッチのオーリーはできなくなるものです。
利き足が右足の人は、レギュラースタンスの人が多く、そんな人は常に右足で蹴りがちです。だから、左足で蹴るノーリーや、スイッチのオーリーが苦手になってしまうのです。実際、右足の方が左足よりも筋力が強くなってしまうので、いつまでも自分の得意な方で蹴ってしまいがち。
しかし、苦手なことから逃げずに新しいことをトライするのも、スノーボードの楽しみの1つです。
まずは左足で蹴ることを強化するために、左足でケンケンをやって、左足の筋力を鍛えましょう。これなら、今からでもすぐにできます。
そしてシーズンインになったら、うまくできないことを恥ずかしがらずに、ガンガンにスイッチのオーリーを練習をしましょう。
僕もまだまだスイッチのオーリーができないですが、今年はもっと練習したいと思います。
Q フサキさんは、世界のライダーを見て来ていると思いますが、実際に誰のオーリーがうまいと思いますか?
僕が実際に生で見たライダーでは、やはりここに登場しているシモンとマークがうまいと思いました。
シモンのオーリーは、利に適った動きをパキパキやって、独特なスタイルがあります。実際にハウツー撮影していると、その脚の動きがしっかりと出るので、わかりやすいですね。
ずっとシモンのオーリーの動きを見てから少しでも近づこうと思い練習しますが、なかなかうまくできません。
ビデオで見ると、長身のシモンの方がずっと深く小さい姿勢を取り踏み込む姿勢を取っていて、その点で反省させられたりします。
マークのオーリーは、シモンの動きをより自然な感じにしたようなスタイルで、芸術品!
あと、僕は単に世界のライダーを知らないだけで、実際にはシモンやマークのようにカッコいいオーリーができるライダーは、まだまだたくさんいると思います。
もしかして、本当にうまいオーリーをやる人は、今シーズンのあなただったりして!?