この夏に新感覚ビデオ『Peak』の撮影で布施忠のインタビューを行った。
忠くんの魅力をできる限り伝えたいと思った僕は、自分の家の裏に流れる川原でピクニック用のイスを並べ、ビールを持って行った。
普段、忠くんのフィルムを回しているケイジくん、その他、撮影関係者とかが、「布施忠のインタビューは難しい」というようなことを言っていたので、自分も多少ナーバスになったし、いろいろ気を回してしまった。だけど、始めてみたらそんな心配はまったくなかった。忠くんは自然体で、たくさん話してくれた。時間が経つのも忘れるほどの勢いだった。自分の過去のインタビューでも本当に素晴らしいものになった。というのも、自分自身このインタビューの後、新たな考え方とか出たし、それが実際に行動力となったからだ。きっとこの自分が得た意識、感動も含めて、多くの人に伝わるに違いない、と思った。
このインタビューは、本当に素晴らしいコメントが幾度となく出るのだけど、1つだけ例をあげてみよう。
それは確か、これからの忠くんのスノーボーディングについて聞いた時だと思う。忠くんは常にどういうライディングを考えているのか、また新しいアイデアを撮影で活かすのかとか、そんなことを聞いたのだ。忠くんもそういうことは常に考えている、というようなことを言うのだけど、実際に現場に行けば思っていることができないケースが多い、とコメント。そして、あーだこーだ考えてもわからないので、ともかくやるのだそうだ。
その時、僕は「ああ、なるほど、トップと言われている人でも、ともかくやってみるんだな。何か泥臭いような印象もあるけど、そうやってともかく試すんだ」と感じた。
そして、その時はそれほどその言葉を重く受け止めてたわけではないけど、その後の自分の意識で「ともかくやってみるんだ」ということを思うようになったのだ。そしてその言葉が徐々に自分の中で重く受け止められるようになった。かつて高校生の時、「ともかくやってみる!」と思いながら行動していた自分の若さを叩き起こすことができたのだ。
例えば、自分のハウツーの撮影で事前に決めた内容がある。だけど、その現場でその撮影がうまくいかなかったり、またカメラマンからのアイデアで「こうしたらいいんじゃない?」という提案がある。そんな時、今までだったら先に考える癖があり「そんなこと無駄だよ」とか、勝手なネガティブな想像をしてしまう自分がいたものだ。だけど、今では「ともかくやってみる。やってみないとわからない。やることが一番どうだったのかわかること」という思いで、実際にやってみるのである。
このことはスノーボードのことに限らず、仕事のこと、普段の生活でも活かされるようになった。自分の範疇になかったことだけでも、ともかく「やってみよう」と思い行動する。子供が何か提案したら、何かと「ダメ」と言っていたけど、ともかくやらしてみる。仕事仲間から提案あったら、ともかく頭の中で考えてもわからないことも多いので、やらせてみる。
忠くんの一言が、自分を良い方向に変えてくれた。とても感謝している。
後日、忠くんをずっと撮影して来たマルくんに、
「あのトランズ誌の表紙、撮った時どんな状況だったの?」
と聞いてみた。
そうしたらマルくん、
「あれは僕がずっとフォーラム撮影していて、確か4日とか5日目の晴れ。もうパウダーもない、ということで撮影がなくなった日だった。そう、もうライダーの誰もがこれ以上の画は撮れない、と思った時に、ちょうど忠から電話があり、まあ、ダメ元でピクニック気分で撮影に行こうか、ということになった。忠は、まだ撮影できるポイントがある、と言ってその現場に行った。そこでワンフットで撮影することになって、あの写真が撮れた」
マルくんの中では、「もしかしたら撮影できるかな」という気持ちで行った。
忠くんの方は、マルくんを誘うくらいだから、「あそこで何か写真が撮れるのでは」と期待を抱いて行ったのだろう。そして、実際、その現場でワンフットという発想を出して、あの表紙につながったのである。
本当に忠くんって凄いね。そして、マルくんもその忠くんをしっかりと受け止める凄いカメラマンなんだよなあ。(※マルくんDice-K Maruのインタビューは後日アップするので、お楽しみに!)
ところで、忠くんからはもっと強烈なアドバイスをもらったんだけど、それはぜひ『Peak』を見てのお楽しみ。ここで大事なことをお話して、感動を薄れさせてしまうのは悪いからね。