文:齋藤 稔
最近気がついたことなんですが、僕の周りにはスノーボードでケガしてる人がなぜか多いみたいです。手首の骨折2名、膝の手術をした人一名、脳しんとう経験者多数、などなど。僕自身は、これと言って大きな怪我をしていないのですが、その差はどこなのか? 考えてみたんですけれども、その差って言うのは、転んだときの対処の仕方と事前の怪我予防法にあるんじゃないかと思うのです。自慢じゃないですが、僕は転び方に関しては、かなり上手いと自負しています。柔道で鍛えられた受け身が僕の体を無意識のうちにダメージが最小限になるように動かしているからだと思います。(ちなみに柔道2段です)自慢にならないと考える人もいると思いますが、怪我をしないと言うことはそれだけ長くスノーボードを楽しめると言うこと。これってすごく重要だと思います。
さて、まずはケガの予防法ですが、ストレッチをしっかりとやること。これから始まります。朝、滑る前にストレッチをすることで、体がほぐれ柔らかくなります。関節部分は充分に曲げ伸ばしして、体に準備をさせましょう。次に装備関係です。まずはボードとビンディングをきちんと整備すること。ビンディングの各部分はしっかりとしまっているか?スタンスなどは自分に合ったものになっているか?この辺は滑る前にもう一度点検しましょう。さらにウエアのポケットには硬い物は入れない。これが意外と重要です。どんなに上手に転んでもウェアに硬い物が入っているとそれのために怪我をしてしまうことがあります。体の前面、及びズボンの後ろのポケットは特に気を付けてください。どうしても硬い物(ワイヤーロック等)を持たなければならないときは、体の側面に近いポケットに入れてください。なぜ体の前面やズボンの後ろポケットがダメなのかと言えば、胸を打った場合に硬い物があるとその部分にダメージが集中し、怪我が大きくなるからです。同じ理由でお尻から転んだときのために、ズボンの後ろポケットもダメです。ザックを背負う人は装備品はザックに詰めてください。硬い物はなるべく柔らかい物でくるんで入れるともしもの時に安全です。プロテクターも余裕があるなら買って装備してください。特にお尻と膝の部分のプロテクターはすべてのレベルの人に有効です。さらに、ウェアやグローブから出ている「ひも」はウェアの中やグローブの中に入れてください。エアーの時にグラブをして引っかかったり、転んだときに引っかかったりすると、身動きがとれなくなって大怪我につながる危険性があります。
さらに、不測の事態に備えてスノーボード保険に入っておくとなおいいと思います。いろいろな保険があるので、ショップで相談するか、知っている人(入っている人)に聞いて見るといいと思います。 ここまでは大丈夫でしょうか?さて、肝心の転び方ですが、まずは前に転ぶ場合です。絶対にしてはならないことは手を出してしまうことです。人間とっさにバランスを取ろうと手を出してしまうものなんですが、この場合は最悪です。手首に加重が集中して、最悪骨折します。手首の骨折は非常に多い怪我なのですが原因はこれです。とっさに手が出てしまい、手首に衝撃が集中し、その結果骨折と言うことになるのです。正しい転び方は、脇をしめて、体に腕をつけます。肘から先を自分の胸の前に持ってきます。やってみるとわかるのですが、自分の胸を護る形であると同時に、手をつくことは難しい形になります。この状態で転んでください。慣れてきたら、2本の腕をバネのようにして、衝撃を吸収できるようになります。勢いがあるときはこの格好で止まるまで滑るか、事前に自分から転がってください。転がる場合は自分の両腕で頭を抑え、直接頭が雪面に衝突するのを防ぎながら転がってください。
次は後ろに転ぶ場合です。これも前に転ぶときと同じで、手をついてはいけません。お尻から転ぶ場合でも同じです。お尻から転ぶ場合は、素直に尻餅をついてその後仰向けに倒れましょう。このとき気を付けなければいけないのが、「頭を打たないこと」です。アゴを引いて、自分の足を見るようにすれば頭を打つことは少なくなります。できれば自分の両腕で頭を抑えて、完全に頭を護ってください。ヘルメットをかぶっているときでも同じです。もし勢いがついていて転んでも止まりそうになかったら逆らうことなく、転がってください。転がることで体にかかる力を逃がして、大きなダメージが体にかかるのを防げます。
ザックを背負っている場合で、中に何か硬い物、尖っている物を入れている場合は、背中からの転倒はさけた方が無難です。もし後ろに転びそうになったら、尻餅で対応するか、体をひねって体の側面から転ぶといいでしょう。
エアーのランディングや、速いスピードでバランスを崩して転ぶ場合は、自分から回転することで、体にかかるダメージを少なくすることができます。この場合も自分の両腕で頭を囲って、頭に直接衝撃が加わるのを防いでください。勢いがついている場合は、自分の体が覚えている受け身を取るしかありません。エアー等は徐々にレベルアップしていくことによって、状況に対応した受け身も同時に体が覚えていきます。いきなり大技にチャレンジすると受け身を体が覚えていないので大怪我につながります。ハイスピードでの転倒もそうです。徐々に自分の限界をあげていかないと、体がついてきません。
何か(例えば立木)にぶつかる場合。まぁ、あまりないとは思いますが、コースの端で転倒して、柵等に衝突してしまう時などは、体から当たらないで板を当てます。とっさに手で体を護ろうとしてしまいがちですが、自分の板をはじめに当てるようにすることが怪我をしない事につながります。板は所詮道具です。お金で買えます。自分の体や、健康はお金では買えません。どっちが大切かちょっと考えれば誰でもわかるでしょう?
ケガをしない転び方をまとめてみると
?「ストレッチ・柔軟体操をしっかりやる」… 体が自由に動くよう準備しましょう
?「手を出さない」… 手首を骨折する場合があります
?「頭を護る」… 最悪、頭さえ無事ならたいていの怪我は直すことができます。
とこの3点が重要であると思います。この三点を頭に入れて実行すれば確実に怪我をする事は減ります。絶対にケガをしないと言うことはありませんが、かなりの確率で体を護ることができます。
初心者の方なんかは逆エッジでかなり痛い思いをすると思います。突然転ぶのでとっさに何かしろと言われても無理かと思いますが、危ないと思った瞬間にできるよう意識してみるといいと思います。
中・上級者の方は「俺(私)は転ばないから」と思うかも知れません。しかし、転ばないと言うことは自分で決めた限界の中でしかスノーボードをしていない事になると思います。さらに上の滑りを目指すのなら転ぶことを恥ずかしがらずに、自分をもっとプッシュする事が必要になると思います。そのためにも「正しい、怪我をしない転び方」は重要になってきます。
楽しいスノーボードも怪我をしては台無しです。「ケガを事前に防ぐこと・防ぐ努力をすること」はすべてのスノーボーダーに必須の項目であると僕は思います。それではみなさんケガをしないで楽しいスノーボードライフを送ってください。