【コラム】ジャッジ種目で良い成績を出す方法

広告 five  

文:飯田房貴

浪人3の擦り侍役のトオルから、福岡ビッグ・エアーで行われたジブ大会の報告があった。
「ダウンレールで BS270inを決めたのですが、他にトリックのバリエーションがなかったせいか、勝てませんでした。」

きっとこのような伝え方をしたというのは、本人の中で BS270inという技は、本大会で上位を狙える良いトリックだったのだろう。

広告

毎度のことながら、ジャッジング種目の時にはこのようなことが起こる。「えっ、あの人が優勝でなかったの?」という。
これはスノーボードのジャッジ種目の歴史の中で何度も起きていることだし、どんなスポーツでも毎度起こること。人間がある主観でジャッジングしている以上、誰もが認めるジャッジングなど目指すことはできても、到底無理ということだ。
特にまだジャッジング・システムが確立していない新しい種目では、そのジャジングのアラさは目立ち、ここ最近台頭して来たジブの大会では国際大会であろうと「えっ、あのジャッジングの点っておかしいのでは?」ということが、たびたびあるもの。

だけど、選手はジャッジング種目に参加している以上このことは覚悟して出る必要があるし、またジャッジングの方も選手に負けないほど、テンションを高め集中してジャッジングのプロ・ワークをする必要がある。

そんなジャッジング状況がわかった上で、参加する選手はどんなことを考えればいいのだろうか。今回伝えることは、これから検定にチャレンジする一般のスノーボーダーや、もしかしたら普段の生活でも必要なテクニックだと思うので、ぜひ参考にしてほしいと思う。

まず参加する選手は、そのジャジングのスタイルを見極める必要がある。前年度に参加した大会ならその傾向がわかるし、また検定に参加する人ならそこで行われる傾向はある程度リサーチすることが可能だろう。もちろん前提は、自分がうまくなり、そこで認められる滑りをすることであるが、それに付随してそこで活躍するという意味を深く考える必要がある。

例えばそこの検定場所のトップにいる校長は、どんな滑りを推薦しているのか。アルペンの人なら、上体を前に向ける傾向があるかもしれないし、その好みの手の位置などがあるだろう。わからなければ一度、そこのスクールで受講するというのも1つの手だ。このように事前に調査をしとけば、本番での勝利の確立が上がる。

今年の春、日本でお馴染みのスロープ大会が行われ、そのジブ・セッションでシモン・チェンバリンがベスト・オブ・ジバー賞を獲得した。
ある専門誌の方は、「あのジャッジングは疑問。なぜあの技で賞を獲得できたのか」と疑問を持つ感想を伝えた。
あるメーカー関係者は「あのシモンの滑りはヤバかったです。スタイルが出ていて、日本のプロたちも注目していた」と語った。
2人の専門家(注:この世界で食っているという意味で)まったく違う評価であり、まさに人間のそれぞれの考えの違いがあるということを象徴するような出来事。しかし、この大会で賞を獲得した背景には以下のようなことがあったと思う。

PROMO COPYというビデオで、そのカッコいいスタイルを世界に広めたシモン。当日のサイン会でも最も人気の高いライダーだった。ジャッジングをしたのは、スタイルを強く認識した方で、「どんな難しい技を行ったか」というよりも「どれだけスタイルを見せたか」という傾向にあった。

つまりシモンは滑る前から、すでにベスト・オブ・ジバーに輝くための要素が十分に揃い、そこでよっぽどヘマをしない限りその賞から外れることがなかった、ということ。例えば、ここにエディ・ウォールなどの強敵がいれば、人々の注目がシモン対エディに注がれるなど、新しい展開があっただろうが。

そういったことを考えていくと、大会のジャッジング・システムも政治の世界に似ているように思う。最近ニュースでよく話題になる、郵政民営化に主点を当てたい小泉・自民党と、もっと広く政治手腕を問いたい民主党の戦いのように。国民が「やはり郵政民営化は大切で、それに反対する民主党を好まない」というような単純発想な戦いになれば小泉のパフォーマンスが勝ったという言い方もできるだろうし。

例えば今回のトオルのケースで言えば、こんなこともできたと思う。
事前に自分の友達を集めて大会に参加。そこでトオルは、誰もが認めるトップ・ライダーで、自分が良いトリックを決めれば盛り上がるという展開を作る。大会前の練習ですにで盛り上がったトオルの滑りにジャッジが注目し、そこで活躍したトオルに良い得点をつけるというように。さらに事前にトオルが地元のショップで作ったビデオなどに出ていて有名ライダーだったら、その知名度に押されたジャッジが、もっと良い点をつけた可能性も出て来る。

まあ、ちょっとした夢物語のようだし、何かこのような政治的なパフォーマンスは姑息な手段とも言えないこともないが、ジャジングが絶対に公平で行われているものではなく、生き物のように様変わりするものであることを考えれば、このようなことを考えるのも1つの手だと。

以上、ざっと説明したが、まとめるとこうなる。

一、ジャッジングのスタイルを見極める
二、自分の印象度が上がるパフォーマンスを行う
三、期待に応える
四、事前に考えたすべてのストーリーを実行するプロ根性を持つ

キーワードはやはり自分が勝利者となるための事前の仕込み。イメージ作りだろう。
極端な話、その大会で1位を目指すのではなくても、自分が思い描く通りに行けば勝利者だと思う。

例えばある人は、その大会で到底優勝できるようなレベルでなくても、そこで自分の思い通りのトリックができれば勝利者だろう。その大会の順位ではなく、事前にイメージした通りに、事前に思い描いた作戦通りにできたかどうか、という勝負だ。そういった小さいな成功の積み重ねが、将来的には大きな勝利を導くと思うのだ。

広告