「雪山を彷徨った男」が本音で語る/伊藤 一真

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久し振りにこのコーナー復活。このインタビューは、今年の春、ウィスラーで行ったもの。
このホームページのコーナー「雪山を彷徨った男」でお馴染みの伊藤一真の登場だ。彼は、今、どんなことを考えてスノーボードをしているのだろうか?

Fusaki(以下F).今は何していますか?
Kazuma(以下K).レースをやっているんだけど、今年は雪が降り過ぎたのでトレーニングはあまりやらないで、トゥリー・ランをたくさんやっています。パウダー滑るのうまくなりました。

F.スノーボードを頑張り続けているんだね?
K.スノーボードを中心に動いています。何かこのインタビュー固いよ。

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F.収入の方はどうしているの?
K.それは、みなさんと同じですよ。友達のエアコン屋手伝ったりとか。料理屋でバイトしたりとか。適当にやっています。

F.今年のウィスラーはどうでしたか?
K.雪多くて最高。今までの中で一番良かった。新しいコースがいっぱいできて、またいろいろなコースを知ることができた。

F.ウィスラーは何年目?
K.8年目。

F.ウィスラーとブラッコムどっちが好き?
K.ウィスラーはピークがあるから、ピークが開いたらウィスラーかな。ブラッコムは上がのっぺりしているから、条件同じだったら、ウィスラーの方がおもしろいと思う。それにブラッコムは木を切り過ぎている。コースはいっぱいあるけど、人工的で好きになれないところがある。だけど、どっちも好き。

F.最近はまっていることとかある?
K.ジャグリングしている。玉投げるやつ。

F.このホームページは、ウィスラーの情報が満載でそれを見に来てくれる人もいるのだけど、今後ウィスラーに来る人のために何かメッセージとかある?
K.日本人ってまとまったら、外が見えなくなるよね。バスとかでも盛り上がって大声ではしゃいでいる人達がいる。カナダ人から白い目で見られることになるから、団体行動で変に強気にならないよう気をつけてほしい。こないだも、日本人の女の子大声で話しているのがいて、回りはみんなシーンってしているんだ。それで、英語で悪口を言っていた。なんとかしなくちゃ、と思ったよ。

F.うーん、確かにそういうところあるよね。最近英語学校もあるから、日本人増えたことだし。
K.英語学校がダメ。こっちの学校プログラムでスノーボード絡めたから、バカがたくさん来るようになった。昔、みたいに来るならレールに乗らずに個人で来い、って。学校がいけないよね。英語勉強、スノーボードとうたってしまったら、たくさん来ちゃう奴出てきちゃうよ。みんながもちろんバカな訳じゃないけど、そんなことやってバカができてしまい、結局、昔からいるオレたちが白い目で見られることにもなり、損をしてしまう。そういうプログラムはやめてほしい。

F.学校というより本人たちの問題じゃないの?
K.だけど、来れやすくしちゃうからダメなんだよ。それで、オレがケツ吹くから、よけいダメなんだよね。オレも立派な遭難しているから、言える立場じゃないけど…。でも、オレもパトロールに友達がいるけど、その人に聞いたら日本人感覚麻痺しているって言ってたよ。

F.そうかな?
K.アウトバンドリーでも知らないで平気でロープくぐって行っちゃうって。たぶんローカルのスキーヤーの後とか追って行ったんだ思うけど、危ないよ。カイバーとかにも、ピチピチのパンツを履いたレッグウォーマーの女性スキーヤーがいたってよ。

F.そんなやばいところにそんなスキーヤー行くかなあ。信じられないよ。
K.本当。3人でいたって。

F.わかるもんだろうけど。そんなとこ行けないって。
K.だけど、カナダは広くてバックカントリーがあるというイメージがあるでしょ。ゲレンデとかの境でもロープがあるだけで、どっちも同じように見えてしまうから、滑った跡があったらいけると思って、ロープをくぐってしまうんだよ。実際、遭難事故は多いし、死に至るようなニア・ミスはめちゃくちゃ多いよ。他の例では、今年ウィスラーでピークをクローズしている日に、日本人ハイクアップして雪崩れを切っちゃったんだよ。それで、下でパトロールが作業しているところで、またそいつ雪崩切っちゃったんだよ。罰金7000ドル取られたらしいよ。こういうのを聞いてもおかしいと感じるよ。日本人の評判落としているよ。フサキさんが上げている一方で、よくないよね。

F.何か他にも言いたいことありそうだね?
K.あと、ウィスラーの山、イントラウエストが買ってからバカなアメリカ人が増えたよ。プロモーションうまくなってさ。それと、ヘルメットの日本人軍団!

F.何で?
K.あっ、そうだフサキさん売っているだったね(笑)。いやっ、いいんだけど何か10人いたら10人かぶっているんだよ。

F.いいじゃない。ヘルメットは安全なんだから。
K.10人ぞろぞろヘルメットをかぶっているのを見ていると、お前らのうちで、一人でもオレはヘルメットなんかいらないって考えの奴いないのかって言いたい。

F.だって、みんな飛ぶ子たちだからしょうがないでしょ?
K.いやっ、みんな飛んでいないでしょ。というかヘルメットって絶対カッコ悪いと思う。それは何ていうか、守っているから。オートバイでもヘルメットかぶっていなくてカッコいい人いるでしょ。

F.いや、ヘルメットは絶対いいと思うよ。
K.フリースタイラーってキホン的に思想が、オレは壁をつきやぶるって思想でしょ。ロックンロールでしょ。

F.はっはっはっ(爆笑)。でも、スケートでトニーホークとかしている人いるよ。
K.いやっ、スケーターは違うよ。スノーボーダーよりも思想が高い!

F.はっはっはっ(爆笑)。それはデンジャラスに挑むこと事態が思想が高いってこと?そしたら神風特攻隊が思想高いってことになるぞ。
K.いや、違う違う違う。それはねえ、死ぬじゃないですか。だから、ちょっと別物なんですよ。プッシュプッシュしまくっている思想の奴らが、ヘルメットをかぶっているっておかしいと思いませんか?

F.少しでもケガを防いで楽しいことをやることは、いいことだよ。
K.先生が10人に「ヘルメットをかぶると安全だからしましょう」って言ったら、その10人うなずいているんだよ。

F.だけど、一真ねえ。本当みんな無茶するから、かぶさないと危ないんだよ。オレのキャンプでもヘルメットをかぶせたけど、それでもケガするんだから。
K.いや、キャンプの場合は主催者側の責任の問題があるからしょうがないけど、彼らの場合それはそういうことじゃないでしょ。

F.いや、長期のプログラムでもケガすれば訴えられることもあるから、しょうがないよ。だいたい一真だって、ヘルメットをするじゃない?
K.フリーランの時は、絶対かぶらない。レースの時は限界を出すから。

F.彼らだって限界にチャレンジしたいんじゃないの?
K.そうかなあ。そうは見えないけど。ていうか、その前にビビッている奴がいるから。生命本能で身を守ることは大切だけど、ヘルメットの場合し過ぎだよ。イケイケのフリースタイラーがプッシュプッシュしなくちゃいけないって奴らがさあ。

F.違うよ彼らは、そんな思想がないよ。楽しく滑りたいということ何だから。
K.思想は入ってます。思想がないとカラダが動きませんから。

F.だから、そこまでの深い思想でやっていないということ。
K.うーん、足りないんだろうね。だから、うまくならないんだよ。

F.いいじゃない。うまくなることだけが大切じゃない。楽しむことが大切なんだから。
K.うーん、そうだけど。でもねえ、オレ、フリースタイラーはプッシュしてほしいんですよ。特にパイプとかやっている奴とかさ。

F.自分なりにだけど。なんとなくわかるよ。
K.日本人ワンになっちゃったらダメですね。今日オレたちも日本人同士でつるんだけど。知らず知らずにも盛り上がった。それでは、外の世界が見れなくなるよ。

F.否定的なことが多くなちゃったから、最後は明るい質問で行こう。夢は?
K.スノーボードを続けたいですね。他のことでも楽しいことあるけど。スノーボードって本当に楽しい瞬間があるじゃないですか。パウダー滑っていて、叫びたくなるような感覚。その瞬間が少しでもあるスノーボードを続けたいですね。

●編集後記
という訳で、かなり異質なインタビューになった。一真というのは、このインタビューを見てもとてもおもしろい観点で物事を言い、またそれが妙に納得してしまうものが多く、今後もウィスラーの滞在の際には、ぜひともつかまえてインタビューをしてみようと思う。最後に今年の夏、一真のアルバイト先での写真を載せておこう。どうやら海の近くて、アイスクリームのフタか何かを作っているようだ。

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